「もう手遅れよ――たとえ地獄に堕ちようと、わたしはあなたを逃がさない」
「…………どうかしているぞ」
第17回小学館ライトノベル大賞の大賞受賞作。
妖怪や魔物なんかがいる世界、それに対処する霊能力者(作中での呼称は無耶師)も存在していた。
主人公の少女、獄門撫子の生家である獄門家もまたそういう家ではあるんですが……悪名が広がりすぎて無耶師はおろか化物すら畏怖する家でもあった。
獄卒の流れを汲み、通常の人としての食事は実際のところ必要なく、化け物の肉だけが彼女の飢えを満たす。
そんな特殊な立ち位置でありながら、人に近すぎる怪異は食べようとしなかったり、人と鬼の狭間に居て、他者を遠ざけながらも自分の立ち位置を定めようとしていた。
そんな中で、とある依頼を受けて八裂島という場所に赴いたときに、無花果アマナという「普通の人間」を自称する女性と出会って。
彼女と交流する中で、鬼でありたかった少女は少しずつ人間味を取り戻していくの、好きだなぁ。
撫子の曾祖母は界隈で恐れられる偉業を成し、獄門でも特に恐れられている人物だったようですが。撫子はまだ、怪異を一蹴とかできるレベルには至っておらず、奮闘しているのもあって、最初から等身大の少女感はあって撫子好きでしたね。
……まぁ再三言っている通り、怪異の肉を必要とする異種としての性質も持っているわけですが。
そんな異質である彼女を変に恐れることもなく、近づいてくるアマナの存在はなかなかに救いであったと思いますね。
アマナはアマナで色々と胸に秘めたものがある人物であったというか。普通を自称する人物は、たいてい普通じゃないんだよなぁというべきか。その秘密を知り、今度は自分から踏み込んでいく撫子が良かったです。凸凹だけど良いコンビと言えるのでは?