「神々よ、英知の女神は私に嘘を吐いた。ユルゲンシュミットの礎を満たしてもローゼマインから神々の御力は消えなかった。これは神々が望んだ結末か?」
(略)
「最も神々に祈りを捧げてきたローゼマインこそ、最も生きる価値がある。呪うならば私にすべきだった。これより呪いと化した祝福を返す。神々に翻弄されたローゼマインに正しき祝福を」
本編完結となる第五部12巻。
ローゼマインの記憶を取り戻すために奮闘しているフェルディナンド視点のプロローグからスタート。彼の視点から見ると英知の女神があまりにも神様過ぎてなぁ……。
呪い返しまで視野に入れて行動をしていたとなれば、本当にできる事全部やったんだなと感心してしまった。
それなのに「後はフェルディナンドがなんとかしてくれる」と楽観決めてるローゼマインみたら、苦言の一つも言いたくはなるか。
あまりにも本好きすぎて、一般的な男女間の感情については理解できない。
それでもフェルディナンドが大切だというのは間違いなくて、彼との関係を受け入れることにしたのは、落ち着くべきところに落ち着いた感はありますね。
そして新たなツェント・エグランティーヌとの対話、婚約からの領地でのアウブとしての宣言が入って。
WEBにはなかった、まだ信頼できる貴族が少ないためにエーレンフェストに一時的に帰還して諸々の準備を整える章が結構なボリュームあって良かったですね。
それぞれの側近たちにも想いがあって。ローゼマインの筆頭文官としての地位をより早く確かなものにしようとアレキサンドリアでの滞在期間を延ばすことを選んだハルトムートは相変わらずだなぁ、と思いましたし。
親族の扱いについて聞いたアウレーリアについても、彼女の置かれた状況を思えば納得できるリアクションではありましたか。あとは、ローゼマインがエルヴィーラから「貴女以外の誰にもできなかったことです」とお褒めの言葉を貰っているシーンも尊くて良かった。
就任式で、他の領地から不満が出た時もローゼマインは隣にフェルディナンドが居たこともあって落ち着いていたの良かったですね。
……魔王様の策略に嵌められた人、というのが明確だったし。反撃できる状況でもあったからなぁ。言われたままで終わらない、大領地のアウブらしい姿勢は見せられたのでは?
なろうの方の活動報告で書かれていましたが、ローゼマインとフェルディナンドが就任式で切ることになった「(結果的に)互いの髪の色になった服装」は、『このライトノベルがすごい! 2024』の表紙イラストになっているそうです。言われてみればそうか。
あと、口絵のカラーイラストが「帰宅」のシーンを採用していてネタバレになるから、と巻末に置かれているのも珍しい配置でしたが、こだわり感じてよかった。