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「私は、ガブリエルを心から愛しています。たとえ、彼が無一文になろうと、縁を切るつもりはいっさいありません」

 

努力の人であった姉は、婚約者であった第一王子が愛人に傾倒しすぎているのを注意して不興を買い……公の場で婚約破棄を告げられた。

それによってヒロインであるフランセットの実家、ブランシャール公爵家は没落の憂き目にあうわけですが。

その姉は母の実家を頼りに他国へ渡り、そこで別の相手をみつけて幸せになったとかなんとか。フランセットは、しかし姉の婚約破棄から掌を返したように態度を変えた人々を見たことで、社交界というものへの希望を失い、母と姉にはついていかなかった。

そうして父と一緒に母国に残ったわけですが……フランセットの父もまた、社交界で名の知れた変人というか。あちこちに愛人を作って、家に寄り付かない人物だった。

 

荒んでもおかしくない環境に置かれていた彼女ですが、それでも強かに生きて善性を失っていなかったのが良いですね。

父が他所で作った愛人と逃げた、と妻を盗られた形になる商会長から文句を言われて窮地に立つことになっていたフランセットを助けたのが、ガブリエルだった。

彼は、先祖が強大な魔物を倒したことでその地位を与えられた大公の一人だった。ドラゴン、セイレーン、ハルピュイア、オーガ、トレント、フェンリルと錚々たるメンバーが揃う中にスライムが紛れ込んでいるの面白かったですね。

 

まぁ実際水たまりに擬態しているスライムが生息している湖水地帯とか、かなりの死地になりうる場所ではありますが。

とは言えそれも千年も昔の話。今も大公位は継がれているけれど、ドラゴン大公なんかは王家の中でももっとも剣技が優れたものに送られる名目だけの爵位になったりしていたようですしね。

それで言えば。ガブリエルの住む地方は今なお「住人よりもスライムの方が多い」なんて言われるような状況を保っているの、逆にすごいのでは。……それだけ発展できずにいたとも言えますが。

 

住人の中にもスライムへの忌避感を持っている者もいるみたいですし、ガブリエルはスライム大公としてスライムをテイムして情報を集めたり、それらを活用した領地の発展を画策したりと意欲的な人物だったのはヨシ。

フランセットも王都から地方都市へ赴くことにはなったけれど、その環境を楽しんで自分の知識を用いて発展に寄与しようとしていて、婚約者として良い関係を築けていたのが良かったですね。

それを面白く思わない親族からの横槍とか、娘に面倒事を押し付けてきたフランセット父の真意とか、厄介ごとの方からやってきたりもしてましたが。それらを無事に超えていたのでほっとしました。幸せになって欲しいものです。