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「一緒に居る時は助けるし、離れていても力になる。相手を尊重する。理解に努める。それが及ばなくても、粗末には扱わない。――そういうこと全部を無条件で当たり前だと思ってる。俺にとって花乃と一妃はそういう相手だ」

 

床辻の守護をする地柱の一角になった蒼汰くん。

彼の隣には相変わらず異郷の住人である一妃と、以前の事件の影響で首だけになってしまった妹・花乃の姿があって。

彼は半分人間としての側面を残していることや、まだ就任直後ということもあって地柱としての職務については試行錯誤の毎日みたいです。

 

一部とはいえ土地神みたいな役割を担うことになったわけだから、監徒から市内の高校へ転校してくれと頼まれることになって。監徒関係者が多いだけなら驚かなかったのに、先輩地柱の墨染雨との出会いまであったのは驚きましたね。

先輩地柱達は、蒼汰みたいな半分人間みたいな状態ではなくしっかり「地柱」という存在を全うして長くを生きている方々で……。

 

知恵袋的に頼りになる場面もあったんですけど、やっぱり一妃みたいに人とは違う価値観を持っているな、みたいなシーンもあってちょっとゾクゾクしましたね。

人と似ていて、けれども違う。異種が異種であることが示されるシーン、結構好きなんですよねぇ。

多くの禁忌がある床辻ですが。「東西南北を結ぶ道を歩ききってはならない」という禁忌が破られないようにするために、信号が多めに配置されている話だとか。国に対して「そんなつい最近できたようなもの」とこぼしたりだとか。

違う常識で生きてる方々なんだよなぁ。それでも一妃みたいな変わり者を除けば、異郷の人物よりも、一般的な人間に近くて……だからこそ、人と交流できてしまうし、それによって揺さぶられることすらあるというのが危うさだとは改めて思いましたが。

 

地柱を止めるには死ぬしかない、という意味で蒼汰くんは既に不可逆な変化を迎えた主人公なんですよね。

それを受け入れて、その状態で出来ることを模索しているわけです。目下、一妃から妹の体を取り戻したいと思っているみたいですが。一妃と妹本人は現状を良しとしていて、不利な状況。それでも相手を否定するのではなく、自分はこうしたいという意見を発し続けていたわけで。

そんな彼だからこそ、あの最後になったのは納得です。彼が自分を貫くのであれば、同様に個人の意見を貫こうとする人物を否定するのは、一貫してないことになりますしね……。

不可逆な部分が、悲しくないと言ったら嘘になりますが。異種を交えた上で立派に家族をしていた3人の導いた結末が、良いものであったと私は思います。