「いつかは、あなたが頑張らないでいいように、わたしが守ってあげるから」
なろうからの書籍化作品……なんですが、2018年連載開始で2020年には本編完結済みの作品なんですよね。その後も、本編外のエピソードを更新してる作品でもありますが、今書籍化するのかとちょっと意外に思ったのを覚えてます。
本編完結済みという安心感から途中まで読んで、積んでしまってるのでこの機会にWEB読破しようかなぁ……と思いました。まる。
閑話休題。
主人公のクリシェは捨て子だったが、とある村の狩人の家に拾われた。彼女は、村では見られないような美貌の持ち主であり……そして、どこか人とズレた価値観を持っていたために、「浮いた」存在であった。
一面から見れば彼女はちょっと変わっているけれど、家事手伝いも村の仕事も積極的に手伝ってくれる働き者の女の子であった。ちょっと食い意地が張っていて、行商人が来ると楽しみに近づいている可愛げもあった。だからこそ、女衆の多くは彼女の味方だった。
一方で彼女は、自身の平穏を脅かす輩を排除することを躊躇わない非情さを持ち合わせていた。さらに敵認定したらそれを排除することを簡単に決定できる上に……彼女にはそれを実行できる実力も備わっていた。
もっとも、それを大っぴらにやると迫害されてしまうことも分かっていたため、可能な限り痕跡を隠すことに努めてきたわけですけど。
それでも彼女をいじめていた少年が獣に追われて不審な死を遂げたり、彼女の母に言い寄っていた不逞の輩が姿を消したりすれば、村社会で悪評が立つのは避けられなかった。
まぁ先述の通り女衆の多くはクリシェの味方だったし、何より村人の多くに慕われている人物が彼女の養母であったため、悪評があろうとクリシェが完全に孤立することはなかったんですよね。
けれど、ある日。行商人に扮した族が村に新設顔で近づいてきて……彼らの蠢動によってクリシェは庇護者を失ってしまうことになるわけです。
そうなると浮いていた彼女のことを、村では扱いかねてしまって……それでも養祖父にあたる人物が伝手を使って、新しい庇護者を見つけて街に送りだしてくれたのは良かった。
快不快と敵味方の切り替えがかなりハッキリしているというか。その上で「感情」というものが理解できない異質さを抱えていたからこそ浮いてしまったクリシェですが。
彼女を迎え入れてくれたクリシュタンド家……特に、クリシェの面倒を主に見ることになった使用人のベリーが、クリシェに分かりやすいように情緒を教えているシーン、好きなんですよねぇ。
「母が死んでしまったのは残念だ」と淡々と語るクリシェに、どうしてそう思うのかを聞いて「その感情を悲しい、と言うのです」というように説いていくのが良い。今はまだ完ぺきに届いていない感じもしますが、少しずつクリシェの中にベリーの教えが溶け込んでいったら良いなと思います。
……まぁ、クリシェ。軍人の家系であるクリシュタンド家で教育を受けた結果、特異性の方も順調に磨きがかかっていったんですけど。ベリーのほかに、クリシュタンド家のお嬢様であるセレネもまた気にかけていて、クリシェは両手に花状態なわけですが。そのまま穏やかに過ごしてほしいものですねぇ。
今まさに戦地にクリシェが手紙を届けに来て、作戦立案にも関与することになったので、こう2巻以降はどうしたってより多くの血が流れることにはなるでしょうけど……。