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「なくなったら困るでしょう」
(略)
「だって、君はそれを書くんだから」
まるで真理のように。
「心を痛めて傷つき涙する、そういう物体を書かなくてはいけないんだから、そおれをなくしてしまったら、ねぇ? 困るでしょ。知りませんけど」
紅玉いづき先生が、アマチュア時代に書き続けたシリーズ『Gift』。
同人誌版は即完売して、クラウドファンディングプロジェクトにて文庫版が発行されました。……私は、その後若干数だけBoothで発売されたものを運よく入手できただけの人ですが。良い物語を読むことが出来ました。
気難し屋と言われる人形界のプリンセスこと、人形師の二代目平田開闢。
現役女子高生で人形作りの腕があり、当人も容姿が整っているとあって、取材に来ても彼女の作品ではなく、彼女自身にカメラを向けてくることに腹が立っていたとか。
そんな中でカメラマンの宮本晴久は、ほぼ人形にしか興味が無かったために、彼女のアトリエに何度か出入りする機会を得ることが出来た。
噛み合っているような、すれ違っているような、不思議な距離感で2人は交流していって……その過程で、お互いの欠けていた部分を埋め合うことができるようになった。
自分の得意分野については自負があるけれど、その他の部分では不器用な部分が光るキャラ達がそれでも傍に居ようとする光景が、綺麗だったなと思います。
そんな2人のエピソードから始まって、その後は断片的に未来と過去とが描かれていきますね。
例えば、ほとんど接点がなかったけれど同じ学校に通っていた少女・芹沢から見た、開闢の話。
あるいは宮本の学生時代からの友人であり恋愛小説家として名を知られている真木遊成。
彼と少しだけ縁のあった女性の話や、実家を捨てた彼と唯一繋がっている妹の話。
開闢自身の過去の話。開闢と晴久の交流の話。いろんな物語が記されているんですが。
紅玉先生の言葉遣いが好きなんですよねぇ。刺さる描写が多い。
人形師平田開闢が人形を作って求めたもの。カメラマン宮本晴久が信仰するもの。笠井さんとの別れ際に真木が遺した言葉だとか。「とても純粋な人ですね」という、指摘だとか。代名詞なしに話が通じた時に感じた、繋がりだとか。
晴久が開闢に手を伸ばしたきっかけが、彼女から受けた優しさだったというのが好きだし。そんな彼の何気ない言葉を学生時代の真木は優しいと評しているの、人間の多様さというか。角度違うといろんな表情があるよなぁ、という感じで好きです。