「いずれの死も、残された者が紡ぐ……死は一人称ではない、二人称だ」
ヴィノクール伯爵家という伝統ある家の令嬢アナスタシア。
彼女は優秀な令嬢であったが……女であったこともあって、家の方針を左右できる立場には立てず。兄のケインが主なかじ取りをしていたが、彼には後先考えずに大言壮語する悪癖があり……いろんな策謀に踊らされた結果としてヴィノクール家は没落の危機に瀕していた。
出来る範囲でそれを回避しようとしていたアナスタシアでしたが、それが無理なことを察した後に、体調不良により死亡。
……したはずが、気が付いたら十七年前。アナスタシアが十三歳だった時代に戻っていた。
彼女は横暴な兄やそれに味方する母に負けない、自立した女性として自由に生きることを決意。十七年の間に培った知識・経験を活かして、望む未来を掴もうと行動を開始することに。
兄から家宝の宝石を盗んだ疑いを掛けられた侍女を守るために、珍しくパーティーを主催してみたり。商会を立ち上げるために優秀な人物をヘッドハンティングしてみたり。
概ね上手くはいってましたが……例えば、兄が家宝の宝石を持ち出す事そのものは止められなかったり、父のとある決断について知った時には手遅れになっていたりして、なんでもは上手くいかないあたり、人ひとりで出来る限界を感じて良かった。
権威至上主義のウィリアム第一皇子と、聡明で新興貴族に支持されている第二皇子との間での火種がくすぶっている状況で、兄が踊らされやすいのも時代や環境的には良くなかったですねぇ……。
二周目においてアナスタシアは奮闘の結果、良い未来を掴んではいましたが。良い感じになっている人物、一周目においては彼女の家を切り捨てる決断を下した側なんだよなぁ。やむにやまれず、という雰囲気は出してましたし。2周目では助けてくれてますけども。初手の印象を微妙に引きずってしまったのは良くなかった。
まぁ敵側がより分かりやすくヘイト買ってくれてたので、やり直しの王道展開で読みやすくはありましたね。