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「あ、貴方に、こんなことを頼むのは……おかしいってわかってます……わ、私は、選択を誤っているのかもしれない……でも……私には……私には貴方しか……貴方しか、頼れる人はいません……」

(略)

「任せろ」

 

女子同士の恋愛を描く百合ゲーと呼ばれる作品をこよなく愛していた主人公。

ある日事故によって無くなった彼は……そんな百合ゲーの世界に転生することになったわけですが。

彼自身は、百合をこよなく愛しそれを外から眺めてるだけで幸せになれるタイプの人間であり、多分百合ゲー世界で猫とかになっても「あぁ百合尊い」って鳴き声を上げて満足な猫ライフを送ったことでしょう。

 

……しかし彼が転生したのは百合ゲーにおける異物、百合の間に挟まろうとする男キャラ三条燈色であった。

百合にちょっかい出してくる男である、という時点で百合ゲーユーザーから減点入ってるのに、この三条はイベントを邪魔してくるわ百合の間に割り込んでくるわでヘイトを買いまくっているキャラだった。作中キャラからも蛇蝎の如く嫌われている人物であったようで、ルートごとに様々な死に方をするみたいです。

 

転生とは言うものの、ある程度燈色くんが成長した段階で意識が覚醒した、みたいな状態で。つまりは燈色の評価が低い領域で定まってしまったタイミングでもあって。

念願の百合ゲー世界に転生した彼の狙いは、まず百合を守ること。

「百合に関することは、なにも見逃さない」とか言ってたり、百合を守るためなら命を惜しまない(とはいえ、ゲーム本編みたいな犬死はしたくない)とか思っているあたり、軸のブレなさは凄いと思うよ。

燈色の実家である三条は名家であるようですが……ゲームにおけるお邪魔キャラである彼を扱いかねている部分がある、というかなんなら積極的に排除しようとしていたみたいですけど。

 

百合ゲーという女子の方に焦点が当たっている世界で男子である、というのはなかなか生きにくそうなうえ、そのキャラがお邪魔キャラってことで実にハードルが高そうな状況ですけども。

そんな中で不思議とヒロインたちとの縁が出来た燈色くん、ゲーム本編の流れに影響があるとしても、今泣いている少女を見捨てられないと行動を起こせるのは実にポイント高い。

……まぁ主人公が実に百合オタク過ぎてテンションバグりがちなので、彼のノリについていけるかどうかは一つのポイントになりそうですが、愉快な作品だと思いました。