「行きなさい。そして、見極めてきなさい。私のような凡人では決して理解が及ばなかった、峰島勇次郎の本意を」
再読。
由宇が闘真を戦いから遠ざけようとした結果、離れることになった2人。
まぁ元々秘匿封印されている由宇と、特殊な血を引いてこそいるけれど一般社会で生きている闘真とでは住んでいる場所が違ったわけですが……それでも、敢えて決別を表明したことは意味があるでしょう。
闘真はいったん学校に戻って友人と再会したりしてましたが。……一度登校したのが、退学届けを出すためだ、っていうのは覚悟決まってるな。
進んで辞めたいわけではないけれど、遺産にまつわる事件に関わっていく中で、何事もなかったように日常に戻っていくことはもうできないと判断して距離を取ることにした、と。不器用だなぁ……。
学校に顔を出した際に、友人から「妖精が通り抜けるフェアリーショック現象」だったり、「謎のドラゴンの目撃情報があった」なんて気になる噂を聞けたのは良かったか。闘真、そのあたりに疎いですからね……。
他にも先代の鳴神尊の所持者はどういった人物だったのかと気にし始めたりもして。
……怜に突っ込まれてましたが、それを気にする段階大分遅いと思うんだよなぁ。のんびり屋にもほどがある。まぁ2年前の事件以来距離を取っていたというのもあるでしょうけども。
怜と会話する中で、闘真は歴代の所持者と比べても特殊な状況だと指摘もされてましたね。鳴神尊による人格切り替えのスイッチは完全に機能して、表と裏の記憶はほとんどつながらないみたいですが、闘真は違ったと。
男にしか現れないとされる禍神の血。しかし、過日麻耶を襲撃した人物の残した痕跡に闘真は「鳴神尊のような痕跡だ」という感覚を抱いて。
当主不坐の暗躍に気付いて警戒を強めることになっていましたねぇ。
他にも麻耶や闘真の兄である勝司がミネルヴァとつるんで動き出していて、真目家もなかなかの魔窟だよなという認識を新たにしました。
一方の由宇はNCT研究所LAFIのカオス領域に接続する試験を行い……予期せぬトラブルが発生し意識不明に陥ってしまって。
それを見たADEMに属するNCT研究所の木梨は、自分なら上手くできると高をくくって同じ実験に乗り出し……盛大に失敗していたのには頭抱えたくなりましたねぇ。肥大化した自尊心の果てがあれかぁ……。
死者も出るような大混乱が起きた結果として、由宇が外の世界に踏み出せのは良かったのか悪かったのか。
あちこちで別種のトラブルが起きている状況ではありますが。
由宇が風間から与えられた情報や、勝司が探し求めているもののとして【天国の門】という共通した名前が出てきて……様々な勢力の思惑が、不思議な噛み合い方をしてその遺産の前で対面することになった最終盤面はちょっと面白かったですね。何かがズレていたらどこかが出し抜いていたかもしれませんし。