「そう言うことじゃなくて。彼女は普通の優しい子です。彼女自身は。でも……。僕は彼女を守る力が欲しい」
(略)
「必要なのは強さであって力とは違いますよ。そこをはき違えると不幸になります」
再読。無気力状態の由宇よりも先に、無機物生命体……グラキエスの生息域を見抜いた岸田博士はお見事。その情報を聞いた由宇が計算したところ、地上を支配するのにかかる日数はなんと「十日」。予想以上に早いタイムリミットが切られることになって……由宇が自らシベリアに赴くことになったのは、一つの進展か。
いつまでも地下に引きこもっているのも、彼女らしくないですしね。
シベリアへと赴いた由宇は、すぐにイワンと話すために手近な兵士に駆けられた洗脳を話術に解いたわけですが。イワンも速攻で使えなくなった兵はいらないと切り捨てにかかったので、おっかないですねぇ……。従えてるいかずち隊からして死兵だからな……。
「true
side」で本当にいくつもの伏線回収されて行ってるの好きなんですよね。トンデモ能力者だったサタンもまた、今回猛威を振るっている無機物生物であり……グラキエスとは違う進化を遂げた存在である、というのとか。ちゃんと理由付けされていくの好き。
由宇が基地に侵入したのと時を同じくして、イリーナの母スヴェトラーナや闘真たちと行動を共にしていたミネルヴァのリバースも基地に入り込んでいて。
予期せぬ接点が出来ていたわけですが。闘真から由宇の話を聞いていて、彼の言葉を借りてフォローしていくたびに由宇が不機嫌になっていく描写、好きです。
グラキエスに飲まれた村々から生き残った人々を逃がし、難民を率いる状態になっているスヴェトラーナ達ですが。軍部の暴走によって全滅した街まで出ているとかで、もうメチャクチャですね。
さらにアリシアが不穏さを感じ取っていた通り、スヴェトラーナの記憶にも爆弾情報眠っていたのがもう……。
でも、伊達が上手く立ち回って交渉を成立させて、公的に認められた状態で介入できるようになったのはお見事でした。
マモンも八代も岸田博士も各々別の形で命を拾っていましたし、悪い事ばかりでもないですね。
……岸田博士だけ合流できていないのは気がかりではありますけど。最後、峰島勇次郎と旧知であった彼が行ったとあることについての描写があったのが、個人的には初めて読んだときに一番驚いた記憶がありますねぇ。