「お金。自分のことは自分でどうにかしますから。好きで貴方の傍にいることを選んだ女ですよ。欲張って大きな葛籠を選べば、たくさんのお化けが出てきちゃうんです」
俺の服をしっかりと握ったまま、ソレ以上は踏み込んでこようとはせず、スノウは満足げに笑みを浮かべてささやく。
「だから……もう、これ以上、要らない」
オリエンテーションの客船で、魔人アルスハリヤと戦い最後はもろとも爆発に巻き込まれ……死んだはずだった。
しかし、彼はなぜか生き延びていた。なぜかグレーターデーモン、ヴァンパイアロード、リッチキングといった序盤に遭遇したら即死レベルのボスキャラに囲まれて、異界で目覚めることになったわけですけど。
更には、彼自身の持っている魔力量も不自然に増えていた。……まぁあらすじでバレてるので言ってしまうと、死に瀕したアルスハリヤの工作で彼女と融合した結果魔力が増え、アルスハリヤの影響を受けているから彼女の配下だった異界の住人達から「教主様」と呼ばれるようになっていたわけです。
元々、百合に挟まる男枠に転生した百合スキーという濃さだったのに、さらに要素増えていくの凄いな……。
アルスハリヤがヒイロと融合した結果若干ポンコツ化の気配を感じる。
ヒイロはアルスハリヤを見ると殺意ゲージがMAXになるし、融合の事実を知った時に初手で腹を斬ろうとしたの、ギスギスしすぎてて笑った。
人を弄ぶような魔人に「自分の命くらい、大切にしろよ……」と言われるの流石。
あと「その方程式の答え、全部、破滅だけど大丈夫そ……?」って突っ込まれていたやり取りも笑ったし、ヒイロの割とハイテンションのはけ口になってくれてるし、良いコンビだなーとは思った。
それはそれとして。ヒロインたちとあれだけ交流しておいて、死んでしまったとなれば彼女たちの心は乱されるわけですよ。
スノウと最初に再会して、ボコボコにされたりしてましたけど。
ヒイロの見通しが甘すぎて、色々言われるのも無理はないし……スノウもまぁ、彼の事色々と気にかけてますし止む無し。
アルスハリヤの指示の元、ヒイロに執着しているヒロインたちの心を別のヒーローに奪わせしまおう作戦とかも実行してましたが、まぁ失敗。
その上で学園生活に戻ったわけですが……男でスコア0のヒイロが消息不明になっただけなので、そこまで大事にもなっていなかった模様。一応は報道規制も敷かれてはいるみたいですが。
アルスハリヤ陣営を配下に迎えられることになったヒイロ、緋墨は彼だけが先達の意志を継いだうえで帰ってきてくれたからと傍に居るようになったし。
彼女の友人であるリイナ達もまた離れない選択をしたわけですが。放っておくと一夜で宮殿建っちゃう有能さ、逆に怖いよ。
今回は、彼を選んだ寮長であるミュールの姉クリスと対峙することになったり、アイズベルト家の問題が描かれることになっていたわけですが。
アルスハリヤの影響で増えた魔力を上手く制限できずにいる、というのを差し引いてもクリスは強敵で……それでもなお戦いに臨んだヒイロはお見事でした。