「いいよ! いやがらせが効いてねえって口で言えよ!? いやがらせにいやがらせで返す必要はねえんだよっ!」
「まぁ、いけませんわ! 貴族たるもの、同じリングで戦いませんよ」
「正々堂々に見せかけて、机の下で足を小突き合うような陰険な戦いに巻き込むな……」
「それがあなたのお仕事でしょう?」
ファーガソン公爵家の令嬢レイチェル。
彼女は婚約者であるエリオットがポワソン男爵家の令嬢マーガレットに懸想したことで、国王夫妻が外遊している隙に、王子の独断で婚約破棄を告げられることに。
さらに冤罪によって王子はレイチェルを城内にある牢に幽閉しようとしたわけですが……。
レイチェルは、婚約破棄を勝手に宣言する王子なんかより数百倍は用意周到であった。
彼女は「未来の王妃」として求められる態度をとる、立派な猫を被り続けていたわけですが。その実、かなりヤバい内面を秘めていた。
幼少期、いじめっ子への報復として主犯を池に叩き落して、浮かんでこれないように石を投げつけようとしていたとか言いますし。やられたらやり返すを地でいくところがあって。尖ったところのある彼女の下には、不思議と優秀な人材が集まっていた。
なので、実はこの婚約破棄騒動を王子が企んでいる、という情報も先んじて掴んでいたようですけども。
レイチェルをして、王妃教育は大変で……。それを相手に非がある形で受けなくてよくなるんだから、話に乗っかることにして。
さらに教育にかかる膨大な時間が空くから、地下牢に放り込まれるのも見越して物資を運び込み、趣味の時間に費やそうとか言い出すんだから本当に自由な娘だよ……。
放り込まれた彼女が監禁生活で弱って罪を認めれくれれば儲けもの、と王子たちは定期的に顔を見せてくるんですけど。その王子たちを適度に揶揄って実に楽しそう。
レイチェルが牢獄にいながらにして出前とかケータリングとか頼んでいて、そんなもん貴族世界にあるかー、みたいなツッコミも居れたくなる時ありますが。手を変え品を変えレイチェルが王子周辺を揶揄うノリが楽しいのでヨシ!!