「あら、私は昔からこうですわ? ただ、王子の許嫁という立場がありますと、行儀を良くする方が優先になりまして……」
レイチェルは唖然としている一同の顔を眺めながらクスクスと笑う。
「面白いですわよね。私を舐めてかかっている人って、私に口が無いと思って公言できない自分の自慢話や他人の噂話をペラペラしゃべるんですのよ。なんで私が他人に喋らないなんて思うのかしら? ふふ、おかしい」
婚約者を引っ張りだしたり、王子のとりまきになっていた弟を切り離すことに成功したレイチェル。
「翼はもう片方ももぎ取らないとバランスが悪い」と、騎士団長の子息であり弟と同じく王子の取り巻きになっているサイラスを切り離す策略を練って。
……まぁ手としては単純で、同じように婚約者を引っ張り出してきたわけですけど。
その少女マルチェラは、サイラス第一のメンヘラ少女であり……サイラス絡みの時だけ能力が圧倒的にブーストされるバーサーカーであった。
それは騎士団共通の見解であったようで、サイラスから一旦距離をとらせて落ち着かせようとした結果、遠方の砦に詰めていたようですが。話を聞きつけて、止める同僚を蹴散らして現場に駆け付けたのはあまりにも逞しい。
レイチェルは本人が協力的だったからとはいえ、冤罪で地下牢に放り込まれていたというのに、あからさまに暴れまわり地の文からも「レイチェルの代わりに牢に入っていてもおかしくない騒ぎ」を起こしたマルチェラは、周囲が誰も爆弾には触れたがらなかったという理由で不問にされているの、ギャグ的にはありだけど裁定のバランスがなぁ……とは思った。
まぁエリオットはレイチェルへの嫌がらせに必死になりすぎて、もともとのスペックが無かったのも合わさり、城内の仕事が滞りまくっているようですし。
そのあたりの判断基準があやふやなところも彼の瑕疵ということになるんだろうなぁ……。
レイチェルと敵対している派閥の家からも、エリオットへの抗議の声が上がっていたというんですから、まぁ順当ではありますが。
彼の無能さを知らしめるように、レイチェルが仕掛ける嫌がらせが規模が大きくなっているんだろう、と国王たちは分析してましたが。それもあるだろうな、と納得できるレイチェルの策略よ……。
エリオットは騒動の責任を取る形で隠遁生活を送ることになって。
レイチェルの才覚が改めて示されたことで、次期王妃として彼女を確保したいという思惑も働き、実はいたらしい弟の次男レイモンド王子が新たな婚約者として決まって。
……レイモンド君はレイモンド君で、ちょっと変わった子でしたけどまぁ、エリオットよりはレイチェルと上手くやっていけるのでは……?
次代の国の行く末、めっちゃ気になりますけど、どうなるんですかねぇ……。