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「ボクがこの子を預けたいのは、怒り狂ったエイサーじゃなくて、ボクを誰よりも幸せにしてくれたエイサーだ」

 

表紙にも登場している通り、久しぶりに黄金竜が登場。

……それどころか、南方の大陸に眠る古の種族である黒檀竜が目覚め、大陸一つを焼き滅ぼしたという話まで出て来て。

同胞に終焉を齎すべく北の大陸も燃やすべき、と黒檀竜は訴えたようですけど。エイサーと交流していた黄金竜は、エイサーの意見も聞きに来てくれて。

もし黄金竜が躊躇わず北の大陸を焼こうとしたら、戦う心づもりで話し合いに臨んだエイサーは覚悟決まってましたね。

 

南野大陸のハイエルフと、それに力を貸す南方大陸のハイエルフ由来の精霊。

そんなコンビネーションに驚かされたときに、彼の故郷の長老たちや旅路で触れあった精霊たちが助力しに来てくれたのは熱かったですねぇ。

宿る環境から動かない精霊だが、それは「動けない」わけではない。少し無理する必要はあるというけれど、来てくれたのは本当に良かった。

そうやって世界の滅びを回避し、だからこそ南方大陸の再生についても手を貸すことになっていたのは……まぁ、責任というかなんというか。彼らしくはありますね。

 

しれっと書かれていましたが、草草原を統一した大部族が黄古帝国に攻め込み、決戦の果てに撃退されたとか。

それが「風と炎を崇めるバルム族」だっていうんだから、エイサーの出会ったツェレンとジュヤルが上手くやって一族を大きくしたんでしょうし……その結果として、大きな争いに繋がったのは物悲しいものがある。

 

西武での動乱を終えたウィンは、トップが絶対的な権力を握る帝政を取ってサバル帝国を建国。ハーフエルフである彼は、血を残すことが難しいだろうという事情もあって。

ある程度余裕がある時期で地位を譲り、後見に経って国を纏めようとしていましたが。その際に、エイサーの協力を仰ぎたいと手紙で伝えて来たわけですが。

わざわざエイサーを呼び出した裏には、当然別の思惑もあって。それが、人間の妃との間に生まれたが権力争いの中で母の命を奪われた、幼い赤子を守ることで。

……戦いの中に身を置いて、多くを失ってきたウィンでしたが、それでも幼少期にエイサーに導かれたことが、彼の光になっていたのは本当に良かったですね。

そうやって託された少女、ソレイユがエイサーとアイレナを父母として、とても純真な良い子に育ったのは何よりでした。思わぬ才能を見出されたりもしてましたけど。

 

あと、今回印象的だったのはやはり番外編の「クソエルフの友」でしょう。

ドワーフの王となったアズヴァルド視点。長年の友エイサーと最期の別れをした後の、彼の心境について。エイサーとの交友が自身の誇りであったり、最期まで友でありたかったからこそ、自分の死をエイサーに看取らせるのではなく、意地を張って最後まで倒れずにエイサーを見送ることを選んだ彼の在り方が、好きでした。