「無理でも、やれ。無理だった、に変わるまで足掻けよ、誠一」
(略)
「お前が諦めた時に無理になるんだ。無理だから諦めたんじゃない。お前はただ、つらくなったから放り出してしまっただけなんだ。誠一」
船坂叶馬は、家庭内不和を抱えた中学生だった。
母は音信不通だし、父は金は送ってくるけれど数か月家に帰らないのが珍しくない手合いであった。
だから、三者面談も先生と2人で行うことになったりしていたわけですが。
「高校には進んだ方が良い」という先生が、彼の伝手で推薦できる学校として勧めて来たのが、物語の舞台となる『豊葦原学園』であった。
全寮制の学校であり、叶馬的にもありがたい環境が整っている場所ではあったわけですが。
……検索しても引っかからなかったり、諸々おかしい状況もセットになっている学園でもあって。
ロストテクノロジーである「羅城門」によって、ダンジョンと呼ばれる異界に入り、そこで探索を行うダンジョン探索の授業が存在する、特殊な学園。
門を通る際に情報が記録されて、ダンジョン内部で死んでもその記憶を失った状態で復活できる、というセーフティーがあると表向きはされていましたが。
その実態は、内部で死ぬことで魂の一部をダンジョンに囚われる、生徒を生贄のように捧げるための装置として使われていた。
ダンジョン内部ではスキルや魔法と言った特殊技能を身に着けられるけど、外では再現できない。命の危機を経たり、レベルアップによる高揚感から男女間で肉体関係を結ぶのも珍しくない、なかなかに退廃的な場所なんですよね。
そういったアレコレを主人公は推薦してくれた先生から、何一つ聞かずにやってきていて。推薦者、なんか変な異名持っていたらしいので、そのことで注目されたりもしてますけど、なんかそういう心配ぶち抜いて自分らしくやってるので、笑える。
また、華組と呼ばれる一部特権階級の人々は、外でスキルが使えたりするなど機能を上手く活用しているみたいですが。
叶馬がビギナーズラック……というにはあまりにパワーに溢れていた方法ではあれど、同じような状況を創り出して、同世代以上に能力向上させていってるのは、頼もしくはあるか。
ノクターンからの書籍化なのもあって、肌色成分多めの作品ですねー。他の一般生徒だったり、この学園のシステムから逃れられなくなって教員として取り込まれた先生の視点だったりがあって、一歩間違えるとああなってしまうのが恐ろしいですけど。
……今のところ、誠一はなにも知らない状態ながら、上手く渡り歩いているので、このまま行って欲しいものです。