「だから、大丈夫。僕はここで生きていく。ぼっくの生まれた世界であるここで。家族であるみんなと一緒に、生きていくよ」
父と愛犬のショコラと2人と1匹で暮らしていた主人公の翠。
彼は父が事故で亡くなった後、遺品整理をしていたら山奥にある土地の権利書を発見して。
父が定期的に掃除をしていた場所らしいし、予定では今月行くつもりだったようだから、やり残したことを引き継ごうとして、その家に足を延ばすことに。
そして家についたタイミングで……翠とショコラは異世界へと飛ばされることになるわけです。
まぁあらすじでバレてるので言ってしまうと、実は翠はそもそも魔法のある異世界の生まれであったとか。
違う世界から人や物がやってきたりする「境界融蝕現象」というものが、翠の故郷にはあって。それによって翠たちは異世界から地球に行ってしまったようです。
翠の父は、地球から異世界に行ってそこで結婚して翠を授かり、そして再び地球に戻って亡くなったらしいですが。翠の生まれ故郷はあくまで異世界側であった。
……そして「境界融蝕現象」で別れ別れになってしまった幼なじみや翠の母が、異世界には健在で。再び現象が起きた時に再会しやすいように、翠の母たちが備えていたのが良かったですね。
実際、翠が転移したのは異世界側で危険地帯とされている『虚の森』の深奥部で。
翠の母と幼なじみは上澄みの実力を持っているから、距離や支援物資を運んでいる関係とかで多少の時間こそかかったものの、問題なく到達できてましたが。
変異種と呼ばれる危険な魔物が跋扈する、一般人からすれば危険地帯のど真ん中で。
翠自身も実力者の子供としてその才能の片鱗を見せてくれましたし、実はショコラも異世界由来の種族で頼もしい力を発揮してくれたし。何より、亡くなった翠の父も色々と備えをしてくれていたのが良くて、家族の絆を感じる物語でしたね。