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「そうか。俺はしばらく彼女とは会っていないんだ。忙しくなってきたから、と言っていた」

「あ、実際忙しいと思いますよ。いろんな意味で」

「――魔術に夢中になったか?」

「――なりましたし、これからもっとなると思います」

 

特級クラスに配属されることになったセララフィラ嬢。

去年の聖女が経験したように、使用人を養える分の稼ぎを得るべく行動を開始。ひとまず調和の派閥に所属することを決めたようですけど。その生活を続けるために、クノンの知恵を借りることに。

 

クノンの師匠ゼオンリーも土属性で、技師としての顔を持っていて有名なわけですが。

大地に通じる土属性は宝石にも影響を与えられるし、その方面での加工・細工で金策している人が多いとか。ただまぁ、既に切り開かれた場所でもあって新規参入は難しい。

建築関係も需要はあるけれど、期間限定だし収入も魔術師として考えるとちょっと安くなるとかで。

そもそもセララフィラ嬢は駆け出しの土魔術師なので、そうした方面で直ぐに稼ぐというのもハードルが高い。そんな中でまず、貴族として守秘義務の大切さを知っているセララフィラを聖女とつなげて、彼女の要望を応える形で当座の資金を得て。

その後、一大ムーブメントを引き起こしそうな「魔建具」とかいうものまで生み出しているの、クノンは本当に着眼点が良い。見えませんが。

 

発想力は凄いけれど、まだまだ交渉事とか面倒な調整とかそのあたりは不得手で、権利関係の話で師匠に相談の手紙送ったりもしてましたが。自分の苦手なところ把握して相談できる人にちゃんと話しとおせてるからまぁ、そのあたりの判断も踏まえて成長は感じますね。

 

そんなクノンですが、彼は視界を得るために魔術を極めようと最初こそ思っていたけれど今では十分に魔術師になって魔術そのものが好きになっていて。

同じように「英雄の傷跡」を抱えて生きて来た先輩から、とある実験に誘われることにもなったりして。縁ですねぇ。……まぁ、時間のかかる実験でもあるからまずは単位をどうにかしないといけない、という恒例の悩みも出て来てましたけど。