『私がこの城塞のもちぬしで、私がこの都市の、みなのあるじです――『支配』!』
魔獣討伐筆頭魔術師を歴代輩出してきたヒューズ公爵家。
そこの長女であるシルヴィアは、しかし弟が生まれたことで家でも放置されていたし……七歳の時に行われた教会による官邸で、シルヴィアの父からすると有用に見えない「魔物を倒すと魔力が溜まる」スキルと「生活魔法」の適性を発現したことで本格的に見捨てられることになって。
領地の端にある廃墟化した要塞を与えるから、家を出ていけと7歳の幼女に言う母よ……。
まぁ家族にも使用人にも期待していないシルヴィアは、これ幸いと家を出ていくことを決めるんですが。
「生活に必須」という彼女の認識があると、結構汎用的に使える魔法なのが凄いですね、生活魔法。本来教会に頼む契約の魔術とかも使えるみたいですし。
母に「城塞やるから出てけ」と言われたときに「契約書ください」と返したのが、この母子の関係を示している。
家畜とかを「支配」して意思疎通したりできる能力もあったり、魔物を倒して魔力を奪うのは支配下においた相手が行っても効率が悪いながらもシルヴィアに還元されたり、スペック高いんですよねぇ……。
放置されまくった影響もあって、色々と疎い部分とか危うい部分も見えますけど。
そんな彼女が目的に行く道中に出会ったのが、元騎士のエドワードと両親を亡くしてからとある服飾工房に引き取られて働いていた女性ジーナだった。
エドワードは第三王子に仕えていたけれど、親友や上司に裏切られ冤罪によってその地位を追われることに。醜聞になるからと息子を信じるのではなく父がもみ消す決断をしたのも、心の傷になったみたいです。
ジーナは「家族同然」という扱いで酷使されていて……そのことに気付いた時に、そこを離れる決断を下すことに。
そうやって傷を負った面々が城塞に向かう道中で出会い、なんだかんだ仲を深めて、城主となるシルヴィアを支えてくれたのは良かったですね。
赴いた土地に、人が抱えている罪が見られるというスキルを持った神官がいて。
彼は故あって隣国から逃げて来た身だったようですけど。そのスキルで見た時、シルヴィアは罪のない純粋な存在として移り、その傍にいるエドワードは罪深い存在として見えて。
そのことでエドワードと神官のカロージェロは、互いを危険視して探り合ったりしていたわけですが。
カロージェロのスキル、神官長が危惧していたように絶対ではないというか。子を流産してしまった女性にすら「罪」を見てしまうって言うのが、使い勝手悪いですよね。後、罪を告白して神官に許されて、浄化されると贖罪が叶うってものなのに視野狭窄になりすぎというか。
シルヴィアを神聖視するあまり、外野が争いまくった結果怪我人出たりしてるので、良いわ大人がなにやってるんだ……って感じでそこはちょっと苦虫噛んだような気分にはなりましたが。
派遣された土地、公爵家が積極的に見放そうと画策していた可能性があって、過去に何があったのか気になるところではありますが。とりあえず、現地の村人とかには受け入れられてたのは良かったですね。