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「いや、ただのそば屋じゃなくて『名代辻そば』だ。他の店じゃダメなんだ。店の場所が異世界でも構わないから、俺は辻そばがやりたいんだよ」

 

主人公の初代雪人は、週刊連載の漫画家として三年間描き続けて……体を壊したことで家族に泣かれたことで、連載終了に合わせて筆を折ることに。

激務の疲れからその事への未練もあまりなかったそうです。激務の中、彼の癒しとなっていたのが名代辻そばというチェーン店での食事をとることだった。

なので、漫画家を辞め、療養も済ませた彼は迷わず辻そばでのアルバイトを初めて。……飲食店でのスタッフも、それはそれで激務なのでは……? と思いましたけど。まぁ、やりたいことやるのが一番か。

バイトとして必死に勤め上げ、その姿勢が認められて正社員登用まで決まって、新規開店される店を任されることまで決まった。そんな最中に、事故で命を落としてしまった。

 

そんな雪人の魂を異世界の神様が拾い上げて。

望み通りの力を与えて異世界に送ってくれると言われたときに、彼が望んだのは「異世界でも、自分が惚れ込んだ『名代辻そば』をすること」だった。

そんな彼に与えられたのが「名代辻そば」の店舗をその場に自在に創り出し、必要な食材までも生み出せる(ただし店舗の外へ持ち出しは出来ない)と言った能力で。

来客数に応じてレベルが上がり、提供できるメニューが増えていくシステムまであって、至れり尽くせりですが。

 

彼が送り込まれた異世界アーレスは、時折雪人のように異世界から送り込まれる「ストレンジャー」と呼ばれる特殊な技能を与えられた存在が来るそうで。異世界の知識を齎してくれたり、特殊なギフトを持っていることから下にも置かない扱いを受けられるとか。

異世界に送られた先で最初に出会ったのが、カテドラル王国の王弟にして大公の位を与えられたハイゼン公のは幸いでした。

先述の通りストレンジャーとして公表すると、周囲は騒がしくなる。そうでなくても雪人のスキルは自在に食糧供給できるので、軍隊に彼を帯同するだけで飢えない軍が出来るとかいうトンデモ能力なわけですし。

ハイゼン大公からいろいろと異世界の事情を教えてもらったり、彼の庇護下に置いてもらって、雪人の望み通りの「名代辻そば」経営をやらせてもらえることになったのはなにより。

 

ストレンジャーながらそのことを公表していなかった少女が、異世界で懐かしのそばを食べて涙を流すことになったり。

カテドラル王国は、流通の関係上香辛料の類が高く一般的ではなく……逆に香辛料の産地に近い出身で味気ない食事ばかりで食欲の失せていた子供の心を開いたり。

異世界でも「そば」や「カレーライス」と言った日本のチェーン店の味が受け入れられて、多くの人の癒しになっていたのは良かったですね。

 

特別編として「10年後のチャップ」を収録。

本編で従業員として雇われたアーレス出身のチャップが、10年務めた「名代辻そば」での経験を活かして、雪人のスキルに頼らずアーレスのものだけで上手いうどんを創り上げたりしてて、成長を感じられたのが良かったですね。

他にも従業員が増えていたりとか、断片情報だけでも気になること多かったですけども。