「急な方向転換の原因はわかった。わかったけど、余計に頭が痛くなるだけだったな。この裏事情、旦那様が知ったら怒るぞ」
「あの子、本当にお騒がせ娘だよね」
ジュニア文庫の短編集の為に書き下ろされた『ベンノ視点 暴走娘の共通点』だとか、WEBのSS置き場に置かれていた書籍未収録エピソードや、特典SSを纏めて収録していたので、時系列は結構バラバラでしたね。
『レオノーレ視点 ブリュンヒルデの事情』。ふぁんぶっく4の書下ろしSS「お魔力亜kんちと結婚相手の条件」のこぼれ話。貴族の結婚についての話の中でも、ローゼマインの側近の家庭事情や親戚でもあるレオノーレとブリュンヒルデの会話が、結構新鮮だった気がします。
レオノーレがブリュンヒルデが嫁に行く形の結婚で、他所の領地に行くのはエーレフェストやローゼマイン様にとっての損失、みたいに評してるのをブリュンヒルデが「そこまで望まれるなんて嬉しいこと」と言ってるの、好きですねー。
『ハルトムート視点 踏み込み過ぎた代償』はタイトルから薄々察しが尽きますが、ローゼマインの側近になった後、彼女の過去について調べた彼がフェルディナンド達に釘を刺される話。エックハルトに取り押さえられてましたが……婚約の為にクラリッサにも押し倒されてるので、文官のわりに取り押さえられ過ぎではハルトムート……って思うとなんか笑えて来ます。
『ジルヴェスター視点 葬儀前の挨拶』で、ジギスヴァルトがまだ表に出せない話を前提にしたような親しさで話しかけてきて、ジルヴェスターが内心毒づいてましたが、本当に何してるんですかね、あの王子様。
アドルフィーネがフォロー入れてくれたのは良かったですけど。
その後に収録されている『アドルフィーネ視点 別れの女神に祈りを』の会議の時も思いましたが、ジギスヴァルトは本当にもう……意識の切り替えがさっぱりできてないの頭が痛すぎるな。
それを想えば『トラオクヴァール視点 ツェントからアウブへ』で、トラオクヴァールが直接礎に魔力を供給したことで自分の努力が目に見えてわかり、「喜びを旨に新領地のアウブとして生きていけそう」と言っていたのは少しほっとしましたね。
元王族アウブがいる領地が二つとも不安定だったら、新ツェントも落ち着かないでしょうしねぇ。扉のちょこっとメモで「グリトリスハイトを持たないツェントとして、非常に可愛そうな被害者という顔と、治世の為に犠牲を強いた加害者でもある」とされつつも「個人的に良きアウブになってほしい人」と評されていたのが良かったですね。
……いやまぁ、ツェント時代のアレコレは思う所ないと言えば嘘になりますが。それはそれとして、トラオクヴァールはツェントになろうと決断はできなかったけど、アウブとしての意識を持てそうだ、と意識を切り替えられそうだったのは救いだとも思いますし。
あとはルッツやトゥーリ達の下町組のエピソードが読めたりだとか、短編集3の為に書き下ろしされたエピソードとして『ダームエル視点 誓いの言葉と解釈』と『フラン視点 旅の終わりと新しい神殿』が収録されていて、省略されていた誓いの言葉だったり、領地移動時の苦労とかを見ることが出来たのは嬉しかったですね。