「『流星』がロストした。これは訓練ではない。『流星』がロストした。これは訓練ではない!」
現役の代行者の中で最年長である、黄昏の射手の輝矢。
彼は、長く代行者を務めて来た経験とか大人としての立場から、暗狼事件の時に現場に駆け付けた夏の代行者姉妹を保護しようとしたりしていた頼れる人物でありました。
……ただ『夏の舞』で登場した際も、奥さんと守り人の失踪で凹んでいたところから浮上し始めたタイミングだったり、彼もまた悩みを抱える人の子としての側面もあったわけですよ。
守り人の慧剣が帰還したり、月燈との関係は互いの立場もあって公にはできてないけれど順調だったりしたわけです。
守り人と奥さんの件があったとはいえ、輝矢自身の家族の事とかについては確かに情報少なかったな……と読んで思いました。同じ射手である花矢が学生だって言うのを加味しても、そのあたりの描写なかったですしね。
射手は場所に限定される現人神であって、守り人の権能もそれを支えるための幻覚なわけですし。動かないからこそ、賊に狙われないという面もあるみたいですけど……自由がないのも確かで。
父と母と兄と妹が居て、たまに電話でのやりとりとかはしていた。けれど、どんどん距離が出来ていって……。兄妹と話題が合わないから、ちょっとゲームとかを用意してもらったら「ずるい」と言われた、とか。両親が別居するなんて話になった時も蚊帳の外。
母だけはそれでも連絡をくれていたけれど……大病を患ったときに心の余裕がなくなって、疎遠になっていってしまった。
……遠くに住む、連絡とらない親族の事、だんだん関心が薄れていくのわからなくはないですけど。疎外されている輝矢の心境を想うと心が痛かった。
そんな輝矢……というか『黄昏の射手』に用のある人物が、彼の誘拐を企てて成功させてしまったというのが、今回の騒動です
騒動を起こした側も家庭環境とか色々抱え込んでいた結果の暴走で、ある意味被害者とも言えますけど。騒動を大きくするために、花矢の方でも騒動を起こすように手をまわしてたりするからなぁ……。
花矢、本命じゃないのに怖い思いしたし。輝矢が攫われたことで滞るかもしれない夜の神事を行うための準備に奔走することになるし。巻き込まれ続けたけど、輝矢も誘拐されている側だから責められる相手が居ないっていうのがね……ちょっと可哀想でしたね。
今の四季の代行者たちの関係が良好なのを受けて、過去に事故が起きて廃止されていた護衛官の剣舞が復活する動きがあるとかで合間に四季側の動きが描かれていたのも良かったですね。
花矢と雛菊が連絡先交換して仲良さそうなのも微笑ましくて良かった。……襲撃されてるタイミングで、ちょっと状況良くなかったですけど。連絡ついたことで援護間に合ったからまぁ……。
四季会議も無事に開催されて、そこで狼星と撫子がとても興味深い話していたのが印象的と言いますか。シリーズ続くと、この後は冬の代行者編になるでしょうしそのあたりも描かれるのを期待したいところです。