「私はもう逃げない」
「アリア……」
魔物ヤドカリが洞窟や遺跡を「殻」として一体化した、生きた構造物とされるダンジョン。
そこに生まれた「ダンジョンの精霊」っは、最下層を訪れた者に加護を与えると言われていて……。
クレイデール王国は隣国との対抗手段を得るために、若い王族がダンジョン攻略に挑むことが決まったとか。
そのメンバーにはアリアの同志である第一王女エレーナのほか、王弟や王太子と彼の婚約者たちがいて。……婚約者の一人として、アリアと因縁の出来た狂気の少女カルラが参加するって言うのが恐ろしい。
アリアはヴィーロからそのダンジョン探索の話を聞き、エレーナを守るために『虹色の剣』というクランに参加することになるわけです。
まぁ、初手は断ったんですけど。実にアリアらしい。
元孤児の冒険者であるアリアがいかにランク4とは言え、王女個人からの信用だけでは護衛任務に就くのは難しい。そこで、目的の為に協力するって言う打算でいいから一旦クランに入れという方向に話を持って行ったヴィーロは強かでしたねぇ。
そしてついにエレーナと再会できる流れとなったのは良かったですけど。
まだ若い少女であるアリアが、名の知れた『虹色の剣』に加入しようとするのに文句をつけてくる輩が居たり。懲りもせず暗殺者ギルドに絡まれたりとかもしてましたし、アリアの人生は相変わらず波乱続きですねぇ。
願いをかなえるダンジョンの精霊。エレーナは健康になることを願い、カルラはさらなる力を望んで。王太子の婚約者でもある転生者クララは、未来を恐れるあまり先の可能性を知る力を得た。
アリア個人は特に望みも無かったようですけど、彼女がかつて精霊が目を掛けたメルローズの血を引いていることから声を掛けられて、予期せぬ贈り物をもらう羽目になったりして。……加護を与える相手は気まぐれらしいですけど、今回は女子のみという結果になって王太子周りはいろいろと思う所ありそうというか、この後が大変そうではあります。
エレーナが健康になったことと、アリアが逃げない覚悟を示してくれたことで覚悟を決めたのもありますし、まだまだ平穏は遠そうです。
……カルラとか言う爆弾少女が居る以上、安定って儚いんですけどね、そもそも。アリアとカルラの決着がつく時はまた荒れそうですねぇ……。