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「感情を知らない相手に共感はできないし、共感が無ければ信頼もない。感情に振り回されるのもダメだけど、他人の感情を無視するようなことも、してはいけないんだ」

 

封印図書館を見つけ、ルキウサリア王国とのパイプが出来たことで、第一皇子は入学せず留学する体裁で話を進めているアーシャ。

その実、偽装工作をしてしれっと入学もしようとしてるわけですが。

皇子として留学するという形式は整える必要があり……であれば、護衛も必要。しかし、近衛はこれまでの実績からして信頼できたものではない。

しかし、イクトはあくまで宮殿での帯剣を許された「宮中警護」という役職持ちであり、他国に帯同していたのは特例でしかなくて。

 

そのあたりの交渉を、宮中警護長官であるストラテーグ侯爵とするところから始まっていたのがちょっと面白かった。探り合いの会話をしつつ、なんだかんだ直截にやり取りも出来るの、ストラテーグ侯爵的には面倒事と胃痛のネタが増えるので勘弁してほしい部分はあるでしょうが。

……ルキウサリアで交渉に割り込んできたりもしてるし、ある程度は自業自得でしょ。

ストラテーグ侯爵がアーシャの偽らぬ性格知ってて、なんだかんだ長い付き合いになってるのもあって、他の家族や付き合いの浅い人々相手に見せるのとは違う顔見せてくれてる感じがして好きなんですよね。

 

高名な学者であるテスラが帝都にやってきたけれど、対外的には皇帝の、実質的にはアーシャという目的とした人物の招待を受ける前に話は聞けないと断る一手で。屋敷に滞在させているストラテーグ侯爵が苦悩していたのは……機材トラブルもあって異臭騒ぎにも発展したとか聞くと、流石にちょっといたわるべきかな……みたいな気も沸きましたが。

立場が弱かったこともあってこれまで開いていなかった皇帝主導のサロン。

社交の場としての役割を果たすそこに、テスラを招けたのは大きい。他の貴族に真似できないように、平民を多く招いたというのも独自色出てて良かったのでは。

ディンク酒製造の件でモリーたちが招待状貰って悲鳴上げてたりしたのは、大変そうだと思いつつ笑っちゃいましたが。

皇帝に優先権を献上した時の周囲の反応をみるに、私もアーシャと同じくディンク酒の価値を見誤っていた感はあるなぁ……。怖い怖い。

 

加筆パートでテスラの働きかけもあって、アーシャが弟たちを連れて視察に行くという体裁で薬師ギルドの視察を整えていたのも良かったですね。

弟たちがアーシャの教えを素直に受け取って、聡明に育っているのも良かったですし。その機会にもいろいろと教えているアーシャは良い兄してると思います。

サロンの時とかも、妹のライアによくなつかれてましたし。時間つぶしに色々と手を尽くしてたのも微笑ましかったですね。

 

あらためてルキウサリアに訪問して、封印図書館に赴いた際にテスタとナイラが結託して、アーシャの手札を暴きに来たのは、なにやってるんだかとは思いましたが。

その後、しっかり脅しかけたのは、舐めたことしてきた相手に必要な薬だったことでしょう。アーシャの想定以上に効いてましたが、効きすぎて困ることはない案件だと思うのでヨシ!

アーシャが馬の要らない馬車の構想や、天の道について話す部分が、ディオラやテリーとの会話に変わっていたのも書籍版の味わいが出てて良かった。……ディオラの傍にいる使用人たちにもアーシャとテリーの聡明さが伝わっていったの、良い方向に作用するといいんですが。ディオラがアーシャに許可とった上で書記官読んで記録残してましたし、ズブズブの関係になっていきそう。……封印図書館の存在を明かした時点で割と今更か。その上で、立場があるから線を引こうとしてるだけで……。