「さあ贖罪を始めましょう」
39~43話を収録。
ティナーシャの魔力を使い、大陸全土に影響する魔法を行使しようとしたラナク。
彼がかつて使った禁呪で生まれた魔法湖……その際に用いた定義名もこの時明らかになるわけですが。
始まりに憐憫、2番目に嫉妬。3番目に否定、4番目に憧憬、5番目が憎悪。
暗黒時代に出来たトゥルダールの王族は、力によってえらばれた。王族として認められる力があったら、親元から連れてきて教育を受ける形になったわけですが。
ラナクはだから、はじめはそうやって連れてこられた年下の少女に憐憫を抱き……自分以上の才覚を示す少女に嫉妬し、否定したくなり、力を求めるようになり……最後には憎悪に満ちてあんな行いに至った、と解釈することが出来るわけです。
そしてその全てが明らかになったところで、ティナーシャが彼女の目的の為に動き出すわけです。
パシッと手を払いのけるシーン、実に良いですね。
……ラナクが魔法の眠りで400年を過ごし、長い年月を生きたことで精神的に不安定になっていると示した上で、断片的でもその400年をしっかり生きて来たティナーシャの在り方見せてくるの、重い……。
憎悪で動けなかった彼女が、100年で何とかそれを封じ込めて、塔を築いて達成者との交流をすることで、少しずつ人を好きになれたというの良いですよねぇ。
18Pのこれまでの達成者が階段の先に進んで行く中で、ティナーシャは階段に座って動かず……そもそも、ティナーシャの座っている隣の段から断絶を示すように欠けている、というのが魔女ティナーシャのこれまでの生を示してて、寂しさもありつつ良い画だなぁとも思います。
全てが終わった後、彼女が階段の先に進む描写もされているのまで合わせて好き。
ティナーシャの目的は、魔法湖に囚われたかつての民の魂の解放。
そのためにラナクの構成を組み替えて動けなくなっていたところを、オスカーが庇う構図は熱かったですね。
軍勢を滅ぼして調子に乗ったのかは知りませんが、オスカーを舐めたクスクルの魔法士長バルダロスがあっさり切り捨てられるのは痛快で好きです。
コミカライズでオスカーがラナクに最後の問いかけを投げた時、ラナクがどんな顔をしているのか描かれたのは味わい深かった。いろんな感情が入り混じってるのが伺える良い顔でしたね……。
そして全てが終わった後の、第42話の扉絵がよかったですねぇ。円柱に幼少期のティナーシャと、成長した彼女が背中合わせで座っている構図。本編のティナーシャが覚悟決めた目をしているのに対し、扉絵のティナーシャは幼少期は楽しそうだし、成長した方は穏やかな顔しているのが、抱えていた荷物を降ろせた安堵を感じてよい。
無事に帰ってこられて、その後オスカーに触れていいかと聞いて抱き着くくらいには愛着があるのに「婚約者という事になってる」と言われて「なんでだよ!」とツッコミ入れるのが実にティナーシャ……。
そして8巻最後のエピソードがルクレツィアの媚薬菓子事件なの、日常戻ってきたエピソードとして良かったですけど、温度差に笑った。
いや、好きな話なんですけどね。ルクレツィアがティナーシャに探してもらった指輪、いろんな感情がこもってるものだったわけですし。