「剣の道は果てしなく、星々が煌く夜空のような物だよ。広い世界を見て、たくさんの人と出会って、そうして多くの星に灼かれ鍛えられて初めて剣は剣になるのだと」
(略)
「昨日グラノス卿という星と出会い、今日またあなたという星に出会えました。……感謝します、クララ・クル・クラン。やっぱり、母の言うことに間違いはありませんでした」
『ウェザーズ・ブレイン』の三枝零一先生の新作!
1巻ですが、サブタイトルに『十七』とかついてるのがちょっとややこしい。
この世界は四つの大国の間で、魔剣を用いた戦争が長年続いていた。しかし、それが1年前に終わり平和に向けて動き出している。
国ごとに所持できる魔剣の数なんかも決められて……大陸中央部にある緩衝地帯「セントラル」でのみ、野良の剣士は魔剣を所有することが出来た。
母に願いを託され最強の魔剣使いを目指す少女リットは、名を馳せるためにセントラルにやってきたわけですが。
廃刀令から1年が経っていることもあって、彼女の望む決闘に載ってくれる人はいないし、紹介状も持たぬ彼女は仕事を見つけることもままならず。
困っていた彼女でしたが……ひょんなことから各国の思惑が入り混じった決闘の代理人として出場することに。
相手方も代理を立てていて、名の知れた魔剣を使う少女クララと戦うことになって。
……さらにそこに、決闘の景品となっていた「はぐれの魔剣」を目当てにソフィアという別の少女が横入りしてきて。
かなり混沌とした状況になっていましたが。
それぞれに訳ありだった少女3人が、お互いの事情を話し合って協力することになるのは良かったですねぇ。
リットもクララも事情を抱えた状態で魔剣使いとなって、魔剣戦争で名を挙げることで目的を達成しようとした所で、戦争が集結してしまって。
ソフィアは、戦争を裏で過激化させていた組織の一員だったものの、あまり事情には詳しくなく……それでも、戦争終結後に残党が残っているのに気づいたのでそれの処理を続けていた。
色々と上手くいかない状況の中でも、リットは母の教えに従って「星」に例えられた剣士の輝きを胸に真っ直ぐ生きてますし、クララも柵を振り切って行動を起こせる強さがある。
そんな2人と出会えたソフィアは幸運でしたねぇ。
神話として忘れ去られつつあった伝承が真実で、封じられた魔神の力の一端が世界に現れたりと、かなり危ない状況になってましたが、乗り越えられたのは何より。
リットが、母の剣技を模して戦況を打開したのは凄く熱かったですねぇ。裏で暗躍していた組織の幹部を取り逃がして、今もなお活動しているって言うのが今回の事件で明らかになって、戦争終結したとはいえまだまだ平穏は遠そうですねぇ……。
というか、長年続いた戦争の裏で暗躍していただけあって根が深いんですよねぇ。「章外」の描写見るに、一つの組織を完全に裏から操る黒幕になってるみたいですし。まだまだ今回レベルの騒動を巻き起こしてきそうで、おっかないですけど。
リット達には是非とも奮起して、乗り越えて行ってもらいたいものです。いやぁ、熱くて楽しかった!