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「そうだよな、わかるよ。しにたくなんてないよな。ごめんよ。わかりきってるよな」

(略)

「僕も、生きたい。死ぬのは怖いんだ。本当に怖かったんだ」

 

両親が幼い頃に蒸発して、唯一の家族だった祖父を亡くしたばかりの高校生、吉井真也。

祖父が経営していた合気道の道場で鍛えるのが趣味だったが、当人曰く才能はなかったとか。

祖父の葬儀を済ませた後、怪しい連中がやってきて両親がのこした借金の為に道場を差し押さえるとか言われて、家からも出て行って施設に世話になれと言われたとかなんとか。

唯一の家族であり心の拠り所であった祖父を亡くしたばかりだった彼は、誰かに相談する気力も沸かず、死んで祖父のところに行こうと思っていた。

蒸発した両親の借金って同居の事実がない親族の遺産なんだし、実際のところ相談して相続放棄の手続きをすれば、家を追い出されるような事にはならなかった気もしますけど。

祖父の葬式関連のアレコレで疲弊したところで、さらに蒸発した親の借金の相続放棄の手続きもしろってのは酷か。そもそも当人に生きる気力がなくなってるから流されてしまってるって話だしな……。

 

……そんなタイミングで異世界に召喚されることになって。

呼ばれた異世界では、ダンジョンなどの変動が生じた際に異世界召喚を行って、転移者に事態の解決を依頼する手法が確立されていて。

召喚された直後の真也も期待されていましたが……スペックが召喚した貴族の望む者ではなかったために迫害されることに。

ただその貴族も派閥の上の貴族に「召喚には成功した」と報告してしまったために、直接殺すことはできず。転移者には専属の従者をあてがう、という決まりも一応守ってますしね。

……まぁとんでもない呪いを抱えて忌避されたファスという女の子でしたけど。ファスは、それでも「生きたい」と願う子で……真也も、死のうとした時は本当に怖かった、と彼女と一緒にどうにか生きようと足掻くことに。

 

貴族の横暴に想う所のあるギースという騎士団長が、限界までしごいてる体裁で彼を鍛えてくれたり、アドバイスをくれたりして。少しずつ力を得られていったのは良かった。

真也が呪いを吸うスキルを獲得したことで、ファスの状況もどうにかなる展望が見えたし。将来有望な使い魔を得る事だって出来た。

頃合いを見て逃げ出そうと画策していたところで、アグーの報告を受けた伯爵が直々に真也の状況を確認しに来て、同時期に召喚された転移者の会合に参加せざるを得ない状況になってしまったり。

 

そうやって外に連れ出された先で、数少ない真也の友人である桜木さんも転移していたことが発覚。彼女が「聖女」という特殊なクラスを得ていて、一度は召喚者に見捨てられた真也よりも他の転移者である「勇者」と仲良くなって欲しい勢力が横槍を入れてきたり。

危機に瀕して転移者に頼らないといけないくらいの状況になってるくせに、転移者を使って政争に明け暮れてたりするからこの世界の貴族は反省しろというかなんというか。

真也の得た『愚道者』。強力な制限もかかっているけれど、彼の生き様を反映してるかのように、なんか成長性は高そうなので少なくともバカな計画に加担した勇者とかには痛い目見て欲しいものですけど、どうなるやら。