「先生。あたし……誰かを本気で好きになるのが、怖い」
カーストトップの生徒、上原メイサ。
彼女は「地味で堅物」という評判の国語教師、筧莉緒にほれ込んでいて。
放課後の金曜日に行われる勉強会。それにわざわざ参加するような生徒はメイサしかおらず……2人の密会を行う時間となっていた。
最も筧はメイサの気持ちに応えるつもりがなく、「堅物」という評判通りしっかりと「勉強会」を行った上で、メイサからの求愛をすげなく断るという不思議な距離感での交流になってはいましたが。
メイサが家庭の事情で進学が難しいかも、となった時は「教師として」と建前を使いつつもかなり彼女に踏み込んだ対応をしたなぁというか。
家に乗り込んで母親との面談をしていたのは、必要だったけど強引で、そこまでやった自分の心が筧もまだ測りかねているような状況で。
メイサが筧にほれ込んだのは高二の時、国語で赤点を取って補習を受けるようになってから。はじめは気乗りしなかったけれど、1対1で行う補習の中で多少は私的な会話をする時間もあって。
「好き」という気持ちを見つけられなかったメイサは、筧に少しずつ惹かれて行った。
一方の筧先生。教師と生徒、という事で自分の気持ちに線を引いていますが……。
実は彼女も、学生時代に恩師であった女性に恋をしたことがあって。けれど、その想いは伝えられず……筧が教師になったこともあってか卒業後も関係は続いていたけれど、恩師は近く結婚して子供ももう宿っている、というような状態で。
メイサからの告白は断った。自分の初恋は遠い昔に終わった。
筧、ある意味では恋を知らないんですよね。胸に抱いたことはあっても、その熱に溺れたことがないというか。真面目だから自分を律して、抑制してしまってる。そういう意味ではグイグイくるメイサとの相性は結構良いと思います。
実際、「振りはしたけど、どうしても目に入る」と筧自身も述べていたわけですし。
筧、線を引いていようとはしていますが。それでもメイサ相手には境界が揺らぐこともあって。メイサが「私の事すきになって」と思うのも分かる、まだ花こそ咲いてないけど恋の芽は出てそうな気配あるものな……。