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「残念ながら、生まれてこのかた後悔などしたことありません」

 

あらゆる術理を極めた最強の魔王ルブルヴィム。

彼を討伐するために神から祝福を受けた勇者ロロと、それに味方する英雄たちと戦うことも多かったようです。

魔王であり武人でもある彼は、戦いの前に敵を回復させて万全の状態にしてから戦う流儀を持っていたものの……魔の性質を持ったルブルヴィムは、神聖術との相性が悪く彼の満足する領域まで極めることが出来ずにいた。

……ルブルヴィムの理想とする回復魔術って「相手の弱さ」みたいな概念的な物すら「治すべきもの」ととらえて回復させるレベルで、それはもう回復魔術って枠に収まるものではなさそうですけどね……。

 

そして何かを極めることに全力なルブルヴィムの高潔さを、敵であるはずの勇者ロロですら認めて……自分の必殺技で傷一つつけられなかったこともあって、敗北を認めることになったわけです。

勇者ロロは人類最高戦力ではあれど、全人類の意思決定担当ではなくて。自分が敗北を認めても、国王たちの協議は必要だろうと現実的な話はじめたり、魔王を友と呼ぶロロ、なんだかんだ好きだな……。

そして勇者に力を与えた聖霊も現れて、魔王に「転生してみませんか」と進めてきて……ルブルヴィムは回復魔術を極めるためならと速攻で頷いたわけです。

回復魔術を極めるのが今一番楽しいことだったからかもしれませんが、「転生とはどうやって為すんだ」と掘り下げなかったのは少し意外か。

 

そして魔王ルブルヴィムは転生し……人間の少女として生まれることになったわけですが。

危機にさらされたのも影響はありそうですが、母の腹の中に宿っているタイミングで既に意識を取り戻して。

母を助けるためにそのまま魔術をつかって脅威を追い払ったり。

赤子があまりにも頼りなさすぎると、ルブルヴィム流の回復魔術を使って急成長して、当人にとっては不本意なことにたわわな胸を獲得するわけです。

こんなのは脂肪の塊なんだから「治療されてしかるべき」とか考えるあたり、魔王様の思考があまりにも魔王様というか。転生先の事、男と女の事とかもう少し常識インストールしてからやるべきだったのでは……? みたいな気持ちになる。

 

いやでも、肉体的に急成長して外見上は問題なくなっていること。ルブルヴィムとしての意識がハッキリしていること。そして両親からの教えをしっかりと吸収できたこと。

それらの要素が噛み合った結果、ルブルちゃんは5歳にして回復魔術を扱う聖女育成のための学園に通うことになったわけです。

学力試験と実地試験では最高評価を得たものの、適正検査で水晶に触れたとき「ジャアク」と連呼されたことで、ルブルは最低クラスのFクラスに放り込まれた上で、学内でも距離を取られることに。

 

まぁ当人は回復魔術を極めるために特訓できれば良いので、そんな気にせず学校生活送ってましたが。調子に乗った先輩を叩きのめし、ジャアクと呼ばれていようと気にしない友人を作り、ルブルの望むレベルには至らないながらも特級の回復魔術によって悩める人を救い、周囲に激震を走らせるわけです。

ルブルが生まれ変わったのは1000年の時が過ぎた未来で、魔王の存在は歴史から隠されていたし、聖剣使いも弱体化したり……魔王ルブルヴィムの行動を見た魔族が仕込みをしていたり、と。世界そのものも激動の瞬間を迎えていましたが……ルブルちゃん強すぎるからだいたい一蹴できるんだよな……。