「私は神を信じていない」
孤児院で育った少女リトル・キャロル。
彼女が十五歳になったころ「君は聖女だ」という神官が迎えに来て。
この世界は「瘴気の壁」に囲まれおり、そこから湧き出る魔獣の被害に多くの人が悩まされていた。さらに「瘴気の壁」そのものもどんどん人類生存圏を蝕んでいて……。
そんな「瘴気」に唯一対抗できるのが、聖女だとか。
そしてキャロルは迷いつつも神官についていき……聖女が力に覚醒するという日食の日を待つことに。
その間に聖女候補として修練に励み、知識の習熟も怠らなかった。
神の言葉を記した原典によれば、地水火風の四聖女とそれらを導く光の聖女の5人が現れるとされていて……キャロルは光の聖女候補であった。
しかし、彼女に発現したのは女神像を崩壊させる「腐食」の力で……多くの人々は、キャロルは聖女ではなかった。偽りの聖女だったのだ、と彼女を追い出すことに。
聖女候補としてお淑やかな振る舞いを身に着けていたけれど、その本質はあくまで孤児時代に培った逞しさに溢れるもので。
人のいる場所から離れようとした結果とは言え、なんかしばらく森に住みついてますしね……強すぎ。
実は彼女が追い出された裏には、彼女をここ良く思っていなかった別の聖女の悪意があったりしたみたいですけど、当人がそこまで気にしてなさそうではある。
キャロルを見出した神官が実は教皇様で、「偽りの聖女」を見つけたことで立場を悪くして、教会の軍部に追い落とされる羽目になってたりするの、影響が大きいなぁ……というか。
「瘴気」という迫った危機を目の前にして内ゲバ出来るなんて、随分とまぁ余裕ぶってますねぇ。
キャロルが像を崩壊させたのは「菌糸」を生み出した結果で……「生命」に通じるほかにない奇跡だった。そのことを知ったターナーが、自らの過ちを認められたのは良かったと思いましたけど。
孤児として苦労をしてきて、追放の憂き目を見たキャロルが「神を信じていない」というのはそりゃそうでしょう、という気持ちがある。そこに物申すなら、彼女が聖女候補として学園に居た頃にやっておくべきだったんじゃないかという気持ちがあるので、真相が明らかになったときのキャロルとターナーの論争は、キャロルも感じていた通り「今更」って感じが強かったですねぇ。
さて、キャロル追放のために手をまわした、キャロルと同室だった水の聖女マリアベル・デミ。家名を持つ通り、貴族の出ではあったみたいです。
貴族として誉を大事に、困った人を助けるために奔走した父を誇りに思っていた。
しかし、現場の人間としてはよかったが、貴族的な根回しには疎く……ごく潰し貴族に、負債ばかり押し付けられる羽目になった。
そんな父を見ていたことで、聖女となり王と対峙した際に王に任命されたはずの父が忘れられていたことで、歪んでしまったという背景が明かされたのでどんどん憎みにくくなっていったキャラでもありますね。
ああいう目を見た子、この瘴気に悩まされた世界では珍しくないんだろうなぁ……と思うと聖女に縋りたくなる人々の気持ちも分かる。
ただ「不良聖女」が誕生してしまって、人々の希望の向く先一つではなくなってますが。それが今後どう影響していくのやら。