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「自分を騙すなよ。苦しくなるだけだ」

 

天涯孤独の少女セシル。彼女は、大鳥ランフォルをいつくしみ、飼育員として働く日々を生きがいとしていた。

しかし、セシルが務めていたラルジュ牧場の経営者が変わり……先代と仲が良かった彼女を疎んだ新経営者から解雇されてしまう。

その働きぶりを認めた別の牧場主から誘いを貰っていたので、彼女はそれを命綱と思い一人で僻地にあるオークランス牧場に赴いたわけです。

 

セシルに声をかけたのは、オークランス牧場の主であるオスカー。

両親と、牧場を継いだ兄を病と事故で立て続けに亡くし、軍を辞めて牧場を継いだ青年。そんなドタバタの中で飼っているランフォルも、牧場関係者もほぼ切り詰めていて……。

遠目にセシルの働きぶりを見て男の子と思ってしまい、誘ったものの、独身の自分とうら若い乙女が同じ屋根の下過ごすのは大変よろしくないと考えられる良識を持っているのは良かった。

「どう見たって女の子だろ俺の目腐ってんのか」とか言いはじめたの、正直ちょっと面白かったです。

 

問題がないとは言わないけれど、オスカーは人員を欲していたし、セシルにも仕事は必要だった。利害の一致で雇用契約を結び……ランフォルを大事に育てるセシルと、オスカーのやり方は上手くかみ合って、少しずつ2人の関係は深まっていくわけです。

オスカー、初対面の時に口が滑った部分は有れど、セシルとは正反対の女がタイプみたいなことを言って。その後になってから、彼女の魅力にやられて……雇用主と雇用者では踏み込むのもなぁ……と足踏みする羽目になっていたりもして。

友人から「貧乏くじばかり引いてるせいで、初手に貧乏くじ引くようになってる」的なことを思われているだけのことはある……。

ちょっと抜けてるところもあるけど、オスカー良い人なんですよね。折々にセシルが必要としてる言葉をちゃんとあげているので、距離が縮まっていくのが納得できる。