「私達は自分の力で生きていける。だから誇りを持ってこの生き方を選んだの」
元男爵令嬢のリディは、宴席の踊り子だったり城の侍女だったりを派遣するマリアナ派遣所で働いていた。
訳ありの子女が多いのもあってか「素性を調べないことと、侍女として雇うなら侍女の仕事だけをさせる事」と言った線引きをちゃんとしている良い職場であるようです。
宴席に人を派遣する場所には、そもそも会のあとに同行して女を売る店もあるみたいですし。
……まぁマリアナ派遣所が良い場所だとしても、派遣先には派遣先の人間関係があるから大変なんですけどね。
リディが今回派遣されたのは、王城の侍女。
給仕係として派遣されたはずが、仕事をしているうちにどんどん雑用も振られて仕事が増えて行ったとかで。ただ、流石は王城で給料は良かったとかなんとか。
あくまで派遣だし、契約更新もどうなるかわからない。なので、リディは給与の範囲内で真面目に働きつつ、適度に手を抜いたり。破棄されることになる酒を少し水筒にちょろまかしたりとか手抜きをしていたようです。
……まぁ他の侍女にはワインのビンごと持って行く不心得ものもいたみたいですし、廃棄ワインを少し貰ってるリディは実際可愛いもんなんですが。
そんなある日、外交官を務め多くの侍女から狙われているレオンハルトに隠していた語学力がバレ……直接彼に雇われる形で、仕事を手伝うことになったわけです。
しかし、レオンハルトは多くの女性に狙われていた人物で……どんな手を使って近づいたのかと怪しまれるし、他の侍女からの嫌がらせを受ける羽目になってしまうんですが。
そうやってトラブルに見舞われるリディを助ける形で、レオンハルトとの仲がより深まっていくんだから、悪いことはできませんねぇ……というか。
ただレオンハルトとの交流によって増えたのは悪縁ばかりでもなくて。リディの才覚を見出してくれる人とも出会えてはいるんですけどね。
ローンバッド王国からやってきた王太子夫妻の子供、ルイスの飼い猫を手懐けたことでルイスにも懐かれたり。ルイスが国元で命を狙われたときの話を聞いて、答えを導き出したりしていますし。
他にもある宝石の秘密を暴いたりして、ルイスの母である王太子妃のクリスティからも評価されたりしてましたし。
有能さが目につくことで別の敵も動きだしたりとかして、美味しい話ばかりでもないですけど。それでも無事に乗り越えられたのは良かった。