「マスター。この船を使って、どんなことをなさりたいので?」
「そうだね。せっかく拾った命だ、この銀河の色々なところを見て回ってみるのも面白いかもしれないね」
とある政治結社の下で人類の指導者として教育を受けるも、冤罪によって宇宙空間に追放される刑罰に処されたカイト。
管理官としてのAIはいるものの、追放される事そのものが刑罰なので、地球に帰還できない以外はデータ送信してもらって娯楽作品を読んだりとかも出来る環境だった。
カイトは思想強い教育を受けつつも、常識と良識を失ってなかったというか。積極的に抜け出そうと試みることこそしてなかったけれど、染まってなくて。
裁判の前後で国の指導者である総帥に資質を見出されていたこともあって、環境が良かったのは色々と便宜を図ってくれたから、という部分もありそうです。
それまで周囲から思想を押し付けられて来たカイトからすれば、模範的に振舞っていれば趣味に没頭するのも構わない、という状況はかなりありがたいもので。
景気は19年ほどあったみたいですけど、3年が経過したある日。これまでAIから番号で管理されていたハズのカイトはその名前を呼ばれることに。
曰く、地上との連絡が途絶。あらゆる国家と連絡が取れず、地球の汚染領域が拡大し……宇宙空間に伸びた軌道エレベータも折れてしまった。
それらの事実をもって、地球が滅亡したと判断したことで、「刑罰期間が消滅した」とAIは判断したみたいです。柔軟だな……。
そしてあくまでAIである刑務官は、人間であるカイトに今後の行動について判断をゆだねることも決めて。
文明が崩壊した可能性が高いとはいえ、資源的な問題も考慮すると地球に帰還するのが最も生存期間が長くなる選択肢だとAIは提言。
カイトはそれには惹かれず……今の文明を生きる人類最後の旅路として、可能な限りの先を目指すことを決めたわけです。そして宇宙追放なんて刑罰が実行される未来でも未踏だった、木星軌道を超えた民間人となった彼は……そこで地球外生命体と接触することになったわけです。
最初に『連邦』と呼ばれる異星人との交流に成功したことで、地球の代表と扱われ十四段階のうち上から三番目の権利を得られることになったカイト。
複数の種族が暮らしている「連邦」の環境に適応するために改造されたり。刑務官ことエモーションも「連邦」の権利を得てアップデートを受けられることになってアンドロイド的な肉体を得ることが出来たりもして。
カイトとの交流の機会が得られたことは「連邦」の人々にとっても福音で、基本的には歓迎されていたの良かったですね。口絵にもいるクラゲみたいな宇宙生命体の方々が、地球にクラゲっていう外見似た生命がいると聞いてちょっと暴走したりしてましたけど。
カイトが連保市民としての権利をえて「連邦」の協力を得られるようになったことで、「連邦」に加入していない宇宙人が地球を好き勝手しようとしていたのに介入できるようになったのは良かったですね。