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「全くお前らは考えが浅い。そんなことだから、お前らはそのざまなんだよ」

 

ギャンブルに目がない主人公の班目隆。

スリルがあると燃える性質で、ヤクザとも繋がりがあるとされる金貸し相手に無謀な勝負を挑み、なんと大勝。負債を与えた金貸しに恨みを勝っているから、殺されてもおかしくない……とは思っていたみたいです。

 

そんな彼は気が付いたら、不思議な空間に隔離されていた。

出口もない土の中、青白く光る球体が存在しており……最初にそこに表示されたのは「ようこそ、ダンジョンマスター様」というメッセージだった。

逃げ場もないしとりあえず出来ることを確認しようと、ダンジョンクリエイト用の機能をいじくりまわして、サポート役の魔物・ケラマを生み出したりもして。

 

ケラマはダンジョンの根幹に関わるような情報についての知識などは与えられていなかったけれど、ダンジョン運営に関する情報だったり、異世界の知識、周辺地理とかの必要な情報については把握していて……。

ダンジョンの維持・拡張に必要なポイントを得る方法として、人間をダンジョン内部に滞在させることや、人を殺すことが必要であること。ダンジョンに挑む冒険者と言う存在や、近くに交易で成り立っている街が存在するといった話。

それらを聞いた斑目は、「ダンジョン」と聞いて想像するような、迷宮の中に罠と魔物が配置されて、最奥でボスが待ち受けているようなタイプのものを作っても即座に攻略されてしまうだろうと判断したわけです。

 

実際、たまたま近くに居た冒険者がダンジョンが生まれる気配を察知して、討伐の為のダンジョン出現待ちをしていたわけですからね。

シンプルなダンジョンを作っていたら、そのまま攻略されていたことでしょう。

班目は異世界知識を使ったり、ダンジョンマスターの権能についての穴を探したりして、カジノとしての機能を持ち、人を長く滞在させることでマナを獲得する方法を考えたわけです。

 

ダンジョン作成にはルールがあって、謎解きを作るのは良いけど「絶対に解けない暗号」なんかはあってはいけない。むしろ「絶対に解法は用意されていないといけない」。「鍵と対になる扉は同じフロアになければならない」とか色々と制限はかかっているみたいですが。

ルールに反するものはそもそも製作が出来ないそうで、上手く抜け道をついてカジノダンジョンを成立させたのはお見事。

 

ダンジョンの機能でアイテムを作成できるんですが、石油素材由来の衣服とか「いま異世界に存在しないオーパーツじみた存在」は高コストだけど、「輸送費がかさんだり、職人の巧みな技で作れはするけど量産は出来ない」類のアイテムは現地価格で買えたり量産可能という抜け道を見つけて、珍しい景品をコスパよく確保していたりと抜け目がない。

 

……ただ、班目は上手くやりすぎたというか。異世界に来てダンジョンマスター生活1年を乗り越えて、ダンジョンマスターの互助会のようなダンジョンソサエティへの参加権を得たわけですが。

同時に八大ダンジョンと呼ばれる、ソサエティのトップから査問会を開くと招集されてしまうことになるわけです。

ソサエティの存在、一年を生き延びれないマスターが居たり、新人を食い物にするマスターもいるから一年生き延びないと教えないそうですが。一年過ぎた瞬間食い物にされるのを回避する手段がないの、なんというかダンジョンルールと同じ穴を感じると言いますか。

一年生き延びた時点で一人前だから後は自力で何とかしろってことなんでしょうけど、その方針とソサエティへの参加権ってバランスとれてないんじゃないかな……。

 

班目はカジノに人を招くために、人を傷つける要素を徹底的に排除して一年間誰も殺していない稀有なダンジョンマスターになったわけですが。

その姿勢を軟弱だと八大ダンジョンのマスターは追及して。……ただ、八大ダンジョンのマスターは八大ダンジョンのマスターで驕っていたというか、停滞していたというか。班目みたいな特殊事例を認められないと彼を破滅させようとして……逆に反撃にあったんだから、永く生きてもあんなものか、と言いますか。

班目の策略は八大ダンジョンの攻略を加速させましたけど、あくまで勢いを増しただけであって、いずれ攻略されていただろうな感はあります。

竜人のマスタードゴスガラは自分のダンジョンに挑んでいた剣士の存在を察知していたけど、その力量を見誤っていたみたいですし。
その「いずれ」を自分が耐えられる期間ギリギリまで引き寄せたのは、班目のツキと策略の賜物でしょうけど。