ico_grade6_3h

「ニアさんは多分、真面目に考えてくれる人だから」

「……」

なぜ、たった今思ったことが分かる?

「答えが分かったら、教えてほしいな」

 

WEBで連載しているシリーズを作者さんが電子書籍化して頒布している同人誌(BOOKWALKER上の分類はラノベ)。なのでイラストも表紙と、カラーのキャラ紹介口絵だけで挿絵はなし。

主人公のニアは、ダンジョンから生まれたフォニアと呼ばれる魔鳥だった。進化したフォニア種の声は神々さえ魅了すると言われる、綺麗な声を持つだけの魔物ではあれど無害な鳥だったわけですが。

 

ある日、小さな村に近付いた時なにか惹かれるものを感じ……そこで「錬金術」という、反発するはずの魔力と神力を融合させ素材を変質させる技術を教えている老婆と孫娘を目撃して。

そこから「錬金術」にほれ込んだニアでしたが……鳥の姿では、繊細な調合を行うことは難しかった。

上位種族のフォルトルナーに進化できるまで鍛えて、耳元に羽残ってしまう不完全な形ながら人に化ける術を習得して。

 

魔物を探知する結界の弱い辺鄙な町に入り込んで、錬金術師として活動を始めるわけです。

進化したことで「神々さえ魅了する」と言われる声の力も強まってしまって。出来るだけ力を抑えるようにはしているけど、漏れ出るものはあって……極力喋らないようにふるまっていた。

研究が楽しくてやっているタイプであるみたいですし、自分が魔物であることも相まって安定して高品質のポーションとかを作れるみたいですけど、目立たないようにランクの低いものを納品するようにしていた。

ただ採取の時とか、他の人が驚く素振りを見せたりしてたので、なんというか隠しきれてない感じはありそう。

 

種族特性か、かなり詳細に含有魔力とかを分析することが出来る彼の作る「低ランク品」は効能良さそうでしたしね……。

巻末書下ろしが「商業ギルド納品部、受付担当者の決意」だったんですけど。町にいるもう一人の錬金術師はランクにムラがあるのに、いつも安定した品質のものを一定量持ってくるニアのことを見て、多分もって凄い事できるんだろうな……って察してましたしね。

 

そんなある日、ニアが暮らしている町の近くに新たなダンジョンが発生して。

王都から人員が派遣されてきて、錬金術師であるニアに絡んでくるバカが出たり、結界更新の話がでてニアの好まない雑務が増えていくわけですが。

頼れる王宮騎士の少女イルミナや、かつて自分が目撃した錬金術を学んでいた孫娘であるところリージェと再会するなど、良い出会いもあって……それによってニアも少しずつ態度を軟化させていってるのが良いんですよね。

 

ただ領主は愚物で、街が壊滅するかもしれない状況下で結界更新に必要な機材を作るためのレシピを公開し、素材も最低限は渡すが買取価格を超えた分は自己負担とか言い出すし。

それをリージェが錬金術協会に報告したら、「事後調査する」という、町を見捨てるのと同義の連絡が来るし。

ニア良い出会いも経験してるけど、同時に人間の愚かさにも巻き込まれまくってるんですよね……。

当人、自分のやりたい事に素直なタイプなのであまり気にしてない……というか。

魔物姿を見られたイルミナが、初遭遇時にちょっとトラブったけどそれ以降はお互いに心配しあう良い関係になれたこともあってか、気に掛けてるんですよね。そうやって気に入ってる相手が無事であるように、出来る事をやっていくのが良いですね。ニア、信頼できる仕事人って感じで結構好きです。

各々が出来ることを尽くしたことでダンジョン出現からの騒動を乗り切れたのは何よりでした。

そしてもう一つの巻末SSで、ニアとイルミナとリージェの3人で無事に乗り切れたことを祝う打ち上げをする「ささやかで贅沢な祝勝会」があって、この時点でのイルミナ達の心境とかも知れたのは良かったですね。