「だとしても――それは嫌ですよ、ロナ。あなたがずっと前からそう決めていたのだとして、それを嫌だと思うのが、私のわがままだとしても」
大樹海で発見された遺跡。
クレア達は墓守の討伐から傷を負った冒険者の治療、潜り込んでいたスパイの捕縛から、遺跡から古文書を発見し持ち帰ったわけですが。
長く大樹海に庵を構えている関係で、ロナがトーランド辺境伯とも知己なの強い。真面目過ぎる辺境伯とは水が合わない部分もあるし、善性の御仁ではあるけど領主である以上領に関することを優先する部分もあるだろうけど、そこを押さえておけば信頼できると言ってたのかなり高評価なのでは。
諜報員を捕らえたことで帝国側にも動きがあって……。
「転移」という有用な固有魔法を持つためにある程度は重宝されて諜報部隊を束ねる地位にありつつも、同じくらい警戒されていた第六皇子グレアムが直々に皇帝が求める『鍵』であるクレアを確保するために、ロシュタッド王国に踏み込んでくることになって。
グレアムたちとぶつかる前に、クレアの素性を知っていた冒険者グライフから話を聞けていたのは、ちょっとありがたかったか。多少覚悟出来ましたしね。
遺跡調査の時に知り合ったわけですけど、薄々クレアの事に気付きつつ……ロナとクレアの関係が良好であることも察していたから、まず師匠であるロナに事情を話してから、クレアに打ち明けるって段階を踏んでいたのは信頼できると思いましたね。
一方帝国は勢力拡大のために、大陸北部の他の国を脅かしているみたいですが。内部でもいろんな思惑からの足の引っ張り合いがあるようで。
グレアムも大切なものを人質に取られているような状態だったし、さらには渡された魔道具に罠が仕込まれていたりとかもしたわけです。
暴発した転移に巻き込まれて、大樹海の中でも危険な領域主のテリトリーに引き込まれてしまったクレア達。その領域主イルハインとはロナも因縁があって……弟子を助けるため、そして因縁を解消するために駆けつけてくれたのは熱かった。
そしてクレアもただ救われるだけじゃなくて、自分の望みの為に足掻ける子に育っていたのは良かったですねぇ。