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「だから、ええと、そのぅ、もう少し『うまくやって』いきましょうよ。お互いに自分の我欲のために動いているんです。本音と建前をごっちゃにするからこんがらがる。僕たちは悪い人同士、もう少しわかりあえるはずなんです」

 

姉のステラと妹のミモザは双子の姉妹。

双子で区別がつかないから髪型を変えてみたら? という提案にステラは「絶対に切りたくない」と泣きわめき、ミモザが頷くことしかできなかった。

お気に入りの服も姉に奪われ……周囲から「お姉ちゃんの真似をしてるの?」と認識されるようになって。快活な姉と、引っ込み思案な妹という構図に「頑張ればお姉ちゃんみたいになれる」と姉も周囲もミモザに言ってくるが……ミモザはそんな願いを持ったことはなかった。

あまりにも噛み合わないから、ミモザは虚しさに囚われてより無気力になっていった。

 

……そんなある日。彼女は、自分がタイトルにある通り「ゲーム世界で、主人公になる姉の引き立て役である」という記憶を取り戻して。

このまま進んだ場合自分に訪れる破滅とかを知ったことで、生まれつき傍にいる守護精霊のチロが悪感情の影響を受けて『狂化』という、暴力的な性質が表に出てしまうことになって。

記憶を取り戻したことで、状況を改善しようと当然するわけですけど。相棒の狂化でその第一歩からつまずくことになってたのは、申し訳ないけどちょっと笑ってしまった。

 

ミモザ、前世の知識を得たけど前世の名前とかそのあたりは朧気で……あくまで、この世界をゲームとしてプレイした時の記憶だけを得たような形で。

ミモザとしての生来の性格である度胸がない小心者ってところは変わってなくて。

自分達の破滅を回避するために、直接相手を排除するような強い手は使えず。相手に不幸が訪れるように祈るとかいう不確実な方法に縋ろうとしていたのは……狂化してなかくてもチロに噛みつきツッコミされてたんじゃなかろうか。

 

誰にも認めてもらえず、学校でもいじめられていたミモザ。彼女がゲーム内で一度だけ認められたのが、『精霊との親和性が高い』という精霊騎士に必要な部分で。

ミモザはそれを伸ばして精霊騎士としての強さを求めようと、必死になるわけです。

その過程でいじめっ子に報復して、学校に通わず課題のみ提出すればよいという状況まで確保したのはお見事。「助けてくれ」と声を上げて学校でいじめ被害を衆目にさらすことで、問題を大きくした結果、現状改善出来たのは良かったですね。

状況を把握できていなかった母ミレイが、ミモザの想像以上に怒り、ミモザに味方してくれたのも良かった。

 

そしてミモザは精霊騎士になるための特訓も秘密裏に初めて……そこで狂化したチロに気付きつつも見逃してくれて、その上色々と助力してくれる共犯者を得ることに。

いじめっこだったアベルの義兄であり、最恐の精霊騎士と言われるレオンハルト。

出会ってからも色々とありましたが弟子として受け入れてもらえたミモザは、王都と村を往復して過ごす生活を始めることに。

ミモザ自身はゲーム知識を活用した上で、未来に姉が得ることになる立場を奪ってやる復讐じみた行為だと悪ぶってますけど。

自分で道を切り開くために努力を続けたのは間違いないので、加害者側な姉といじめっこ君側の評価はどうしたって辛くなる。これで本当に主人公側なのかよ……。