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「人材がなければ育てれば良いのです。実際の仕事をしながら、それに必要な技術を習う。学問と仕事が成り立てばよろしいのですわ。孤児院を、そういう場所にしてしまえば良いのです」

 

ゴルダ王国の第2王子の婚約者であった転生者の少女、サラナ・キンジェ。

キンジェ伯爵家はめぼしい産物が領地になく食うには困らないけれど発展性が薄く貧乏貴族ではあった。ただ家柄は良かったので、婚約者探しが難航していた第2王子の相手として王家の方から持ってこられた話だったみたいですが。

ある日王子が平民の聖女にほれ込んでしまい、王家も聖女の希少な光魔法の血を王家に取り入れる事を優先して、サラナに汚名を着せる形で婚約を破棄。

王子妃としての厳しい教育を受けて色々とフォローもしていたようですが……当人を前に国王夫妻も「これで我慢しなさい」とか言ってくるような駄目っぷりみたいでしたねぇ。

 

これまでの振る舞いにぶちぎれたサラナの父は、キンジェ伯爵家を親戚に譲った上で、隣国であるユルク王国から嫁いできた妻の実家であるドヤール家を頼ることに。

ドヤール家は、魔獣討伐が必要なため脳筋な男たちが多く……可愛く聡明な少女サラナは大歓迎されることに。

転生者で精神年齢が高く、当人の趣味もあってイケオジにとても良く懐いてて英雄と呼ばれている祖父とか骨抜きになってましたからねぇ……。

 

元々王子妃教育のために色々と教育されてきたサラナは、家庭教師が教える事がないというほど聡明で。

これまでがいろいろため込みすぎだったんだから、と父はサラナに自由時間を与えてくれたわけです。サラナは活字好きだったものの屋敷にある本は少なく直ぐに読み切ってしまい……領主館のあるモリーグ村の村長家に入り浸って、何代か前からつけているという村長の日記を見せてもらって無聊を慰めていたわけですが。

過去に小麦栽培のトラブルがなかったかとか探す資料としては有用だけど、日記なので完全私生活も交じっていて玉石混交だから、有用なデータを抜き出してまとめましょうとかやり始めちゃうし。

その結果今年は大雪が降る可能性が高いから備えた方が良いとか言いはじめて周囲を驚かせたりしてました。

 

そうやってサラナにとっては暇つぶしなんですけど、スペック高い前世持ち少女が領主家のバックアップもある状態で自由に『暇つぶし』してるとこんなことになるんだなぁ……と言いますか。

サラナが暇つぶしに何かを始める。それが利益を生み出すことが分かり事業化し、サラナの手から離れる。サラナが暇になってしまうので、次の暇つぶしを探す。そんなサイクルで次々新しいことをはじめてますけど、利益が多いのもありますけど生き生きしてる彼女の顔が曇らないように周囲が支えてくれてるの良かったですねぇ。

 

ドヤール辺境伯家は、英雄と呼ばれる前領主である祖父が健在で周囲ににらみを利かせられるし、地盤が安定しているのもあるし。身内で可愛いサラナを庇護してくれて良い領地でしたけど。

ユルク王国も王都では、文官になれるくらい有能だけど平民だからと下に見られてクビを切られた人員がいたりするし。ここの王弟殿下も、言い寄ってくる女性に辟易してキツく当たるガキだしで、理想郷とまでは行かないんですが。

王都の歪みを見るに、ドヤール家が穏やかな場所で良かったなぁ……と本当に想いましたね。いや、頻繁に魔獣討伐必要な危険な領地っぽいですけど、その分戦力あるし……サラナが暇つぶしと称して生活面の底上げも測ってるので、かなり住みよい場所でしょあそこ。

 

サラナの両親、娘を守るために爵位も国も捨てて他国(母親のカーナの故郷ではありますが)に行くことを決めた時に「娘の幸せを今度は絶対にあきらめない」と誓ってそのために力を尽くしてくれてるのが良いですねぇ。

王弟殿下、元婚約者殿よりはマシでも「マシだから」と「あんなので妥協してはいけない」と、夫婦だけの会話とは言え王弟相手に散々な言いようだったの笑った。実際、彼の振る舞いは「あんなの」呼ばわりされても無理はない……。