ico_grade6_4

「ああ、確かに……顔を隠し、名を伏せ、隠者の如く暮らせば……戦わずに生きていけるやもしれぬ」

(略)

「だがそれはしょせん野ねずみの生き方よ!

 権力者の手から逃れようと息をひそめ、顔色を窺う人生にどれほどの価値がある!

 おれは侵略者を駆逐し、敵を屠る生き方をしてきた! たかだか一度死んだ程度のことで、いまさら生き方を変えられるわけもないのだ!」

 

国土拡張政策を続けるサンダミオン帝国との争いが続くルフェンビア王国。

その国の王子ギスカーと婚約していたのが、主人公のローズメイです。

彼女は、帝国との戦いの中で父と兄が命を落としたことや、様々な状況を鑑みて王国が詰みかけていることに幼少期に気が付いて。

婚約者であるギスカーを思っていた彼女は、心優しい彼は戦地では生きられないだろうと、武門ダークサント家直系の唯一の生き残りとして、自ら戦いに赴いたわけです。

 

強力神に願掛けをし、生来の美貌を失い「醜女将軍」なんて蔑称で呼ばれ、愛した王子から嫌われようとも。彼女は戦い続け、王国最強の戦士にまでなった。

そんな彼女を、ギスカー王子が突如として最前線から呼び戻してきたのですわ何事かと思ったら、宮廷で衆目がある状況で婚約破棄をするためだったっていうんだから、暗君すぎるなぁ……。

いやまぁ、ギスカーを上手く躍らせた帝国の工作員が一枚も二枚も上手だったということでしょう。策に嵌り絶望的な状況に陥ろうとも、ローズメイは最後まであきらめず……帝国の策略にのって反乱を起こした首謀者を打ち倒すまではやったんだから、お見事。傑物というほかない。

 

そりゃ、強力神も目をかけるというものでしょう。

たった十人の騎士を連れて八千の敵に向かい、斬首作戦成功させるとかとんでもないですからね……。

自らの命が燃え尽きる最期の最期まで、強力神に願った思いを抱えて走り切ったローズメイ。強力神はそんな彼女のために奇跡を起こし……強力の加護の代わりに、肉体美の加護を与え、新たな人生を送れるように計らってくれたわけです。

将軍ローズメイが死んだと思われてから、約一年ほどたった王国とは別方向の国々の下に送ってくれるという形で。

 

そして新天地でローズメイは、誰もが目を奪われる美貌ながら、迫る脅威を力で打ち破る豪快さで多くの人を引き付けることになるわけです。

貴族の横暴さに巻き込まれ生贄にされかけていたアルビノの少女シディアを助け。その苛烈な生き様でシディアを攫いに来たゴロツキを改心させ。貴族の血を引くがサイコパスじみた思想から神職に押し込められた神官を成敗した。

そこから神官の実家の罪を糾弾しつつ、この国でも暗躍していた帝国の野望を予期せず打ち破ることにもなったわけです。

……ただ結果的に上手く生きすぎて、敵の仕込みを悉く叩き潰した結果、配置されていた屍術師に後先考えずその地に地獄を生み出せという許可が出されてしまうわけですから、世知辛いものがありますねぇ。

 

改心したゴロツキ達の数名、別の策略に巻き込まれ命を落とすことになりましたが、最後まで「夢を見せてもらった」と足掻いて、情報を吐かずに逝ったところとか。

終章で描かれた、婚約破棄した後の騒動の中で少しだけマシになったギスカーですとか。誤った選択をして生きて来た人が改心しても、その先の道は険しいし……後の世に残るものはほとんどない、というのが厳しくも誠実で、わりと好きな描かれ方してました。