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「……正しいか間違いかなどは蓋を開けてみなければ分からない。
何を理想として行動したか、ではなくどのような結果を残したかで是非を問われる。だが指導者に命を懸けるより他無い兵たちのことを思えば、それも間違いではない」
長男の罪を暴くこともせず、帝国と通じ自領を活かす選択をしたアンダルム男爵。
ローズメイ達は、アンダルム男爵に嫁ぎ長男によって殺された奥方の生家である隣の領地、ケラー子爵領に赴き、情報を提供した上でアンダルム男爵を討つために動き始めたわけです。
しかし、アンダルム男爵領で動いていた屍術師が地獄を顕現させようと大暴れしているし……屍術師を派遣していた帝国の王子は「アンダルム男爵領には金山を秘匿した上で帝国に通じていた」と他の領地にも情報を流してるし。
大陸中央部に存在する「ガレリア諸王国連邦」は、小国が力を合わせていると言えば聞こえはいいけれど、その実かつて栄えた大国が3つに分裂した後、再統一も叶わなかった動乱の地でもあって。そんなところに、「邪教徒の撲滅」という大義名分と「金山」という餌を投げ込んだらそりゃ勝手に争うわな……というか。
元はルフェンビア王国公爵家の姫とは言え、一度死んだも同然であるローズメイは今は流浪の平民(こんな平民がいてたまるか)なわけですけど。
そんな彼女に実子と同じだけの兵を与えて、戦線に協力してほしいと言ってくるケラー子爵は出来た領主であったみたいですが。その息子ファリクは、凡庸で。
アンダルム男爵家の四男セルディオが、盲目ながら武にも知にも秀でているのを知ってることも相まって、同じことが出来ない自分、父に目を駆けてもらえない自分と言うものに鬱屈としたものを抱え込んでいて。
先述の通り、他の領地も帝国の策謀で兵を動かしている中で、ケラー子爵軍ですら足並みを揃えられていないのは痛すぎるなぁ。
セルディオを敵視するあまり助言を聞き逃して危うくなり、セルディオが武人として相手の名のある戦士を引き付けたことで逃げる時間を稼げたのに、最後にはその背中を射抜いたんだからファリクくんさぁ……。
シディアも「卑劣で恥ずべき行いに思えます」と評してましたし。ただ、将帥であったローズメイは、窮地に自分たちが駆けつけて勝ち戦になったのでその卑劣さを糾弾できるのだ、と言うんですよね。
それまでの情勢が負け戦だったのは間違いなく、少数を犠牲にして多数を活かす選択をしたのであれば高く評価される可能性もあったというあたり、視野が広い。
……まぁ、聞くべき助言を無視していたという後出しの情報が出てきて、さすがのローズメイからも「弁護する余地がなくなった……」と言われてしまうんですけども。
セルディオ、かなり良いキャラだったのでここで倒れてしまうのは意外だなぁ、と思っていましたが。
屍術師が暴れまわっていたので、死者の魂が留まりやすい状況になっていたこと。セルディオが最後に、その魂が地上に留まるくらいの激情を抱いたこと。
強力神の覚えも目出度いローズメイが、救う手法がないか頭を巡らせ答えを見出したこと。いろんな状況が重なった結果、セルディオは黄泉がえりの機会を得たわけですが。
……一方で、この騒動の中でファリクは命を落とし……良い領主であったケラー子爵が、それでもかわいい息子だった、と苦悩することになるのは重い。
直接会ったら言うべきではない恨み言を行ってしまうから、と対面することを避け手紙で兵を助けてくれたことへの謝辞と息子の行いへの謝罪をしているあたり、最良の判断をしようとはしたんですよね。
ただそんな彼に悪魔が囁いて、後に厄介なことになるだろう火種が生まれてしまったんですが……。
他にも、シディアの故郷である村が、金鉱山を巡る戦乱に飲まれ滅びてしまったりだとか。
ローズメイの武勇は比類なきもので、彼女個人の武勇で一つの戦場くらいだったら状況をひっくり返すことは出来るでしょう。
ただそれでも彼女の身体は一つしかなくて……こうやって取りこぼしてしまうものも出てくるんですよね。
そんな中で、ローズメイの身体に宿る強い神の気配を感じ取った神殿騎士メリダが、ローズメイにとある誘いを持ち掛けてくるわけですが。また波乱が起きそうですねぇ。