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「裏切り者め……」

「そうですよ」

僕は初めからお前に忠誠を誓ったつもりはない。

 

人類側、勇者召還を行ったゼスキア王国。

魔族側で五大諸侯と呼ばれる有力者が募った軍が勇者に敗走させられて、名の知れた将軍も討たれたりしている様ですが。

召還された勇者であるところのクラスメイト君達は、いなくなった松坂姉妹の事は多少心配しているけれど……司のことにはさっぱり触れてないのが、なんとも。

 

一方の司は、領主であるセラフィーナを追いやって実質的な支配者になったラドリムにすり寄って。

人間である彼が魔族の領主に近付くことを良く思わない人は、当然いたみたいですけど。

危険なワイバーンを討伐してみたり、つけられた部下相手に一対一で戦って圧勝してみせたりと実力を示したことで、受け入れてくれる人も増えて行ったようですね。

……一方で、牢番にわいろを握らせてセラフィーナに接触して、ルーンを用いた【契約】を迫ったりしてますが。隠し立てはせず、受け入れたらラドリムを殺してセラフィーナを領主の席に戻すとハッキリ言うのは覚悟決まってますねぇ。

 

死霊魔術使いの妹、志穂乃の方はかなり司を受け入れていて。地下の探索にも付き合っているし、姉に隠れてアピールしてくる状態で。

美穂乃は相変わらず司に対してツンツンしてましたが……今回、妹も結局は司の毒牙にかかっていたことを突きつけられることになったりもして。

薄々察してはいたでしょうけどね。そうして双子と一緒に楽しんだりとかして、堕落してもおかしくない日々を過ごしつつ……足場を確かなものにしようと動いているのは一貫してますね。

 

自分が疑われないように環境を整えるため、ラドリムを殺すために地下のアンデッドを使ったり。目的のために手段を選ばないところ、司らしいと言えばらしいかな。

叔父に見捨てられ牢に入れられたこと。その叔父が死んだこと。それを成したのが良い人だと思っていたアキミツだったこと。……その結末になると知った上で、彼との【契約】を受け入れたこと。

そういった経験をしたからか、甘さが見えたセラフィーナが領主に返り咲いた時、厳しい態度も見せてしっかりと家内をまとめられるようになったのは良かったですね。

とは言えラドリムよりも与しやすく、【契約】を結び肉体関係を結んだ相手がトップに居るのは司にとってありがたいことで、環境が整って多少落ち着いて過ごせると良いなぁ……って感じではありましたけど。次巻予告が不吉すぎるんだよなぁ……。