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「世界中の魔法に携わる者なら誰もが夢に見る賢者だが……君にとってはそこまでの価値はなさそうだな?」

「はい。無駄にするのもなんなので検証はしてますが、わたしがなりたかったのは魔術師でした」

 

15歳になる時に正式職業判定の儀というものを受けることで、恩恵を授かる世界。

例えば魔法職業関連で言えば、一般職が魔術職で上級職が魔導師という風にランクもあるみたいです。

どういった形でその職業を与えられているのかは、神々の判断によるもので詳しい条件はほとんど分かっていないとか。

とは言え、正式な職業に就かなきゃ魔法が使えないのかと言うとそういう訳でもなくて。

魔術師・魔導師の例で言うと、職業を授かる前より魔法が使いやすくなるみたいですね。

 

主人公のエリシアは、ウェルシュ魔導王国にあるディール男爵家の令嬢。

幼少期から魔法にのめり込んで、11歳と言う若さで王宮勤めを認められた天才で……魔導王国が抱え込んでいる禁書庫への単独入館を許されていた。

禁書庫、ある時は普通に書庫だけどある時は雷鳴轟く砂漠になるとかいう、入る度に環境が異なる危険な場所で……そんな状況を生み出したのが、禁書庫に治められた数多の魔導書の力だっていうんだからとんでもない。

 

エリシアは正式な職業を得る前から働いていて、魔法狂いでもあったので禁書庫にこもるのを楽しんでいて。

魔法系の職業であれば変わらず禁書庫の司書として働けることになっていたので、上級職とか欲張らないから一般職の魔術師でいいなー、と適当に流すつもりだった。

 

……しかし、彼女が授かった職業は「賢者」。歴史上でもこれまで4度しか生まれたことが無い、魔法系職業の頂点ともいうべき職業であり……魔導王国の名を冠しながらも、一度も自国から生まれたことが無かったウェルシュ国の悲願とも呼べる存在だった。

まぁ、エリシア的には賢者と言う名誉に集ってくる面倒事が多くて、「正直いらないなぁ」って扱いになってましたが……。

面倒事が寄ってくるのはアレでも、苦手属性がなくなって出力が10倍にも届きそうという、職業の恩恵に関してはよろこんでいたのでどこまでも魔術バカというか、政治家より研究者よりなんでしょうねぇ、実践派のって頭につきますけど。

 

自国から賢者を出せなくても他国からの笑いものだし、いざ出たら賢者に見向きもされないっていうのも笑いの種でしょうから、エリシアに多少仕事をしてほしいという王子の思考も、正直分かりますが……あんま彼女に向いてないよ……。

ただ王子もちゃんと相手を分析して、「魔導書封印されてるっていう遺跡に行ってみない?」みたいな話の持っていきかたしてたのは上手かったですね。

とは言え、何度もやられてもたまらないので、エリシアの所属する宮廷魔導省の長官がちゃんと根回ししてくれたのはありがたい。

 

そして賢者の職業を得たエリシア、相変わらず禁書庫に潜り……そこで封印された少女と出会ったり。かつて栄えた魔導文明の時代においても使用例がほとんどない、三大極致と呼ばれる魔法に挑戦してみたり。

魔法関係に向き合う時、すっごく生き生きして楽しそうに活動しているのが良かったですねぇ。彼女のもたらす情報はいちいちがとんでもなくて周囲は今後も振り回されていきそうですが。頑張ってほしいものです。