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「折れないでいてくれて、がんばってくれて、ありがとな」
「……何、それ」
「だってそのおかげで、オレは森でクナに助けてもらえたんだ。クナが調合した中級ポーションが、オレを救ってくれたんだよ。だから――ありがとう、クナ」
クナが追放されたことで誤魔化すのにも限界が来ていたドルフ。
そんな彼が素直に反省するはずもなく……薬草を大量にぶち込んで煮詰めたものを新ポーションと銘打って売り出すとかやってる当たり、懲りないなぁ。
知識も半端だから違う草が混じって、中毒症状まで発生してましたしね……。その欺瞞がバレて逃亡のために死の森に踏み込み……「クナを捕まえれば薬屋として再起できる」という歪んだ欲と、自身も中毒症状に襲われてハイになっていた精神状況だったとはいえ、死の森を渡ってウェスの町近くまでたどり着いていた行動力だけは凄い。
領主一家相手にも同じ欺瞞を続けようとしたのも神経太いなぁと思いましたけど。……その欺瞞が明らかになって、クナの為に怒ってくれる友人がいるのが救いか。
クナ、ウェスに来てから食事の美味しさにも目覚めて、目をキラキラさせながら串焼き食べてる挿絵とか実に可愛かったですねぇ。
そんな感じで、クナには良い思いだけしてほしかったものですけど、中々難しい。
兄ドルフの愚かな行動に苦しめられてきたし、アコ村は自分を追放した良い思い出の無い場所ではあるけれど。
魔法薬師としての誇りを持つクナは、そこに病人がいるのであれば必要な薬を作ると決めていて。
……ただ、それでも「効能には問題ないけれど、不味い」ポーションを作ってみたり。ドルフとクナの薬を区別するために使っていた「黄色い蓋のポーション」でアコ村に持って行ったり、クナも領主一家もちゃんと手は差し伸べるけど、報復もしてたのが良かった。
元々ウェスで薬屋をやっている「恵みの葉」の店主とはクナはどうにも相性が悪く……クナの納品したポーションに文句をつけてくる一幕もありましたが、実力で黙らせていたのはちょっと痛快でした。
まぁでも「恵みの葉」の店主も一度は詐欺呼ばわりしたけれど、実力を認めてからは至らない部分を認めてたのは良かった。このあたりがいつまでも同じこと続けようとしたドルフとは違う点で、最後の丸くなった店主は結構好きですよ。