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「海以君に。貴方に出会ってから、おかしいんです。気が付けばこの仮面が勝手に剝がれている。顔が綻んでしまう」
(略)
「だから、距離を取ろうとしてしまいました。……貴方を信じると言っておきながら。申し訳ありません」
他校に通っているけれど、その美貌から存在が知られている少女・東雲凪。
誰に告白されようとバッサリ切り捨てるし、常に表情を変えず距離を詰めようとすると無視されるため『氷姫』というあだ名が付けられているほど。
主人公の男子高校生、海以蒼太は彼女と同じ電車で通学をしていた。その美貌で目を引いて、存在だけは察知していたけれど、別にお近づきになりたいわけではないし。テレビで見るアイドルとかみたいに生きる世界が違う存在として、敢えて声を掛けようとは思っていなかった。
しかし……ある日、彼女が痴漢されているのを目撃してしまって、声をあげることにして。
翌日、電車で出会った凪の方からお礼を言うために近付いてきたことで、交流が始まることに。
痴漢にあったことで少し男性も、電車に乗るのも怖くなってしまったという彼女は……頼れる同性の友人も他に信頼できる人もいないから、と蒼太に電車で傍にいて欲しいと頼んできて。
蒼太も一度は「俺だって怖がっている『男』の括りなんだから」と危うさを指摘はしてましたが。凪が「蒼太を信じる、という賭けをする」と覚悟決めていたことで受け入れることに。
その日から蒼太にとって彼女は『氷姫』ではなく、東雲凪という少女に変わったわけです。
凪の恐怖心克服のため、蒼太と会話をするようになって。氷姫の氷は少しずつ溶けていき……学校でも、女友達が出来たりすることになるわけです。
同じ学校の女子と言うこともあって羽山さんとは結構親しくなってましたけど……それでも、一番最初の友達は蒼太が良いと「友達」呼びしなかった凪の意固地さというか変な真面目さ、なんかちょっと笑っちゃった。
羽山さん、凪の相談に乗って「めっちゃ恋してるじゃん」とか指摘してくるし、蒼太の友人からの牽制が入ってきた時とか、喧嘩売ってきたなら買ってやろうとか背中押してくるし、結構良いサポートしてくれてましたね。
凪は割と早い段階で恋心を自覚してたし、蒼太も柔らかくなっていく彼女の態度にどんどんほだされて行ったわけですけど。
凪、幼少期に養父に聞いた「人に弱みを見せるな」という教えを続けてきた結果『氷姫』になってしまった経緯があって……。変に真面目だから、変な噛み合い方すると、変な方向に転がってしまうんですよねぇ……。
心はハッキリ定まっているのに距離を取ろうとする凪と、友人に背中を押されてからでしたが、距離を詰めるために動ける蒼太くんが良かったですね。