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「いいって……知りたくないの? 、常識ではありえないことでしょ、何もかも」
「……常識なんて、ただの幻です。なんだって、起きるときは起きるんです」
「へ、へぇー……若いのに、なかなか達観しちゃってるんだねぇ」

近未来の地球。
いくつかの都市に、地球外祐樹生命体が落下した。
「サードアイ」と呼ばれるそれらは、接触した人類に、科学では解明できない特殊な力を与えた。
主人公もそれを手に入れた一人だが、得た能力は孤独。
自分一人だけを守る絶対防御の隔壁。

過去の経験から、大切なものを持たないように、誰の記憶にも残らないようにひっそりと過ごしていた主人公。
けれど、同じ学校の少女と接触し、少しずつ日常が変化していく。
まぁ、異能モノのお約束。力を手に入れたら、それを守るために使うものと、自分の欲求を満たすために使うものとに分かれるわけで。
後者にしたって、なんからの干渉を受けている結果だと思われているようですし。
絶対悪がいないっていうのは、お約束ではあるか。

襲撃を受け、異能を所持することとなった人々の現実を押し付けられていくことに。
自分の大切なものが襲われたりすれば、行動を起こしてしまうあたり、自分の記憶に残らないようにっていう行動指針とずれていってしまうんですがね。
それでも切り捨てられないのが人間だし、迷うのが若さってところでしょうか。

ヒロインになるのかは知りませんが、能力者の組織に属しているらしいユミコは今回あまりいいとこなし、かなぁ。
勘違いで主人公攻撃しようとするし。「力ある者には義務が」と主義主張押し売りするし。
その上で肝心なタイミングで間に合わなくて後手に回っているし。

一番の問題は、今回印象に残ったのが主人公でもヒロインでもなく敵だってところじゃないでしょうか。
過去からどうしたってテンションが低い主人公と、いいところなしのヒロインじゃそれも仕方ないかもしれませんが。
同作者の他作品と比べるとちょっとパンチが弱い。

絶対ナル孤独者 (1) ―咀嚼者 The Biter― (電撃文庫)
川原礫
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
2014-06-10