「ほんに、愚かじゃのおう人の子よ」
『あ? 何言ってんだ。今更謝ろうたって』
「そうじゃのう。悔いても遅い。気付くのはいつも、その愚かさの報いを受けてからじゃ」
とある山奥にかつてあった集落のなかに作られた稲荷神社。
人が立ち寄らなくなって久しい場所で主人公のイナリは暮らしていた。狐の耳に尻尾を持ち、食事をとらなくても生きていける。人ならざる超常の存在であるわけですけど。
実体を持ったのこそここ最近ではあるけれど、長く人の営みを見守ってきていた彼女は、人の世が気になりこそすれど、自らの住まいでもある稲荷神社でのんびりすごしていた。
そんなある日、彼女の住まう集落にダンジョンが出現。
出現直後に居合わせたことで彼女はそのままダンジョンの核を破壊し……ダンジョンを生み出した存在によって「イナリ」と名付けられたり、システムの監視を受けることになったわけです。
ダンジョン破壊の気配を感じ取った、ダンジョンに挑む人々を支援する覚醒者協会の人間がやってきたことで、イナリは人の世に触れあっていくことにもなって。
どうにも二十年ほど前にそうやってダンジョンが生まれ、人々はステータスやスキルと言った恩恵を受けられるようになったとか。
多分イナリが実体を持つようになったのもダンジョン出現によって世界のルールが変わったからなんでしょうねぇ。
イナリからしてもダンジョンを生み出している存在は、自分にステータスとかそういったものを押し付けてきたり、所在や目的を見抜けぬ強大な存在みたいですけど。
システムメッセージを見ると「ダンジョン破壊を想定していない」、「イナリの力を検知していなかった」などなど漏れもあるんですよね。イナリが結界の中に引きこもってたからかもしれませんけど、人から見たらどっちもどっち感。
実際、試しにパーティー組んでみたりもしてましたけど、初心者覚醒者とは隔絶した差があるみたいでしたし。
瞬く間に実績を挙げていく上、自前の狐耳と尻尾を持つイナリはどうしたって注目を集めるわけで……先に活動しているクランから勧誘が来たりするわけですが。中には悪辣なものも居て。イナリが蹴散らしに行ってたのは痛快でした。
善良な人の助けを得たりして人間社会に少しずつ馴染んでいったある時、ダンジョンに挑んだ覚醒者チームが音信不通となり、イナリは捜索依頼を受けたわけですが。
そこにダンジョンやシステムを運用しているのとは恐らく違う勢力の神の使徒が暗躍しているのを目撃し……撃退までしてたのはお見事というか。
イナリがいなかったら使徒の手によってかなり大きな被害出てたでしょうけど……既に結構浸食されてそうなので、今後の課題と言うか心配事項が多い。