気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

カドカワBOOKS

若くして引退した銀河帝国元帥は辺境の星でオーヴァーロードと暮らしたい

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「全艦、戦闘機動! これより我らは正義を執行する!」

 

若くして銀河帝国の皇帝に才能を見出され、元帥として実績を挙げていたゼンジ。

しかし皇帝が崩御し……次代の皇帝は幼く、補佐につくことになった人物が彼を快く思っていなかったために、元帥の座を追われることに。

ゼンジも恩義があるのは先代皇帝だったことや、オーヴァーロード……竜と呼ばれる高次元知性態の研究をしたいという個人的欲求もあって、ことさら抵抗はしなかったようですけど。

 

権力バランス変わった直後っていうのもありますけど、退役したとはいえ今なおゼンジを慕う人は多いみたいですね。

……先代の腹心で実績ある元帥を追いやれる宰相側につく、後ろ暗いところのある人間も相応に居るみたいでしたけど。

元帥時代からも宇宙に多くいる超常存在と不思議な縁があり……トラブルもありつつも生存してきたゼンジは場慣れしていると言いますか。

オーヴァーロードの強大な力を理解しつつ、必要以上に恐れていないのは良いですね。

 

退役してから住まいを移した辺境の地では、竜とエルフが暮らしていて……竜の子供を狙う密猟者が居てその問題解決に尽力したことで成竜ホルンとの縁が出来たり、ゼンジの恩人である先代皇帝と知己のあるエルフの姫リターニアが訪問してきたり。

……元帥時代になんか別のオーヴァーロードから面白そうなもの託されていたりするし、ゼンジ人たらしが過ぎるというかなんといか。善良な性質の人物なのでわかりますけどね。

彼は辺境に来たことで半世捨て人みたいに過ごそうとしていたわけですが……予期せぬ出来事で後見人となった人物の罪が暴かれて、大騒動に発展したのは……う、膿を早く出せてよかったね……とでもいいますか。お疲れ様です……。


宇宙船が遭難したけど、目の前に地球型惑星があったから、今までの人生を捨ててイージーに生きたい

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『いや、生かす。彼女は……この星で貴重な情報源……いや、友達だ!』

『イエス、マスター。ナオミを運ぶ台車を移動させます。その場でお待ちください』

 

主人公のルディは、人工授精によって生まれ与えられた運送業の仕事に従事していた。

脳も肉体も改造されており、500年は生きられる寿命を持つ御年81歳の人物で……巻末の閑話で「運送屋ルディ」として働いている場面で、下請け故の苦悩を味わったりしつつ、出来る限りやり返したりする強かさを見せてくれたりもしてたのは良かったですね。

 

SF世界お約束のワープ的な、長距離移動が出来るジャンプゲートというものがあるみたいですが、それを駆使しても宇宙は広く……だからこそルディに500年とかいう寿命が与えられていたり、移動中コールドスリープできる装置が船に備わっていたりするみたいです。

ある仕事の際にジャンプゲートを移動した際に、テロ事件が起きて爆発が起きたせいか座標がズレ……ルディはこれまで生活していた文明圏から隔絶され、連絡も取れない宇宙に放り出されてしまうことになったわけです。

 

ただタイトルにもある通り、そんな彼は奇跡的に地球型惑星を発見。

ファンタジー世界的な魔法技術を扱う能力を持った人々が住む世界であるが……その魔法のエネルギー源となっているマナはそのまま摂取すれば死に至る毒に等しい。

今住んでいる人々はマナのある環境に適応しているが、ルディはそうではないのでワクチンを作って対処します、とか言って実際分析をサクッと片付けていたのはお見事。

そうやって準備を整えていざ上陸……しようとしたら、SF世界でも全く情報のないドラゴンが現れて襲撃される羽目になったりするハプニングがありつつも、何とか地表に到着。

 

人里離れたエリアだったのは、ルディ達の素性を隠す意味ではありがたくはありましたね。

分け合って隠居していた「奈落」の異名を持つ魔女ナオミとの縁が出来たり。なぜか、地表に墜落したと思しき、1000年以上前のルディと同じ文明由来と思われる宇宙船を見つけたりと、地上についてからも話題が尽きないルディではありましたが。

未知の部分もあるため、時折失敗をしたりもしますけどなんだかんだ軽く乗り切っていってるのでサクサク読めて良かったですね。

後宮の花結師

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「無責任じゃねえよ。お前は、守る大変さと責任の重さを知ってるんだ。安心しろ」

 

神と人が共存していた時代、世界は邪悪な大蛇によって滅びかけた……神は人に魔と対峙するための力を与えた。

男には影から魔祓いの武器を呼ぶ力を。女には、癒しの花を身体から咲かせる力を。それぞれに与えた。

そしてそれから千年の時が流れて……。

 

女性が咲かせる癒花は、すべて神から与えられたものでどれもが平等。神の慈悲であるために、人が無作為に採ることは憚られ、その花を整える資格をもった者を「花結師」と呼ぶそうです。

……癒花は平等というのが理想ではあるんですが、皇帝の住まう国の中心部・女たちの戦場である後宮においては、そうもいかず。

先だって邪悪な試みに染まった先帝が大蛇を復活させたこともあり、癒花の美しさこそが追及されるようになったようです。

 

そんな中で主人公である後宮の女官である草苺は、花も咲くが名前通り苺のような実の方が目立つ癒花を咲かせること。平民であり後ろ盾がないこと。普段から雑草とりと言った雑務を振られていること。

そうした事情が重なって「雑草娘娘」といった蔑称を付けられている少女ではあったんですが。

草苺に後宮の仕事を紹介してくれた人物が、花結師としての知識がありそれらを教わっていたことで、草苺は資格こそないものの花結師のように癒花を整えることができた。

資格がないので剪定こそできなかったけど、後宮の女性の数に対して花結師の数が足りず、皇帝の妃たちが当然優先されるので、下級女官はなかなか見てもらえない状況だとかで、草苺も頼られていた模様。

 

噂を聞きつけて花結師には頼りたくない紫陽花の妃妾すらやってくるほどで……ただ、剪定ができない自分では力になれないと草苺は断ったわけです。

そうしたら紫陽花の妃妾は急変し……襲われ逃げ続けた先で、ひとまず魔祓いの武器を振るう青年・角星に助けてもらうことが出来て。

しかし、紫陽花の妃の容態はわるく……止む無く草苺が花結を行うことになって。

 

そしてその技術は古いながらも正確なものだったことや、草苺の癒花が特別かもしれないという可能性が見出されて。

草苺は上層部にその存在を把握され、現状後宮……というか国が抱えている問題の解決に通じるかもしれないと、期待されることになるわけです。

花結師を束ねる長官・金紗は花結に真摯でしたが、花結師の中には思い違いをしている輩もいたりして、草苺へちょっかい出されることもありましたが。

実力で黙らせていくの良かったですね。草苺の行動を見届けた上で金紗が庇護してくれてましたし。草苺の助力のもと、問題解決に至ったのは何よりでした。

魔術師クノンは見えている7

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「誰が悪いという話ではないですからね。

クノン君の実績が原因ではありますが、クノン君が間違ったことをしたわけではありませんから。

これだけは絶対です。あなたは間違ってません。あなたはあなたのやるべきことをしているだけにすぎません」

 

故郷のヒューグリア王国に残してきたはずの婚約者ミリカ。

なぜか彼女が師匠であるゼオンリーを伴って魔術都市のクノンのところへやってきて。

宮廷魔法士と王女が国元を離れているという特殊な状況。それを作ったのは……まぁ当然2人と縁のあるクノンなわけで。

「魔建具」の可能性に気付いて、出来るなら国で押さえたいと人員を動かしたみたいですが。魔術都市での研究なんて特許出してるに決まってるじゃないですかー。

 

まぁ、そのあたりはゼオンリーだってわかっていたし、上層部も分かっていたでしょうけど、それはそれとして人員を動かさないといけない部分もあったんだろうなぁ……。クノンも感じていたように国としての立場と柵は厄介ですね。

でもその柵のおかけで、予期せずミリカと会うことが出来たのはラッキー。

3日程度の滞在ではありましたが、その中で「鏡眼」のことを知っているゼオンリーに相談も出来ましたし。

 

「鏡眼」で見えるもの「法則」についての考察もちょっとは進んだ……といえるのかどうか。まだまだ謎が多いんですよねぇ。

ゼオンリーに言われてましたけどクノン基礎をいくつかすっ飛ばしてるからそこを抑えるのも必要だし、とは言え現時点でクノンは共同研究でいくつも結果出してる優秀さなのであちこち目移りして寄り道してるので、なかなか一つの研究が深まらない。

まぁ、そうやっていろんな経験をすることで、知識を得てステップアップしていってる部分もあるので、一概に否定も出来ないですけど。

それはそれとして基礎魔術もちゃんと習得していくべきではあるんでしょうねぇ……。

 

ミリカがクノンとの婚約を維持するための策の一つとして、城を出ていることとかも聞くことが出来て。

実力主義の傾向が強いヒューグリアにおいて、第九王女であるミリカがクノンと結婚するためには行動を起こさなくてはならなかった。そして、今後も関係を維持するためにはクノンの協力も必要だ、という話まで出来たのは良かった。

クノン、侍女の教育で表面上ナンパな女好きですけど、ちゃんとミリカ大事にしてるんですよね。協力要請されて、まっさきにあんなに楽しそうにしている魔術学院を辞めるって選択肢が出てきてましたし。

ミリカに今以上に学んでいって欲しいという風に言われて翻意してましたが、あそこでミリカが頷いていたらほんとに辞めてただろうな……。
まだ伸ばす余地はありつつも、成長もしっかりしているクノンの今後に期待。また新しい事学ぼうとしてますしね。

目覚めたら最強装備と宇宙船持ちだったので、一戸建て目指して傭兵として自由に生きたい14

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「まぁあんまりグダグダ行っても仕方が無いからズバッと言うけど、何があったとしても俺はティーナをまもるし、どこかにやったりするつもりはないからな」

「……事情も聞かずにそんなこと言ってええの?」

「ええの。特に他人の命に関することなら悩む必要は一切なし」

 

医療物資を売りさばこうとティーナの古巣のコロニーを訪れたヒロ達。

パンデミック中の惑星に防護スーツで降り立って、調査をして対策を練ることに。ショーコ先生を伴ってこられたのはありがたかったですね。

まぁそもそもショーコ先生を船医として雇用できたのもあって、彼女の伝手でハイテク医療物資を大量に仕入れたからリーメイ星系にまで運搬業やろうとしたわけですけど。

 

ティーナが過去のアレコレを思い出して沈んでしまって……トラブルが予想されるけど、まぁ最悪カネとコネとモテる力の全てで解決しようとしてるの、ヒロも割とパワータイプですよね……それで今まで乗り切ってきてる信頼できる方針ではありますが。

傭兵ギルドの最高位であるプラチナランカーだから、それなりの振る舞いをしなきゃと律した上でのパワーなので、良いと思います。

エルマからは「ヒロが変なところで真面目なだけ」とか言われてましたけど。パワー重視でもあるけど、必要であればちゃんと根回しとかも出来るのは良いことですよね。

 

上層と下層で貧富の差が明確に分かれたリーメイコロニー。

下層も貧しさの中でも、孤児院のような建物があってそこ出身のマフィアとかが後援をしたりする、悪党たちなりのルールみたいなのが出来ていたようで……ティーナもそこの出身だったみたいですけど。

パンデミック騒動で後援組織が壊滅。残された支援物資を狙って、チンピラが襲撃をしかけてきた後に訪問することになって、ティーナの知己がいるからと色々と手を貸すことになったわけです。手を出すなら、後悔しないようにできる事は全部やろうとするヒロの行動指針はわかりやすくて、スルスル読めるのが良いですね。

 

……まぁ、前代官が宙賊とズブズブでトラブルに発展したり、ガレオン級とか言う宙賊の戦艦を引っ張りだしてきたりで、相変わらずイベント引き寄せる悪運は絶好調なんですけど。

その分、孤児院でパンデミックの影響を受けてない少女を見つけて、特効薬を作れるかもしれないってことになったし。現地の代官となった領主の子息とは割と良好な関係を築けているのは良かったですね。

黄金の経験値6 特定災害生物「魔王」

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「マグナメルム、とでも呼んでくれればいいよ。そう呼ばれている」

〈呼ばれてる、って誰に!? ってか、言ったもん勝ちかよ! ずるいぞ!〉

「……大いなる災厄?」

 

災厄の一つである大天使。その配下である天使が襲撃してくるイベント。

……の中で、探索能力に秀でたヨーイチやサスケがアーティファクトを発見したことで、過去の大天使に挑めるようになったり。

第七災厄というNPCと思われているレアが、プレイヤーの情報網を利用して大天使の活動周期を見抜いて、ドンパチして天空城を乗っ取ったり、運営の想定外の状況になった公式イベントだったわけですが。

 

後のアプデでレアが作った天空からのウルルを落とす必殺技が、落下ダメージ適用の変更で使えなくなってたのは仕方ない。……別のところに影響出てたのには笑いましたが……。

ヨーイチ達一般プレイヤーは、レアをNPCと思っているからその行動にそれっぽい理由つけて納得してるのも相変わらず面白い。

 

レア達の庇護を受けるのではなく、自分で国相手にできる事をしたいと奔走しているブランでしたが。

シェイプ各地に使役した行商人を間者として送り込んだけど、商品や仕入れルートに先立つものなんかは不足してる。大店を狙って騒動になると活動に支障がでるから、とスラムとかの裏社会の連中に目星付けて襲撃してるの、行き当たりばったりが過ぎる。

なんだかんだ面白い情報ゲットしたり、上手くやってはいるんですけどね。

NPCボスに扮したRPをしているレア達……今回「マグナメルム」という名称がつけられましたけど……も独自路線一直線なゲーマーですけど。

ブランが対峙した、変身ヒーローじみた変態と『キッチン』スキルを駆使して戦う料理人とか。変わり種のプレイヤー、多いですよね。

バンプもレアの支援を受けつつ、大天使討伐の際に協力した魔物プレイヤーをまとめたクランを率いるような形になったりしてますし、あちこちで動きが激化してますねぇ。

 

……偽りの伝承で支援金ぶんどってる辺境の村とか、NPCの性能が高いからそういうこともあるんだなぁ、というか。

「じゃあ本物の龍をプレゼントだ!」してくレアの悪役RPが実に輝いていました。

悪役RP中のレア達に憧れて、黒RPの道に踏み込んだマーガレット達なんかもいるし。インベントリを駆使して王宮の書庫から本を全部盗むとか、柔軟な発想の勝利。出来るんですね……。

柔軟な発想で言うと扉が破壊できないから、横の壁ぶち抜いて中に入るわとかゲームでやっちゃうのが笑えて好きです。

極東救世主伝説 九州大規模攻勢編

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「生意気なことを言いますが、ここは戦場なんです。戦闘が終わっていない以上、歪んはしないでください。最上さんがどうお考えかは知りませんが、少なくとも俺はこんなところで死にたくありません」

 

第二次世界大戦末期に、悪魔召喚の儀が行われ……成功してしまった世界。

悪魔同士での争いもあって、それに敗れた一部が人間に情報を提供したこともあって、人類は対抗手段を獲得することが出来てはいるみたいですけど。

人間が悪魔によって力を与えられた魔族と呼ばれる存在や、魔物という悪魔の配下とかも跋扈していて、正直人類側の状況は厳しそうに見えますねぇ。

 

魔物を倒すことで得られる魔晶を分析し、人造魔晶を作ったり。魔物の死体を核にしたロボット、魔装機体を生み出したり。いろいろ工夫はしているみたいですねぇ。

……人造魔晶を子供に与える、救世主計画とか言ういくら取り繕っても人体実験じみたこともしてるし、この世界の危うさも明らかなんですが……。

主人公の川上啓太は、第三次救世主計画の成功例であり、「悪魔が出現しなかった世界」の記憶を持つ転生者。

研究者だった両親が亡くなり、三つ下の妹を守りつつ稼ぐ方法を模索する中で、国防軍を志願し……軍学校に通うことに。

 

啓太、転生者ということもあって下駄はいてるから、スペック低いわけではない秀才くんなんですが。……性格的な問題で、想定が甘いというか。見えていない部分が多すぎるというか。

魔族、より多くの人間を家畜としてとらえるために、一部を敢えて優遇して「こっちに来るとこんな良い生活出来るぜ」と生餌にしたりしてるみたいですが。

それに対して世の中上手い話はないもんだ、と思っていたのに軍学校への推薦には飛びついちゃったりするし。

 

彼が庇護しないといけない、と思っている妹ちゃんの方は両親の秘密に気付いていたり、独自に金策手法を確立した上で、兄が頑張っているのわかっているから沈黙を選んでいたり。……妹ちゃんの方がかなりヤバい気配してるんですけど、まぁかなりのブラコンでもあるっぽいので、啓太が頑張っているうちは結果的に抑えられるから良いか……。

 

軍学校、派閥争いみたいものもあり、名家出身者が多い中で後ろ盾のない彼は浮いていたわけですが。

妹ちゃん的には彼の両親は背信を咎められて暗殺されたっぽいですけど。表向きは、暴走した第三師団が出した被害者家族の一人、という扱いになっているみたいで。

初期に変な絡まれ方せずに済んだのは良かった。……まぁ後ろ盾がないことで、実験機体の操縦者に選ばれるわ、それを自在に動かしたせいで実地研修の建前で特務尉官として任じられて戦地に送られるわで、どんどん注目を集めていくことになったわけですけど。

魔装機体、人型と獣型とでわかれている中で上半身が人型で獣の下半身を持つゲテモノ機体を即座に扱って戦果を挙げたらそりゃそうなるわ……って話でしかないんですが。

彼の迂闊さと強さを見ると、これからも勝手にドツボにハマりつつ、彼自身は何となく生き延びて周囲をハラハラさせそう。

サイレント・ウィッチⅨ 沈黙の魔女の隠しごと

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「……あれは、恐ろしい魔女だな」

「恐ろしいだなんて、いやねぇ。沈黙の価値を知っている才女、って言っておあげなさいよぉ~」

 

これまで隠していた「沈黙の魔女」という自分の正体について、学園で出来た友人知人に打ち明けたモニカ。

誰もが混乱する中で、事情を知っていたヒューバードが攻撃を仕掛け、それを無詠唱魔法で無効化することで真実を証明して……。

その秘密に薄々感付いていたシリルが真っ先に膝をついて、魔法伯である彼女への礼を示したの、彼らしくて良いですよね。……正しいけど、これまでと違う彼の態度に泣きだしてしまったモニカが、可哀想だったけど可愛い。

最初に出来た友人であるラナが、そんなモニカの涙を拭いてくれて、隠しごとをされていたことは思うことはあるが、隠した理由だってわかるし……起こっているとしても、今も友人だと宣言してくれたのは良かった。

 

……気付いていなかった人々は、まぁそれはそれは大きな衝撃を受けていましたが。

生徒会長が偽物だった、という事実を伝えた上で「それでも彼を助けたいから協力してほしい」とモニカが提案するの、彼女の成長を感じて良かったですねぇ。

危険な作戦であることも考慮の上で、それぞれに考えはあれど協力してくれたも良き。

かつての友人バーニーのアンバード伯爵領が魔導具作りの職人が多い土地で、秘密裏にとある魔導具を作りたかったモニカが彼を頼ったのも、良かった。

 

モニカは、「生徒会長は本物の王子であり、呪術師によってそう言わされていた」という筋書きで事を治めようとして。

その案に賛同してくれないだろう、結界の魔術師ルイスの足止めは必須だった。

結界を張った直後にモニカが援護するシーンが追加されていたり、茨の魔女や深淵の呪術師のフォローまであって、加筆要素が熱かったですねぇ。

……それだけ工夫してもなお、正面から打破してきた武闘派魔術師なルイスが恐ろしすぎましたけど。

 

内心オドオドしまくっているけど、ブリジットからの指導を受けた上で、強い女の演技を貫き通したのはお見事。

クロックフォード公爵、色々と暗躍して敵対者の排除とかも容赦なくしていた人物ではあれど、外交などで実績を積み上げても居て。だからこそ、王すら無視できない派閥を形成できていたわけです。

父に冤罪を着せた仇でもある人物。しかし彼を追い込みすぎると、モニカの目的である生徒会長の救出に関して邪魔される可能性もある。だから手打ちというか、ほどほどの決着を迎える必要があった。

 

……いやまぁ、父の名誉回復を図るためなら、生徒会長を見捨てる選択をして、公爵の暗躍を暴けば、国力の低下を招くけど出来なくはなかったですけど……。それでも、今生きている人の為に、モニカが選択をしたのが重い。

暗躍を続けるクロックフォード公爵が強大な敵として描かれる中で、国王陛下は病気療養の関係もあって影が薄かったですけど。彼もまたチェスのプレイヤーのように盤面をしっかり見ていたのは、流石の王族というか。矜持を感じて好きです。

アイザック、救われた際に感情を揺さぶられて、自分のやりたい事を模索するようになって。モニカに押しかけ弟子入りまでしているのはこう……思う所なくはないですけど。

モニカがそもそも彼を救う選択をしたしなぁ、とか。実際、モニカの生活能力壊滅的だから助かるは助かるんだよなぁ……という気持ち。

モニカの初恋が実って欲しい派ではありますが、どうなりますかね。特典SSなどをまとめた短編集や、WEBの外伝をもとにした続編なんかも刊行予定とのことで楽しみに続きを待ちたいですね。WEB外伝、そもそも結構な量あるのに、なんか10巻は完全書下ろしらしいので、まだまだサイレント・ウィッチを楽しめそうです。

異世界刀匠の魔剣製作ぐらし2

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「君には敵も居れば味方もいる。それだけは忘れないで欲しいね」

 

鬼哭刀を携えて武具自慢の集まりに参加した伯爵、マクシミリアン。

そこでベオウルフ・エルデンバーガー侯爵から、とある話を聞かされることに。南の国境で十年ほど小競り合いが続いていた異教徒の国と和平交渉が進んでいること。その際に贈り物をしあう文化があるとかで、交渉材料の一つとして鬼哭刀を使うことになるかもしれない、ということ。

 

ちゃんとマクシミリアン相手の見返りも用意しているあたり、侯爵もしっかり政治やってるなって感じでしたが。付与術については詳しくなく、蛮族と侮っている相手にしてやられて、難易度の高い「光属性の付与を五文字で」という無理難題に肯いてしまうことに。

ゲルハルトが叫んでいたのもむべなるかな……。

刀鍛冶ルッツと、装飾担当のパトリックが最高の物を拵えてなお、ゲルハルトは成功するイメージを持てなかった。

そんな時彼の弟子であるジョセフが「付与に耐えうる宝石に心当たりがある」と言い出して……相手が交渉の席に持ってくる「覇王の瞳」と謳われるダイヤを付与に使って、相手に贈ろうとか言うトンデモ提案をすることになっていたの、ちょっと笑っちゃった。

まず伯爵に説明し、連れ立って侯爵の説得にいき、三人で国王を説得しに行って誰もが怪訝そうで心配してくるのも分かる。

 

会談の現場で見事付与を成功させたのはお見事でしたが……あまりに見事過ぎたことで逆に隣国が乱れることになろうとはね……。

和平交渉で五年の停戦を約定したから王国側からできる事はほとんどない騒動は、正直まだ尾を引きそうな気配がありますけど。

一旦は交渉がまとまったのも確かで。その交渉材料として寄与した刀の製作者であるルッツは未だに誰の庇護下にもない流民の扱いであった。

そのため、ゲルハルトを通じて伯爵のお抱え職人になるという話が出て……ギルドに所属していないけれど、お抱えになった以上は付き合いもあるということで刀作成の場面を親方衆に見せていたのは、クラウディアの提案でしたがなかなか良かったのでは。



異世界刀匠の魔剣製作ぐらし

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「申し訳ありませんが研ぎの仕事がまだまだ残っています。場所をお教えしますので後日、俺の工房に来ていただけませんか」

「金貨数百枚単位の仕事だとしても、優先できませぬか」

「金額で優先順位を変えるような事をしていたら信用を失います。木こりからも、貴方からも」

「わしからも、か」

 

主人公のルッツは、城壁の外で暮らす訳アリの鍛冶師。

厳密には訳ありだったのはルッツの父ルーファスで、彼もまた鍛冶師であったがトラブルに見舞われ流浪の民となり、その果てに結婚相手を見つけてルッツが生まれ……ルッツは父から鍛冶の技を叩きこまれたそうです。

ただまぁ、ルッツも鍛冶ギルドには参加していない、領主が管理していない城壁の外で凶器となりうる刀を作っている、不審人物扱いされても文句は言えない立場ではあったようですが。

 

馴染みの商人クラウディアから斧とかを頼まれて作っていたみたいですが。

ある日、父の教えを糧に、まるで魅了の魔術でもかかっているかのように人を引き付ける刀を作り上げることに成功。

傑作ではあったものの、先述の通り立場のある身ではなかったために、売る宛もなく倉庫の肥やしになりそうでしたが。

クラウディアが冤罪で囚われたと聞いて、その代価として刀を手放すことに。

知人を助けるためだとかいろんな事情があった上での行動で……なんだかんだその後クラウディアと懇ろな関係になっているので、得るモノが大きかったんじゃないでしょうかね。

 

クラウディア冤罪で捕まえたみたいに、取り締まり担当している騎士団の下っ端はゴロツキみたいな連中が多いみたいで、そこはなんだかなぁ……って感じではありましたけど。

その刀が巡り巡って領主の信頼厚い職人、付与術士のゲルハルトの手に渡ったことでルッツ達の運命は変化していくことになるわけです。

 

付与術士という字面から分かる通り、ゲルハルトは物体に文字を刻み特殊な効果を齎す術を扱う職人であったわけですが。単体でも人を魅了し、刃傷沙汰にもなり得る武器に「魅了」の術を刻むあたりぶっ飛んでるんですよね……。

そんなゲルハルトに目を掛けられることになったルッツも、どうしようもなく職人肌で。交渉を担当してくれるクラウディアが傍にいてくれるの、実利的な側面から見てもかなりありがたい。

 

ゲルハルトとの縁が出来たことで、領主に献上する刀を作ることになったりもしてましたが。

ルッツ、刀造りは得意でもネーミングセンスに欠けていたりするみたいですから、そのあたりもクラウディアがサポートしてくれてたのは良かったね……。

鬼哭刀と名付けられた刀を伯爵が気に入ってくれたのも何よりでした。ゲルハルトと付き合いの長い、停滞し続けていた鍛冶士ボルビスと知識を伝え合う機会にも恵まれて……ボルビスの作った刀をゲルハルトが振るうシーンが印象的で良かったです。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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