気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。

エンターブレイン単行本

陰の実力者になりたくて! 3

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「所詮……月が赤いだけの話だ。そうだろう?」

(略)

「ただ月が赤いだけ……伝説の『赤い月』もシャドウ様の前では形なしですね。ご武運を、お祈りしております」

 

ローズ会長が傀儡となっていた父王を殺し、逃亡したことでオリアナ王国はゴタゴタしてるみたいですねぇ。

あくまで他国の問題なのもあって普通に2学期が始まり、夏休みに突入。シドの将来を危ぶむ姉に無法都市へと連行されたわけですが。

伝説にある『赤き月』と呼ばれる吸血鬼による災害が、無法都市を脅かそうとしていた。

クレアがわざわざ足を運んだのも腕利きの魔剣士だからだったわけですが……。

 

姉の会議中に興味本位でフラフラしてたら、シドとクレアははぐれてしまって。互いに別の意図をもって、敵の本拠地である紅の塔へと踏み込むことになります。

普段のシドはあくまで暗躍を楽しんでいるけれど、あくまでモブとして行動してるわけですが。

塔へ踏み込んだときに小市民らしく金貨を浅ましく漁ってる当たりが小物だよなぁ、シド。一方でシャドウとしてそれっぽい振る舞いしてると、なんか上手く回ってくのが面白いんですけど。

七陰との間にある溝が埋まれば、ミツゴシ商会の資金をもっと頼れるんでしょうけど、そこが埋まらず勘違いしまくってるからこその面白さがこの作品の売りだからなぁ……。

 

今回の後半とか、ミツゴシ商会の繁栄に対抗するべく大商会が連合を組むことになって。その動きを分かっていたからシャドウガーデンは迎え撃つ構えなわけですが。

何もわかってないシドが「新興が大商会敵に回すのは得策じゃないから、ちょっと介入して別のやり方を試そう」とか思ってるの、傲慢にもほどがあるというか。

君から聞いた断片的な情報でチョコレート再現したり、紙幣制度を浸透させたりして影響力を持つ有能な部下が揃っているんだから、下手にちょっかいかけない方がいいよ、とか言いたくなる。

 

シャドウガーデンを裏切るような真似して、シャドウに心酔しているがゆえにアルファたちが揺れる場面もありましたが、終わってみればシャドウガーデン一人勝ちしてるの凄いな……。

もう真実明らかに出来ないくらい絡まってるから、いっそ開き直ってデルタの言う獣人スタイルで強さでのし上がって群れの長になるくらいの未来図くらいでいいんじゃないかな、シドくん。

占い師には花騎士の恋心が見えています

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「……蝶じゃないなら、君は何なんだろうね」

(略)

「私は薬でしょう。貴方の傷を治すんですから」

 

両親を亡くし一人で薬屋ディベートを営んでいる少女、シルル。

彼女は魔法使いの一族の末裔で治癒魔法が扱える他、他人の頭の上に感情を示す線を見ることが出来て……。それを基に助言をしていたら、腕利きの占い師として人気を獲得することに。

 

この世界における魔法使いの魔法は血族にしか遺伝せず、それも絶対ではない。さらに、その力を求めた権力者に囲われた過去があるために、どんどん秘匿されるようになり廃れていったそうですが。

そんな環境の中でシルルはもうちょっと警戒してもいいんじゃないかなぁとは思いました。治癒の力は伏せてますが、死に近づく線が見えると放っておけなくてアドバイスしちゃう彼女の性格は好きですけど、危うさもあるので……。

 

一方の花騎士はその容姿から街の女性に人気の人物。

当人は外見しか見ない女性に迫られ続けた経験から、筋金入りの女性嫌いではあるみたいですけど。甘い顔をして近づけば情報を得られるからそれを活用していたとか。

そんな彼が、自身に迫っていた死の危機を回避する助言をくれたことや、街に迫る海賊について予言した存在がいるらしい、と噂を聞きつけてシルルに接触してきたわけですが。

 

花騎士に興味を持たず、彼が隠していた傷の治療の方に意識を裂くシルルは、彼にとっても珍しい存在だったようですね。

そうして交流をしていく中で、互いの距離が近づいていくラブコメ。シルル視点から物語が始まるのもあって、彼女の隠していることを探ろうと近づいてくる花騎士にあまり良い印象はないんですが。

……まぁ、彼の立場であれば調査しないといけないのも分かりはするんですけどね。

序盤の接触の仕方とかは苦手ですが、中盤以降の微笑ましい交流は好きです。



陰の実力者になりたくて!2

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「我らはただ、真実が知りたい」

 

アルファから『暇なら聖地に来て』と手紙をもらい、彼女の誘いに乗ると楽しいイベントに遭遇できるからと、翌日には行動開始してるあたりシド相当暇してたんだな……。

直近の事件で学園が半焼したから前倒しで夏休み入っていたのもあるでしょうし、予定があってもそんな面白そうなイベント見逃すわけにはいかないってどうにかスケジュール空けたでしょうけど。

 

本気を出せばダッシュで余裕だけど、モブらしく馬車にのったら生徒会長のローズと同行する羽目になってる当たり、モブになりたい主人公的にはついてない。

彼女も妙に盲目的になってるというか、シドと全く会話かみ合ってないの笑っちゃうんだよな……。

シド、初手でシャドウガーデン運営に全力出せちゃう有能なアルファを配下に迎えてたりするので、そういうの引き寄せる運はあるんですよね……。

 

聖地とは、かつて英雄オリヴィエが魔人ディアボロスの左腕を切り落としたと伝えられる場所で……そこで行われる「女神の試練」は聖域から古代の戦士の記憶を呼び覚まし、戦うという催しだとか。

そこでディアボロス教団がうごめいていたことで、シャドウガーデンのメンバーや王女殿下たちがそれぞれ調査をしようと足を運んでいたわけですが。

 

先んじて調査対象が口封じされてしまったり、ノリで動くシドによって計画変更を余儀なくされたりしてますが、アドリブいれつつ対応できるシャドウガーデンは優秀だなぁ……。

トップのシド君、わりとなにも考えてないのに。どうしてそれで何だかんだうまくいってるんだ……勘違い状態での爆走は見てる分には面白いですけどね。

詳細は知らず巻き込まれた先で、最終的に力ですべて弾き飛ばすシャドウ強すぎて笑えますし。

 

聖域の件が片付いた後、ガンマの商会経営やデルタの加入時とか、イプシロンのプライドの高さがわかる短いエピソードが追加されてたのは良かった。シャドウガーデンメンバーの解像度上がるし。

シャドウに救われたことで、ガーデンメンバーは本当に彼を大切に思ってるんだなぁというのがわかるの好きです。

 

まぁシド君はそんなことつゆ知らず、陰の実力者ごっこにいそしんでるんですが。

実力を隠して「ブシン祭り」に出場したいって思い付きでメンバーや、他の大会参加者を困惑させてるし。ジミナという偽名で出場した主人公の行動を、実力者たちが勘違いしたまま分析したつもりになってるの、空回りすぎでな……乾いた笑いが出た。


狼は眠らない8

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「自由に生きてこその冒険者だろう。言いたいやつには言わせておけ。思いたいやつには思わせておけ。それが気にならないのを自由というんだ」

 

5巻以降電子限定で刊行された『狼は眠らない』シリーズ、完結巻。

WEBの幕引きも味があって好きでしたけど、もどかしさがあったのも確かで、そのあたりの加筆があったのは嬉しいところですね。

 

7巻終盤は大森林の中にある神殿を荒らされた、と獣人たちに王国が攻め込まれたという状況だったわけですが。

プロローグが全く別の場面でちょっと笑っちゃった。エピローグにつながる加筆要素として面白かったですけど。

 

死にかけた迷宮で神薬を得て、失った目を取り戻したレカン。今までの状態でもこの世界でも有数の実力者だったのに、まだ伸びる余地があるあたりがすごい。

そして王都に帰還しフィンケル大迷宮の様子を確認だけして。そこでまた気になる情報を見つけるあたりが、レカンというか。

謎が増えたところですぐシーラと出会えたのも良かったですけどね。シーラのいう通り、研究者向きの気質がありますよねレカン。それ以上に冒険者としての生き様の方が強いみたいですけど、

 

マンフリー、ついこの間脚絆を欲したレカンがらみで貴族家から覚えのない礼をもらったと思ったら、ユフの騒動に関しても同じような目にあったとかで。

利益はあるけどそりゃ驚いてレカンに事情を聴こうとしますよね……って感じではありました。

そして関係者と結婚式に招きたい人についての相談などを済ませて、レカンにしては穏やかな時間を過ごしていたわけですが。

 

獣人たちの侵攻によって王国側の被害が積み重なってきた、ということでマンフリーから相談を受けることになって。

ここでレカンはかつて一緒に黒穴に跳び込んだボウドの名前を聞くことになるわけです。平和ボケしてた王国は痛い目見る羽目になりましたが。レカンを頼ろうと思えるマンフリーは柔軟ですね。実際、大森林の神殿に関しての情報をエダが持っていたりしましたし、レカンを頼ったのは正解なんですよね……。

 

相手がかなり強力な恩寵品――向こうでは霊器や神器と呼んでるようですけど――を持っていて、厳しい状況になりつつも刃を届かせたレカンはお見事。

……その後、旧知のボウドをしれっと連れ帰るあたりがレカンですよね。なんかほっとした。

戦争に関して宰相が失態を犯したことや、逆にレカンが勇名をはせたことで結婚式に王家が干渉してこようとしたり面倒ごとも生じてましたが。持論を曲げずにマンフリーに任せたのはレカンらしくて好きです。

 

結婚してからはしっかり妻2人の間にしっかり子どもを作りつつも、一つ所にとどまれるタイプではなくて。

ボウドと一緒に迷宮探索に乗り出して。海の迷宮でまた直近では存在しなかった百一階層を踏んだ探索者になって領主との縁まで出来たりしてました。ここの探索風景もかなり加筆されてましたね。楽しそうでした。

順調な生活を送っていたところ、レカンとボウドを吸い込むかのように黒穴が生まれ、故郷に強制的に送られてしまうんだから無常です。

 

WEB版だと向こう側で波乱万丈の生活してるレカンの事情と、三度彼の近くで開いた黒穴が息子たちを彼の下に運んでくれたものの、エダ達とは再会できない場面で終わるんですよね。

直前で長男のホルスがどんな手を使っても知らせるし、父を送り届けられなかったら向こうで自分が結婚して、エダの血を継ぐ子供によって知らせを運ぶと宣言してくれて。エダがその姿にレカンの影をみたわけですから、きっとどんな形であれ再会は叶ったんだろうと想像の余地が残ってて、最初に言った通りあれはあれで好きでした。

……いやまぁ、レカンがエダに約束したもし向こうに行くのならエダと一緒だ、という約束を破らせたうえ10年放置させる結果になった黒穴現象に関しては思う所あったのも事実なので、加筆によって帰還がかなった場面の描写が少しでも差し込まれていて良かった。

 

今回のプロローグは、領主に家族を人質に取られて理不尽な命令をされた冒険者ウォージェニーが黒穴に跳び込み、そこで出会ったフーという冒険者に助けられながら異世界に適合していく話で、どうつながるのかと思いきや。孫はジーンという名の冒険者になったそうで。

エピローグで再び彼が登場したときに、さてどんな幕引きを見せてくれるのかと思ったら変わらぬ主人公の姿を見せてくれたので満足度高かったですね。

途中から電子のみとはなってしまいましたが、刊行を続けてくれたことに感謝しかない。良いシリーズでした。

アラサーがVTuberになった話。2

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「ここ、場所空いてる」

「うん……?」

「もうひとりサイン欲しい人がいるの」

 

デビューから3か月が経過した怜。

相変わらず当人に非がないけれど、飛び火してきたりしてるのついてないなぁ……。

今回は他所の事務所から新人女性2人がデビューすることになってましたが。

片や、妹の雫ちゃんと親友である学生少女で……配信きり忘れの一件で、雫との繋がりが露呈してしまった子。

片や、かつての同僚でありストーカー対策だったとはいえ、一時的に同棲していたこともある女性。

リアルでどちらとも距離が近かったり、SNSで他所の男性Vのフォローが早かったこととかで、目をつけられたりしてましたからね。どうして毎度火種が飛んでくるんですか……。

 

前者に関しては雫ちゃんがVとしてのガワを作って、SNSや配信で情報発信することで鎮火してましたが。

後者は前世バレからの妙な邪推が、今回は正解だったっていうのがややこしいんだよなぁ……。

まぁ念のため準備していたのが上手く作用して、ストーカー被害受けてた女性を狙ったってことで、炎上報道するVの方が叩かれる結果になってたのはホッとした。ああいうの嫌いだからもっとやれ……っていう黒い感情が沸いた。

 

今回良かったのは、以前妹に言われていた先輩のサイン色紙を本当に用意してきたことと……そこに妹が兄のサインを欲しがったところ。可愛いかった。

BOOKWALKERで購入して、限定書下ろしSSのタイトルが「十六夜真のクラスメイト観察日記」という真ちゃん視点での雫のエピソードを見られたんですけど、割と彼女もブラコンですよね、本当。妹ちゃん、不定期に掲示板に登場してるし。

 

怜、色々と多芸ではあるものの、なかなか伸びませんねぇ。

柊先輩の3D振り返りの時とかも「スタッフに人気だったけど、どうしてそれを表でだせないのか。コレガワカラナイ」とか言われてたっぽいし。

読者目線で見ている分には、リアル側のエピソード見れるのもありますが、なかなか愉快な人だとは思うんですけども。他所からの火種に事欠かないのは、そうなんですが……。

事務所の先輩男子とのコラボをしたり、グッズを作ったら作成数の問題か速攻で完売したり、地道ながらしかっり歩んでるし、数字に悩んで折れたりはしないだろう信頼があるのでこれからも頑張ってほしいところ。



狼は眠らない7

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「もしそうでなくても、レカンは礼をもって接すれば礼をもって返す男であり、暴力をもって接すれば暴力をもって返す男です。ガスコエル様。あなたは礼を返されたいんですか。それとも暴力を返されたいんですか。これはレカンに対してだけの話ではありません。あなたの貴族としてのありようをお訊ねしているんです」

 

エダやノーマと結婚すること。ツボルト迷宮などを制覇した冒険者であること。

それ以前にも薬聖との縁があったりして、レカンの名前は結構知れ渡っているわけで。

王から呼ばれたとなれば、ワズロフ家としても無下にはできない。

長命種ヤックルベントに会いたくないから王都にはいきたくなかったレカンでしたが、出来る範囲で対策して乗り込むことに。

 

そうしたらレカンに「お前が異世界の貴族だって言うのは嘘だろう」と因縁をつけてくる貴族がいて。そのありように他の貴族が不振を示してもなおひかなかったため、「真実の鐘」が用いられ……陥れようとしたスマーク侯爵の方が偽りを述べていると証明されたので多少溜飲は下がった。

と思ったらマッドやヤックルベントが接触してきて。……レカンがこれまで逃げようとしてきたの間違いじゃなかったの証明されたな……これは会いたくない。

 

辛くも逃げ出したレカンを保護してくれたのが、彼が初めて異世界に来た時に出会ったザイドモール家のエザクだっていうのは不思議な縁ですねぇ。

トロンの素材で資金を得られたことで礼を言われますが、レカンはそれを知らないというスタンスを崩さず。事情を汲んで謝罪と礼を言えるエザン、好きだなぁ。

そのあと長男ガスコエルと、騎士オルガノが因縁つけてきた時にもレカンの対応を見て、しっかり彼の側についてガスコエルを𠮟責してくれたし、信頼できる。

 

この騒動の中でルビアナフェル姫がユフに嫁いだことや、ユフにある迷宮から得られる素材についてレカンが興味を持ったんですから、運命的というか。

6巻の幕間でユフ、大変なことになってましたからね……。

関所で足止めされかけたけれど、レカンはワズロフ家とのつながりや浄化使いのエダを伴っていること、迷宮制覇の実績を伝えることで突破して。

現地でも監視付きの中で情報収集と、救援に奔走するんだから有能です。まぁ情報はぽっちゃり由来なんですが、彼は彼で仕事人ですよね。

 

ルビアナフェル姫にとって頼れる相手として、祈り待ち続けたレカンなわけですが。

特殊な防壁を張った場所にも侵入できるし、必要な物資運べるし、迷宮に潜っている味方の戦力への応援を頼むことだってできる、現状でこれ以上のことは望めない応援だったのは奇跡的です。

恩寵品の問題もありましたしね……。レカン以外に解決はできず、そしてレカンは活躍しすぎた。それゆえ先んじて一人で帰ることになったわけですが。

この騒動の中でエダとこちらの世界に来てからの話などをして、もし黒穴が目の前に現れたらどうするのかと聞かれたレカンが、基本はこちらに残るし万一向こうに戻るとしてもエダと一緒だ、と離れる気はないと表明したのがとても良かったですね。

 

それはそれとして、一人で行動するときも変わらず冒険者レカンであるのが彼らしいというか。

白炎狼との激闘の果て見知らぬ土地にきて。未踏のダンジョンを見つけて、ソロで踏み込んでいっちゃうし。浅いダンジョンであったけど強敵がいて苦戦する羽目になってたので、婚前なんだからもうちょっと安全策取ろうよ、と思っちゃいますけど。

そこで退けるレカンでもないからなぁ……辛くも生還できてなによりでした。

原作開始前に没落した悪役令嬢は偉大な魔導師を志す~乙女ゲーム? 何それ魔術用語?~

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「自分の生き方を見つけて、それに従って生きていきたい。惰性じゃなくて、自分で自分を決められる人間になりたい。……魔導師はそんな人物の代表例、って感じかな? ローラン様も、もちろん、マーリン様にも私は憧れる。……輝いて見えるんだ」

 

とある乙女ゲーム世界のヒロインに転生したキャラが、前世の知識を基に父の協力も得てパルプ紙を流通させて。

それによって羊皮紙の利権を抑えていた、ゲームでは悪役令嬢枠になる少女の家が没落することに。

 

名門中の名門と言われた貴族が、発明1つで没落するものかと気になったんですが。

後に、その評判に胡坐をかいて品質が落ちていただとか、経済的な打撃を受けたことで影響力を落として政争に負けた結果だそうで、作中でしっかり理屈づけてくれてたのは良かった。

政治的に干渉して潰すなり取り込むなりできなかったあたり、没落するべくしてした感じはあります。

実際落ちぶれてからも見通しが甘く、借金こさえて妻と娘を残して蒸発するとかいう最低の所業をしますからね、元当主の父親……。

 

タイトル通り主人公は、悪役令嬢になるはずだったが原作前に没落した家の娘、フェリシア。父が蒸発し、病弱な母を抱えた彼女は、日々を生きるのにも苦労することになります。窃盗とかを働いて糊口をしのいでいた感じ。

そんな中で母の病状が悪化してしまって。近くの「迷いの森」に魔導師マーリンという優れた錬金術師が住んでいる、という噂を頼りに踏み込み……運よくマーリンに気に入られて、弟子入りが叶うことになります。

 

そしてフェリシアはマーリンの教えを受けて、ただ型通りの技術を扱う魔法使いではなく、真理を追究する魔導師として成長していくことになります。

一度落ちぶれたことで、生まれ変わったフェリシアの在り方はかなり好ましいですね。困窮の中で家族に暴力を振るわれたりもしてきたようで、傷ついた彼女が救われていってほしいものです。

 

一方でそんな状況を齎したゲームヒロインのアナベラに転生した少女は……いろいろと考えが甘い。勉強も半端だし、自分の発案したものでフェリシアの家に与えた影響を知ることもなかった。小物すぎるんだよなぁ……。

フェリシア的には「悪かったのはうちの経営のやり方」と、アナベラ自身を恨むようなこともないくらいの存在で。そうやって割り切れたからこそ、友人として扱えてるわけですから実に格好いい。

ただそんな彼女もまだ若い少女であり……再会した父の生存を喜ぶ半面、かつての行いは許せなかったりするのもまた人間らしくて良い。

 

そしてフェリシアはアナベラと和解(前世知識のあるアナベラが必要以上に恐れていただけとも言えますが)し、彼女の秘密を打ち明けられたわけですが。

しかし、フェリシアが魔導師としてこの世界の理を追求してきたからこそ、「前世の記憶」という事情に疑問を提示することになっていたのも面白かったですね。

それだけに2年前に1巻出たきりで、WEBの更新も止まってるので後追いしても途中で止まってしまうの惜しいなぁ……。
……と読了後に思ったんですが、よくよく調べるとなんか今月末に文庫版の1巻が出るっぽいし、なんなら3月に文庫版2巻の発売予定もありそうなので、ワンチャンあるか……?

狼は眠らない6

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「私は出会いを大切にしたいのです。それは一族の家訓でもあります」

(略)

「そうだな。出会いは大事にしなくてはいかん」

 

序章がマンフリー視点から見たレカンの話なんですが。

従姉妹のノーマを密かに気にかけていた関係もあって、色々と噂を聞いていたとか。まぁ、後にノーマとエダから直接話を聞いたりもして、冒険者としても実力があるから他家に渡してはならないと判断したとか。

レカンに偏屈な所があるのも理解して、家臣にも良く言いつけて付き合い続けてくれていたという裏事情が分かるのいいですね。

終わりが「レカンは扱いにくい人間ではない、とこの時は思っていた」と結ばれるのが、なんかレカンがすみません……って気分になってきますけど。

レカンなりの矜持があって親しい人を尊重もするけど、自由人な部分もあるからな……。

 

魔法都市のダンジョン攻略を続けるレカンは、相変わらず彼らしく過ごしていますが。

ツボルト迷宮の制覇者が都市公然の秘密について調べたり、他の探索者と合同で攻略を進めたりしていて、領主は割と気が気じゃなかったのではないかな……。

実際、迷宮攻略を諦めていなった導師に声をかけられて最深部を目指すことになるわけですし。

 

都市側もそれを阻止しようとはしてましたが、強行突破してくるんだからすさまじい。

里の代表として外に出てきて、レカン達に挨拶しに来ていたアリオスまで巻き込まれてたのにはちょっと笑ってしまった。

それぞれのスペックが高いのと、レカンが薬師としてもサポートできるおかげで順調に進んで。誰一人として欠けずに攻略を果たしたのは何より。

さらに予期せず参加することとなったアリオスが、攻略を終えてから一つのアイデアとして提示したものがわりと正解に近そうなんですよねぇ。そう考えると、彼がいたのもまた運命的だったと言えます。

 

それからまた冒険者稼業に戻ったレカンですが、そこで「始原の恩寵品」を持つ青年と出会って。その価値を知らなかった青年の困りごとを解消する対価として、それを入手することに成功。

ノーマとの婚約には納得してるけど、自分が関係者としての意識が薄いのはまぁ彼らしいと言えますか。名の知れた冒険者が他の貴族の領地で起きた騒動に首を突っ込む形になってましたが、結果的には最上の利益を獲得してたのでヨシ。

 

合間合間で、ユフに嫁いだルビアナフェル姫の様子が描かれていましたが……どうにも騒がしい状況に陥っているようです。

WEB読んでるので展開は知ってるんですが、こうやって何が起きたのか補完されるのは嬉しいですね。


陰の実力者になりたくて!

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「ディアボロス教団。それが僕らの敵だ。彼らは表舞台には決して出てこない。だから僕らも陰に潜むんだ。陰に潜み、陰を狩るんだ」

 

表向きは人畜無害なモブだけれど、その実「陰の実力者」であるキャラに憧れていた主人公。

花形であるところのヒーローやラスボスではなく、陰ながら介入し実力を示すようなそんな存在になりたかった。

まぁここまでならちょっと変わってるけれど、分からないでもないです。どんなキャラ造形が刺さるかなんて人それぞれですからね。

 

でもこの主人公のすごいところは、実際になるための努力を続けまくったことなんですよね。とはいえ現実社会には核などの兵器が存在するし、そもそも個人の武勇を伸ばしたところで鍛え上げた軍人に囲まれたら終わりなわけで。

それに対抗するために超常の力――魔力でも気でもなんでもいい――すら求め始めた。

狂気的な足取りで夢に向かっていた主人公は事故で命を落とし、魔力が当然のようにある世界へと転生した。そして前世の記憶そのまま保持しているとなれば、そりゃ同じように「陰の実力者」を目指して驀進しますよね……。

 

魔力という下地を得た主人公は今度こそ核にも負けない力を得ようと裏で奮闘し、表向きはモブを装い続けた。

それで実際に実力者になってしまうんだから、凄まじいというほかない。

自分に相応しい武器としてスライムを用いた武装を作ったり、実戦経験積むために密かに野党退治したり、割と好き勝手してますよねぇ。

 

その過程で彼は異形と化した少女と出会い、実験のつもりで行った魔力操作で少女の本来の姿を取り戻すことに成功。

救われたことで心酔する彼女には、ぜひとも「陰の実力者になる夢」に付き合ってもらおうと決意して、この世界の伝承を基にした作り話を披露します。

そしてなんということでしょう。作り話だったはずのそれは世界の真理をついており、彼が組織した陰の組織「シャドウガーデン」は、歴史の裏で暗躍を続けていた「ディアボロス教団」と敵対することになります。

 

主人公は最初の実験以降も多くの少女を救って同志を増やし続けていた一方で、ディアボロス教団なんて存在しないけどねーと、夢を追う自分を楽しんでいるようですが。

救われた少女たちは独自に調査を進めて歴史の真相に迫り、主と仰ぐ彼をサポートするために力を尽くすわけです。

迷子になった主人公が逃げ出した敵の首魁と鉢合わせたりして、すべては手のひらの上感を演出できる運の良さだとか。救われたことで少女たちが信者と化しているから、とか色々重なった結果ああなってるので、主人公の演技に気付くことはなさそうだなぁ……。

読者目線だと大分テキトー吹いてるんだけどなぁ……。

でも、なにもわかっていない主人公が、ノリと勢いと夢で敵の計画ぶっ壊していくのは面白いので割と好き。

アラサーがVTuberになった話。

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「あんだーらいふのファン舐めんなよ? こんだけ燃えてる私にだってファンいるんだからさ」

 

ハーメルン、小説家になろう、カクヨムでマルチ投稿されてる作品。

ブラック企業で働いていたら過労で倒れ、このままの生活を続けていたら危ないと医者に言われ退職した主人公。

貯金はあるのでしばらくは生活できるけど、これからどうしたものかとなっていた彼に妹が「VTuberになってみたら」と言ってきて。

試しに応募してみたら採用されて、トントン拍子でデビューすることになります。

 

しかし、ほとんどが女性の事務所からのデビューだったために、良い印象を持たれていなかったところに、同期デビューの男VTuberが「前世」問題で炎上しデビュー翌日にクビ。

行き場のなくなった怒りが同期というだけで主人公に向けられることになります。

それ以降も、直後にデビューすることになった後輩女性VTuberSNSで反応しただけで小火騒ぎ起こされたり、当人に非のないところで炎上しまくってるのはお辛い。

 

とは言え主人公はあくまでVのガワの着てるし、ブラック企業勤めの社畜だった経験もあってかそんなに気にしてないんですよね。

アンチに張り付かれて低評価爆撃くらっても、そのこと自体はダメージになってないし。

企業所属VTuberとして結果が出せておらず、配信でも面白さを発揮できずに虚無長時間配信とかになりがちだとか、そういう方面の心配はしてるんですけど。

 

彼の視点だとそこまで重くなさそうでしたが、妹目線だと放っておけない状態だったってのも描かれてますし、彼の心境描写どこまで信じたものやら。

あとがきに曰く『主人公が救われる話』らしいですし。救われないといけない何かを抱えてるってことじゃないですか……。1巻で漏れ聞こえてる範囲でも、結構爆弾抱えてそうではありましたけどね。

それでも自分のことで手一杯なのではなく、周囲の人を気に掛けることができる主人公が本当にいい人だったので、いつか救われるまで見届けたいって思いましたね。

 

主に主人公の視点で進行しつつ、彼の妹だったり、事務所の後輩たちだったりの視点が入って、心情を補足していく形式。

各章の終わりに掲示板回があるんじゃないかってくらい多いのも特徴ですね。掲示板回、好きなので結構うれしかったです。まぁ炎上しがちなのでアンチもいるんですが、ファンもいるし、なんなら妹ちゃんも出てくるし。

いくつかのスレでは「今日の妹ちゃん」のコメントまでついてるのが面白かった。

 

ただ最初のほうはレイアウトにちょっと慣れなかったですね……横書きの文章みると視線が左上に行っちゃうんですけど、横書き2列構成の右側の列先に読まないといけないのでついつい行きすぎちゃうことがあった。

でも掲示板回が多い分、横書き1列とかにするとどうしたってページ数嵩むので、納めるために考えられたレイアウトだとも思うので、これはこれで良いと思います。

途中から慣れてきたし。でも、真ん中に縦線でも入ってたら違ったかも……? そんな変わらないか?

電子で読んでたからってのもあるだろうか。BOOKWALKERの電子版、カバー裏も読めたんですがあちらはメガイラスト仕様で右側から読めたしな……。

 

あと面白いと思ったのは、イラストがV側しかないんですよね。オフコラボやリアルイベントもやってるんですけど、いわゆる「中の人」が描かれてるべきところVの絵で通してる。

そもそも地の文からして「中の人」の名前が基本出てこないので、作品として一貫してる部分ではありますけど。中の人も出すと、キャラの名前っていう情報量が増え続けていくことになるので、こういう形もアリかと思いました。

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
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