気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。 BOOK☆WALKERコインアフィリエイトプログラムに参加しております。

ドラゴンノベルス

図書迷宮と心の魔導書

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「ちなみに司書って、魔導書に関する疑問に何でも答えられたりするの?」

(略)

「しない。必要な情報は既に与えられた。神はそんなに甘くない――というか、呆れている」

 

カクヨムネクストからの書籍化作品。

魔物という脅威が存在し、それに対抗するために人々に魔法が与えられた世界。

成人の際に儀式を行い魔導書を授かり、図書迷宮と呼ばれるダンジョンに挑みそこに設置された祭壇で儀式を行うことで、扱える魔法を増やすことのできる仕組みが作られていた。

……しかし、人類は愚かだった。魔物と戦うために授けられた魔法の力で、人同士で争う事すらした。

知識と実力がある人ほど魔物の戦いの前線に行くし、人同士の争いまであったことで知識の断絶が起きているというのだから、なんというか呆れるしかありませんな。

 

主人公のルミエーラは、前世の記憶を持った少女。

森に捨てられていた彼女はシンクハルト辺境伯家に拾われ、その家の娘として家族からも領民からも愛されて育っていた。

辺境伯家は魔物と戦うという役割をしっかりと果たしている真面目な貴族家みたいですが……中央と呼ばれる地域の王族や、神殿とかは知識の断絶を起こした末に肥え太っている輩も出ているみたいで危うさが伺える。

 

ルミが成人の際に儀式を行ったところ、彼女に与えられたのはこれまでの評価基準では測れない特殊な魔導書だった。

普通は最初から使える魔法がいくつか記されていて、図書迷宮で使えるものを増やしていくみたいですが。ルミが得たものは全てが白紙で……さすがの彼女もショックを受けていました。

 

しかし試してみたところ、図書迷宮の先に進む扉を開ける程度には格が高く、儀式を行うことで使える魔法を増やすことも出来た。

さらに少しずつ前を向けるようになったルミの前に、「司書」を名乗る、変わった少女まで現れて。

ミカゲと名付けられた司書の少女はルミと一蓮托生、あまり遠くまで離れることも出来ない存在だそうで。人よりも神に近い彼女は、今失われた知識を持っていて……「過去の人に既に教えたこと」として、教えてくれないことも多いのですが、それでも貴重な知識を持っているのは確かで。

司書を携えた者に与えられた権利として、バカやった奴らから魔法を奪える『督促』とか。魔導書の『強化』を行えることとかは、かなり重要な情報ですよね。

 

ルミはそれまでの常識からすると、常識外の存在であり。中央の貴族は貶めようとつまらん噂を流したりもしていたわけですが……それに負けず奮起してできる事をやっているのが良いですねぇ。

 

それを想うと、バカ貴族の息子が魔法を授けてくれる図書迷宮の祭壇をぶち壊したりした末、玉虫色の決着になったのはなんとも。まぁ政治的なバランスとか、本格的に貴族と貴族の争いになったら面倒だという部分もあるってのはうなずける話ですが。

それはそれとして中央の王子とかバカすぎて、早い段階で教育しとかない近い将来足をすくわれそうだから、初手苛烈に行っても良かったんじゃないかなぁ……みたいな気持ちにもなる。

神殿の腐敗も軽く触れられるだけでしたが、今後絶対かかわりは増えそうですし、ルミ達には頑張ってほしいものです。
膿を出して、少しずつ味方を増やしていかないと、かつて前線に立ち倒れて行った先達たちの二の舞になってしまいそうですからね……。



極振り拒否して手探りスタート! 特化しないヒーラー、仲間と別れて旅に出る6

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「しかし奴らは我が領民に手を出した! それは絶対に! 絶対に許しはしない!」

 

ダンジョンを攻略しアルッポを去ったルークは、国境を越えて鉱業が盛んな国ザンツへと足を延ばして。

しかし時期が悪く、季節は冬。

これまではアルッポのダンジョンまで足を延ばせば、そこは切り離された環境であるため、冒険者にとって冬場の良い稼ぎ場所になっていたようですけど。

そこが攻略されたことで計画が破綻した若手冒険者なんかも散見されて。ルークにとっても想定外の状況ではありましたが。

 

……冬で往来にも制限が出るし、食材にだって制限が出てくるから、冬支度って言うのは本当に大切なものだそうですが。ルークは本当にそのあたりさっぱりで。

情報収集をした結果、王都に足を延ばすことを決めたわけですが。

そこで以前アルノルンで冒険者登録した時に話したニックと再会。登録を止められそうだった時に、受付のエリンを説得した人と言われてそう言えばいたなぁと思うなどしましたが。

彼の紹介で宿を見つけることが出来たりして、手探りで旅をしまくっているし、婚約破棄された少女の前で「あの騒動の!」的なコトを口走ったり失言もそこそこあるわりには、何だかんだ強かに生き延びてますよねぇ、ルーク。

 

ザンツは国や教会の上層部が腐敗していて。

真っ当な人も当然多くいるんですが……それでも権力者ほど腐敗が進んでいて、暗躍してる輩も居て。

そんな中でルークは多少怪しい人物を目撃したり、巻き込まれた孤児の子を助けたり。婚約破棄された令嬢に回復魔法を教える役を任されたりと、騒動の端っこの問題に関わっていくわけですが。

……最終的には、彼の与り知らぬところですべての問題が解決していたのは、ちょっと笑った。一応ルークが目撃した情報で、真面な司祭が動いてくれていたり、彼が魔法を教えた令嬢が「聖女」と神聖化され、この地に残っていた聖女伝承もあって民心を引き付けたことなんかもあって、ルークのしたことは結果として良い未来を導いてるんですがね……。

 


刹那の風景5 68番目の元勇者と晩夏の宴

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『戦いで片腕を落とされて水辺に旅だった友は、『笑え、笑え、リリア。ライナスが勝利を勝ち取る、喜ばしい日だ』といったわ……。たくさんの人の命が零れ落ちていく光景の中で、私は彼のために笑って見送った』

そして王妃様は、首を横に振り笑って続ける。

『そう、泣かないの。喜ばしいことだから、泣かないのよ』

 

セツナとアルトがリペイドで生活を初めて早一ヶ月。

ラギさんとの距離感も近づいていて、良いですねぇ。アルトがラギさんに、師匠にできる事をしたい、と相談を持ち掛けて。想定外の結果になってしまったけど、悪戯を教え込まれたりしてて、セツナ以外の指導……って言うと大げさですけど。

ちょっと違う考えとかにも触れられているのは、アルトの世界が広がって良いと思います。

アルトは何だかんだ楽しく日々を過ごしているみたいですが。

 

リペイドは建国祭が近づき、あちこちがにぎやかになっていって。

国の上層部は、直近の騒動からの祭りの準備とあってかなりピリピリしている模様。王妃様が心配して休養を進めたりをしていたようですけど、実を結ばず。

ジョルジュ卿が求婚の際に用いた薔薇には時の魔法がかかっていた一件が俎上に上がったりもしていましたが。国に仕える騎士でありつつ、セツナへの義理もありその名を告げようとしなかったのは良い男でしたねぇ。

そのあたりを予想したセツナがサイラスにも伝言を残していて、先日の恩人であることが伝わり、その時の態度から敵国に就くことも無いだろうと決着したのは良かったですが。

 

……セツナの介入で、結果としては本来辿っただろう流れよりも良い形で祭りの前を迎えられているわけですが。

それでも王たちは王妃様との会話を後回しにして。最終的に王妃様は時間を作るために、セツナへ依頼することになるわけです。

依頼自体の難易度は高くない。けれど、依頼された通りの事をしても解決するとは限らない。でも、一度依頼は受けると言った以上、できる事はしたい。

そんな悩みを抱えているセツナにとっても、ラギに相談できたのは大きかったでしょう。

 

最終的には、なんとか良い形で落ち着いていたのでほっとしましたが。割と綱渡りではあったかもなぁ、というべきか。王妃様が無茶な依頼を出した裏には、余裕が出来ればちゃんと理解してくれる人達だからという信頼があったからというべきか。

そうやって事態が解決した後、セツナに礼を言うためにサイラスが頼まれて。ちょっとしたパーティーをすることになって、本当に一件落着って感じで良かったですね。

虐げられし令嬢は、世界樹の主になりました~もふもふな精霊たちに気に入られたみたいです~

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「アルム、落ち着いてください。……私は、これで良かったと思います」

 

伯爵家令嬢のフィオーラは母が平民な上に、既に亡くなってしまったことで家での立場がない少女だった。

異母姉のミレアやその母リムエラは当然フィオーラの存在が面白くなくて嫌がらせをしてくるし、当主である父も愛していたフィオーラの母は愛していたから、母が存命の間はそのついででフィオーラにも気を配っていたが、母の没後には興味を失って。

辛うじて婚約者もいて、家から出られる可能性があったけれど……それすらも、締結間近に破談にさせられた。

 

そんなフィオーラは母の形見として、一緒に植えた木を大事にしていたけれど……それが面白くなかったミレアが火をつける暴挙に出て。

しかし、その樹木はこの世界で貴ばれる「世界樹」の種から芽吹いたものであったため、被害はなく……それどころかミレアに、容易に消せぬ呪術的な痕跡を残す仕返しすらも出来た。

そもそもなんで世界樹の種がこんなところにあったかというと、世界樹が千年の寿命を終えようとしているために、次代を担う種を生み出して託された内の一つであった、とかなんとか。

 

次代の世界樹が人の姿をとった、アルムトゥリウスことアルム。

その主であるフィオーラは世界樹の力を引き出すことも出来て、かなり重要な立ち位置になったわけですが。世界樹を崇める教団側にその事を察して協力してくれる善性の人間が居たのは良かったですけど。

……フィオーラを狙う輩に与する輩も交じっていたり、伯爵家の人々がフィオーラの立場が変わってからも考えも行動も改めることはなく、それどころかさらに悪化させていくような流れだったのは、まぁ今更引き返せない現れだったのかもしれないけど辟易とはしたな。

バカが大暴走した結果、ある程度の問題には決着がついたのは良かったですけど。懲りないリムエラの悪意が最後に描かれていたのは気がかりではあります。諦めなよ……。

刹那の風景4 68番目の元勇者と訳ありの依頼

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「『依頼主の要望を優先する』というのは正論だ。だが、それだけでは駄目だ。『冒険者が働くための環境を整える』という視点も、一方で持つようになていかなければならない。それが、上に立つ者の役目だからだ。というのも、下の者がいくら声高に叫んでも、働く環境は変わらないことが多い。だからこそ、意見がとおりやすい立場になった者が環境を改善してやる必要がある」

 

サイラスに託された願いを果たす協力を果たせたセツナ。

薬の製法についてギルドに教えることになっていたが、サイラスを助けるために後回しにしてしまっており、特別事後申請をするかどうするか、という問題があって。

サイラスが送り出された魔法陣だったり、山脈にある洞窟だったり国家機密にふれることになるので、ギルドに全部伝えるのは控えて欲しいというようなお願いも国王からされることになっていましたし。

 

しばしリペイドで活動することになったセツナはアルトと一緒にギルドで仕事を探すことに。

薬の調合についての依頼が貢献として認められて、セツナは一気にランクアップすることになったりもしていましたが。

その中でも、アルトは獣人の老人の話し相手・雑用という依頼を選んだり、セツナはトラブルに見舞われた花屋の手伝いだったりを選ぶあたりが彼ららしいというか。

アルトは依頼主が獣人だったから選んだだけで、色々と抜けもあって。セツナは依頼の裏事情なんかも察しがついたので、アルトに受けさせるかどうかを悩んだりしていましたが。

 

アルトの見つけた依頼を出していたラギ老人は、セツナと師弟関係も含めて受け入れてくれてましたし、依頼を受けていく中で、それぞれにとって良い学びがあって良かったですねぇ。

花屋の手伝いをする中で、リペイドの貴族の風習の一つである「婚約者の女性に12日間続けて贈り物をして、気持ちが変わらないかを確かめる」というものに関わることになったセツナ。貴重な時の魔法すら使った大盤振る舞いでしたけど。

その送り先である女性も含めて喜んでくれたのは良かったですねぇ。時の魔法に関しては、後々面倒そうな火種ではありますが。



刹那の風景3 竜の縁と危亡の国

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「生き様が自由にならないのであれば、死に様ぐらい自由に選べばいいんじゃないでしょうか……。そうは思いませんか?」

 

過去に過ちを犯して封じられていた竜人の娘、トーゥリと出会ったセツナは一目惚れから告白して、仮の誓約を結んで婚約状態となった。

竜人のしきたり的にはまだ結婚成立していないけれど、セツナ視点だと一貫してトゥーリを「妻」と呼んでいるの、思いの強さが出て良いですね。

そうやって大切なモノが増えたセツナが、弟子のアルトとゼグルの森で過ごしていた時に、魔物に食べられそうになっていた男性を発見。

 

死を望むのであれば放っておこうかと思ったようですが、何度か問いかけた結果「まだ死ねない」と口にしたため、助けることに。

今回、巻頭にこの世界のワールドマップが掲載されていました。通常の人には越えられない連峰によって大陸の南北はほとんどさえぎられているみたいですね。

セツナ達が過ごしていたガーディルやクットというのは、大陸の南側。そして今回保護したサイラスは、北側の国リペイドの騎士だった。

彼は冤罪によって罪に問われ、「魔の国」へ送り込まれるハズだったというが……実際はクットに居た。

 

厄介ごとの気配を感じ取ったセツナは彼への対応について少し迷っていましたが、アルトはいつもセツナが「困ってる人がいたら助けてあげようね」と言っていたのを覚えていため、内心嫌な気持ちはあれど、サイラスを助けるための道のりについ言及し始めて。

サイラスとセツナが話し合っていく中で、リペイドの抱えていた問題やサイラスに期待されていたことなんかの答えも見えてきましたが。

リペイドの想定通りにいかない、という情報をセツナは持っていた。その上で、カイル達に与えられた知識の中に、解決策があってそれを開示するかという悩みもまたあった。

結果的にサイラスを助けることになっていきましたが、その道中でまたしても予期しない出会いがあったのには驚きましたね。

 

地理の説明の為にセツナが用意してくれた地図を欲しがったアルトが、それに「その国でもう一度食べたいものを書いて、自分の宝の地図にする!」という姿は微笑ましかったですねぇ。

自由に旅をしたいセツナですが、カイルから与えられた数々の恩恵によって、国の視点では逃したくない人材になっていて、厄介ごとに関わるとそういう柵が迫ってきて面倒だなぁ、と思いますが。

トゥーリの兄と出会ったことで、ますます竜王への不信が募ったりするし。カイルが土地の呪いを残した理由も気になるしで、いつかこの問題には対峙することになるんだろうなぁ。

刹那の風景2 68番目の元勇者と竜の乙女

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「冒険者ギルドの理念は、人々の命を平等に守るため。ギルドの医療院の理念は、人々の命を平等に救うため。……僕は、この二つの理念を気に入ってるんです」

 

クットという国を目指して、それまでいたガーディル国を出立したセツナと弟子のアルト。

獣人によって住みやすい環境ではなかったこともあって、ガーディル国よりの地域ではゆっくりできなかったけれど、少し離れてからはアルトが植物図鑑で気になる実について調べたり、釣りを一緒に楽しむ時間を取るようになって。

 

のんびり楽しい師弟での旅を楽しんでいましたが……釣りの途中に針をひっかけてアルトが悲鳴を上げてしまったのを聞きつけた獣人たちが、誤解からセツナに突っかかってくる展開にもなりましたが。

相手がいきなり手を出してきたのはアレでしたけど、アルトという存在がセツナの重石になって、即座に戦闘とはならなかったのは良かったですねぇ。

こっちの事情知らないとはいえ、アルトに獣人の国サガーナへ行けばよいと提案したりしてくる獣人傭兵のカーラ達の物言いにはイラっとする場面もありましたが。

……まぁカイルから託された知識とかもあって「復讐を誓って動いている、滅びた国出身の獣人ですね」と指摘したりしてるし、セツナも時に火に油注ぎがちなところあるしな……。そこは相手が喧嘩腰だったというのもあるか。

 

ちょっと物騒な出会いがありつつ、お店の練習をしてアルトにお金の使い方を教えたりしていて、セツナがしっかり師匠してて良かったですね。

彼もまたずっと病室暮らしだったので至らぬ部分もまぁありますけど、少しずつ成長していってるのが良い。

新しい街に入ってギルドへ挨拶をしたら、ガーディルのギルドマスターから申し送りが来ていたり、依頼で知り合った黒ランクのアギトからの個人依頼が来ていたりして。セツナの薬によって、助けられる命が増えるかもと交渉が始まったりもしてましたが。

現状見えている範囲だとギルドは理念を守ってる良い組織みたいですし。カイルが所属を勧めたのはこのあたりも影響していたのかな。

 

そして新天地でセツナは運命的な出会いをすることになっていましたが……。

驚きの急展開ではありましたね。彼女は彼女で色々と事情を抱えていて、後に響いてきそうな気配こそありますが。抱え込みがちな部分とか似ているし、お似合い感はある。

刹那の風景1 68番目の元勇者と獣人の弟子

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「俺は、生きるべきだと思う。様々なものを見て、触れて……生きていく喜びをその手に掴むべきだ。もちろん、楽しいことばかりじゃねぇだろうし、辛いことも多いはずだ。この世界は、俺達の世界じゃねぇ。価値観自体が全く違う。正直、生きやすいとは思わない」

不安要素も隠さず、愚直にカイルは、ただ話した。

「だが、それでも……美しいと思えるものも、心震える瞬間に出会えることもある。そういった経験を、お前に体験してほしいと思うよ」

 

生来体が弱く入院生活を送っていた刹那は、両親の経営する病院の一室にずっと入院を続けており……そのまま24年の生涯を終えた。

彼の魂は異世界の勇者として召喚されることになって、新たな人生を得られたのですが。

病弱なままなことは変わらず。68番目の勇者として勝手に招いておきながら、使えないと判断された刹那はほぼ軟禁状態に置かれることになってしまって。

 

2度目の生は、生きながらにして死んでいるようなものだった。さらには69番目の勇者が召喚された、なんて噂も流れてきて……。

このまま死んでしまうのか、というタイミングで23番目の勇者だったというカイルが現れて。彼は刹那の記憶を覗いてどういう状況にあるのかを把握。

このままじゃ殺されるだろう刹那に、カイルはその身を挺して現状を打破する力と知識を与えてくれることになって。

 

日本出身の杉本刹那ではなく、異世界でただのセツナとして生きていくことを決意したことで、物語が動き出すことになります。

カイルには強力なアイテムとかも託されて。セツナ自身が力の扱いに習熟しきってないという問題こそあれど、スペック的にはかなり高くソロでも問題なく生きていける環境を得られた。

生まれてからずっと病室暮らしだったセツナが、外の世界へと歩み出していくのが面白いシリーズですね。彼にとっては見るもの感じるものすべてが新鮮である事だったり、カイルの知識だとかを与えられていることだったり、そもそも死に瀕していた状況で達観した部分がある事や性格的な問題だったりが影響して、好奇心旺盛ながら大人びてるんですよね。

 

冒険者ギルドへの登録をして、戦闘も出来るけれど登録上は「職業:学者」にしてますし。馬鹿にするような言動があっても、自分の本当に大事なものを侮辱するものでなければスルー出来る心の広さもありますし。競争心が見えない、ということでくすぶっている若手に文句つけられたりする御約束もまぁありましたけど。

概ね良い出会いをして異世界を満喫していく中で、サブタイトルにある「獣人の弟子」をとることになって。庇護する相手が出来たことで、ただフラフラしているだけではいられなくなったのがセツナに良く作用してくれるといいですね。

 

セツナを召喚したガーディルという国は、勇者の扱いが大分アレだし。それを69回も繰り返しているので、上層部は大分ヤバそうな気配を感じています。

巻末に追憶として、69番目の勇者に近しい人物のエピソードが描かれていますけど、どうにもなぁ……。


極振り拒否して手探りスタート! 特化しないヒーラー、仲間と別れて旅に出る5

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「もちろんだよ! ルークなら大丈夫だよ!」

 

アルノルンの土地を離れたルーク。

黄金竜の爪のバッチは持っていたけれど、あそこがシューメル公爵とズブズブの関係なのは広く知られているため、他の地域に移るにあたって隠すことにして。

カナディーラ三公爵の一人、アルメイル公爵が収めるアルッポという街に、ダンジョンを目当てにやってきたルーク。

 

以前入った事のあるダンジョンとは違うタイプの調査と、色々と流されてきたけれど久しぶりのレベルアップをしようとしていて。

ターンアンデッドを使えることもあって、アンデッド系統のモンスターが出てくると楽が出来て良いですねぇ。浄化の魔法が使えることもあって、身ぎれいにするのになれすぎていて、ゾンビ系統の悪臭がするモンスターとの戦闘に制限、というか難が生じているのは彼ならではの問題でしょうが。

 

色々と秘密にしておきたい手札が多すぎて、結局ソロの冒険者として活動していたルークですが。相性の良さもあって、着々とダンジョンのより深い階層へと踏み込んでいってたわけですが。

ダンジョンがある、ということでアルッポの街は発展していて……それゆえに、アルメイル公爵としてはそれが攻略されてしまっては困る、という問題があって。

ダンジョン攻略という名声を得ると同時に、悪評もついて回るというなんとも厄介な場所であるというのも、ルークはだんだんと知っていくわけです。

 

そんな中で様々な思惑が渦巻いた結果として、ダンジョン攻略のために動き出す集団が複数現れて。

所属が違う団体も乗り込んできていたので、どうしたって隙が生じやすい状況だったこと。先輩冒険者たちとの交流だったり、気まぐれの人助けの結果として、新たな神聖魔術や貴重な情報だったりを入手できたこと。

そういうアレコレが重なって、ルークも改めてダンジョン攻略を目指し……公にできない功績とは言えそれを成し遂げたのはお見事でした。

また旅の空になることになったルークでしたが、次はどんな騒動に出くわすんでしょうかね。

異世界転移、地雷付き。8

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「“明鏡止水”、お前たちのような優秀な冒険者が我が領地に存在することは、私としても誇らしく、ありがたい。あまり無理をせず、今後も末永く活躍してくれ」

 

ケルグの町での聖女教団をめぐる騒動を乗り越えたナオたち。

騒乱の中で父を亡くした獣人の姉妹メアリとミーティアを保護することを決め、ラファンへ連れ帰ることを決めたわけですが。

目覚ましい活躍をしたのだから、と帰還する前に領都ピニングにいってネーナス子爵にあっていくように、ケルグの支部長から要請を受けることになって。

 

ランク五の冒険者とは言え、流石に即日領主に会えるわけはなく。

数日ほど微妙な空き時間が発生してしまうことに。エールが美味しいらしい、という情報を近所のおばさんがたの話を覚えていたミーティアから聞いて興味をもって。

ちょっとだけ仕入れたり、空き時間にできる依頼を受けたらそこに関連しそうな問題があったりとかもしましたが。

美味しい料理を食べたり、絵本を買ってもらったりして、可愛がられているのを満喫してウキウキしてるミーティアが微笑ましくて和みましたね。

領主との対面も問題なく終了していましたし。若く礼儀も完ぺきではない冒険者相手でも配慮してくれる、良い領主様でホッとしましたね。

 

そしてラファンに帰還したところ、メアリとミーティアも冒険者になりたいと言い始めて。養われるだけではなく、自分たちでもできる事をしようとする心意気や良し。

しばらく家を空けていたことで、草木が生い茂ってしまっていたりする問題もありましたが。資金に不安がないから、と孤児院に草刈りの依頼を出したりもして。少し前に銘木を採取してから家具を買って稼いだお金を還元してましたが、これもまた街への還元の一環でもありますよね。

 

今回収録のサイドストーリーは「焦れったい二人」。ユキ視点で、幼馴染ということで特に距離の近いナオとハルカの関係が進展するのか、ナツキを交えてつついてみる話。追及されたくないから、と話題を別方向に逸らそうとしたりしてるハルカ可愛いな。

あとは、明鏡止水の噂を聞いて会いに行こうと動き始めた「翡翠の翼」の4話も収録されていましたね。

 

森よりも警戒する範囲が絞れるから、と新人冒険者メアリとミーティアを連れてダンジョンに挑む事にしたナオ達。

一緒に行動する以上ルーキーと同じ装備じゃ危ないと良い防具を装備させてたのは、ナオたちらしいなぁという感じ。保護者だから、というの抜きにしても安全マージンは取る方でしたしね。

メアリとミーティア、どっちも素質はあったようですし解体も忌避せず参加していたので、いずれ大物になりそうな気配はあります。

 

階層ごとに様相の変わるダンジョンで、新人2人を連れていてもナオたちなら超えられる程度の魔物が多いものの、どうしたって時間はかかって。ただ、食用の魔物も多くミーティアが楽しんでいたのは何よりか。

初心者の冒険に都合の良いダンジョンすぎる、という話題も出ていましたが。「都合の良いダンジョンがあったから、ここに転移させた」のが正解なんじゃないかということに。まぁ、地雷作ったりもしてたけどなんだかんだフォローもしてるからな、アドヴァストリス様。



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 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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