気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。

感想(文芸)

結界師の一輪華2

ico_grade6_4

「く~。朔はその性格直した方がいいわよ。モテなくなるんだから」

「安心しろ。俺には華以外は目に入ってないから問題ない」

「だから、そういうのをやめてってば!」

 

柱石を護る五家。オールラウンダーの一ノ宮に対して他の四家は、呪具生成、守護、攻撃、呪いなどの得意分野があるとか。

一ノ宮は特に力があり術者協会を管轄内に設置されてたりするみたいですが、協会の管理などは五家が共同で厳重に行っていた……ハズだった。

しかし、そこに侵入者が入り呪具が盗まれる事件が起きて。

 

さらに才能ナシとみなされていたヒロインの華が、本家の当主の妻に選ばれたことで彼女の実家である一瀬家はピリピリしてたとか。

才能に目覚めたときに、これまで迫害してきたくせに手のひら返されるのが気に食わないって力を隠してきた華ですから、当然実家への便宜とか全くしなかったそうで。

それは両親の自業自得だからいいんですけど、そこで反省できないあたり愚かしいというか。良いように扱える華が居なくなって、今度は葉月を標的にするのが最悪です。

 

元々朔の婚約者の座に葉月を滑り込ませる予定だったが、それが失敗になった。つまり、葉月の結婚相手に関してはぽっかり空いてしまったわけですよね。

そこで懲りずに自分たちの都合で婚約者決めてくるんだからもう……何一つ学んでない。

今回はそんな両親たちが過去にやろうとしたことと、その時の葉月の決断を知ることで華が行動を起こせたわけですし。改心してなかったから見切りもつけやすかったという点だけは、双子にとって良かったか。

 

華に惚れた朔がしっかりアピールしてますが、だまし討ちで結婚続行したのと、プレゼントされた別荘は確かに海が見えるけど、定期的に妖魔が寄ってくるから掃除が必要だとか、もうちょっと手段選びましょう感がある。

いやまぁ、当主としての矜持はしっかりしていて、手が回りきらない分を実力を認めた華に任せたいって部分もあったみたいなのはありますし。

 

あくまでこの結婚は将来の仕事とかの面倒を見てもらう契約結婚だ、って意識が強い華相手だからアピール強くしないと、それこそ離婚されかねないってのも分かりますが。

実際、別の五家関係者から「金を積むから別れてほしい」と言われたときに、頷きかけてましたからね華……。

それからも絡んでくる朔を狙っていた令嬢と、最終的には打ち解けているあたり華の快活な性格が良い方向に働いてほっとしました。

ついに華の実力について公になったり環境はどんどん変化していくというか、華は認めないだろうけど大分逃げられなくなってそうな感はある。

鬼人幻燈抄 大正編 終焉の夜

ico_grade6_4

「いつか分かると言ってくれた。嘆くなって。分かる時が、わたしにも先があるって、信じてくれた」

(略)

「だからもう、暗い場所には戻らない。わたしは、帰る……わたしのこれからを信じてくれた人のところに」

 

保護された溜那は、それは大事にされているみたいですけど。

……これまで何も持っていなかったからこそ、大事にされることに戸惑いを覚えて。そんな彼女を信じて、大切にしてくれる甚夜と出会えたのは本当に良かったなぁと思いました。

今回、甚夜がなぜ赤瀬の家で使用人をしているのか明かされる過去編もありましたが。

希美子の父である充知とのやり取りが結構好きですねぇ。

 

夜遊びしていた青年が怪異に遭遇し、甚夜に助けられ……しかし、その夜に姿を消した友人がいて。別の友人と捜索に繰り出してみれば、人食いとなった南雲と出くわすっていうんだから、運が悪いにもほどがある気もしますが。

甚夜との縁が出来て生き延びたうえ、自分の娘の守護を頼めることにつながるんだから、こう意外と持ってる説もある。

最初に出会ったときは去ってしまったけど、その時に果たされなかった約束を口実にして駄目元だろうと呼びかけるシーンとか良いですよね……。

 

格好良さでいうと、芳彦くんもなかなか。

吉隠の策略に囚われてしまった彼でしたけど、その状況下で出来ることをしていましたし。「はい。僕はちゃんと選びました」って言うあり方が、本当に良い。

戦闘能力こそありませんけど今回南雲に与した、「鬼」という種族としての在り方に迷い続けていた井槌や偽久に比べると、覚悟の決まり方がすごいですよね。

強制的に終わりを区切られたから、というのもあるとは思いますけど。

 

甚夜がこれまでの積み重ねを経て、南雲叡善を打倒したのは良かったですが。

吉隠に逃げられたのだけが痛いというか。愉快犯が面倒なアイテム持って行ったのがなぁ……。

結界師の一輪華

 ico_grade6_4

「確かにかなり強引だったけど、選んだのは私。いつか後悔する時が来るかもしれないけど、今はしてない。だから朔は私に後悔させないでね」

 

一般には秘されているが、妖魔とそれに対抗する術者が存在する世界。

島国である日本は5つの柱石によって支えられており、柱石ごとに5つの家系が守護していた。

分家の1つである一瀬家に生まれた華は、双子の姉である葉月に比べて才能がないことから、姉の出涸らしなどと呼ばれ、家族からの扱いもかなり悪かった。

それでも努力を重ねる華の事を見て密かに支えてくれる使用人が居てくれたおかげで、家族からの評価を求めない自立した少女に育ったんですよね。

 

無能と蔑まれ続けた華でしたが……15歳の誕生日の時に、なぜか能力が覚醒。

両親が可愛がっていた姉はおろか、そこらの術師とは比べ物にならない領域にまで到達したのですが。

この時にはもう彼女は周囲に期待する事がなくなっていて。今更手のひらを返して優しくされるのなんてお断り! と力を隠す方面の努力をしていくことになります。

最初に作った蝶の式神も喋れるようになったし、その後に人型の式神を2体生み出して、負担を感じてなさそうな当たり、華の能力強すぎてそこは若干違和感があります。

どうしてそれだけの力が今まで表に出てこなかったのか、とか。強大すぎるからこそ、身体が成長してからでないと使う事が出来なかった、とかいくらでも理由は付けられそうですけどね。

 

基本的には力を伏せていて、それは人間の術士には通じていたみたいですけど妖魔には通じず。

華は密かに襲撃してきた妖魔を狩り続けていたようです。ある日それを、宗家の御曹司・朔に見つかってしまって。能力の高い妻を求めていた彼から合格点を出され、話し合いの末に契約結婚をすることになります。

……もっとも、2人の関係が冷え切っているというわけでもなくて。そこにはしっかりと信頼があり、フォローしあうことで遭遇した事件を解決も出来てるので、結構いいコンビに見えます。

朔の方は華に惹かれて、もう彼女を逃がすつもりなさそうですし、早めに覚悟決めた方がいいんじゃないかな……。

5分で読書 全力の「好き」をキミにあげる

ico_grade6_4

「そもそも、らしいとからしくないとか、本当は他の人が決められることじゃないと思うし……その人がやりたくてやってることなら、全部その人らしいんじゃないかな」

「……うん。そうかも」

 

KADOKAWA刊行のアンソロジー『5分で読書』の1冊。

アンソロなので、テーマに沿って複数作家さんの短編が掲載されているのが基本になるわけですが。

この『全力の「好き」をキミにあげる』は1冊まるごと、藤崎珠里先生の作品で構成されています。

小説家になろうで両片思い系の恋愛短編を多数投稿してる作者さんで、以前から読んでいたのもあって、書籍化はめでたく嬉しいものですね。

 

2作だけ前後編の構成で、残りはそれ単体で読める形なので、1編ずつじっくり読んでいく形をとれるのもいいですねー。

糖度高い作品過剰摂取しすぎると倒れちゃいますからね、自分のペースで読めるのはいいわ。

 

好きな女の子と共通点が多いから、と相談相手になっているけれどそれなら自分の事を好きになってくれてもいいのに、と悩む少女を描く『鈍感なのは』。

一目ぼれした勢いで告白して、それ以降もアピールを続けた少女の想いの強さが語られる事になる『伊吹くんに、毎朝一番におはようって言える人になりたいです。』

『片思い中の幼なじみとの添い寝、その顛末について 前/後編』というタイトル通りの作品などなど。

どの物語でも恋心を抱えた少年少女が可愛らしく、読了後幸せになってほしいなと思える要素で溢れている、良質な短編集でしたね。

 

特に気に入ったのは『㊙委員長の楠田くんは、ファミレスでバイトをしている』で、バイトしている委員長を発見してしまい通いづめていた早川さんが、途中でちょっと冷静になって距離を取ろうとしたら、逆に委員長から踏み込んでくる流れが良かった。

もう一つの前後編構成『どの本にもいない』に出てくる読書好きの少女、結音ちゃんも小動物見てるような可愛さがありました。

いやぁ、甘かった。どの作品も満喫しました。

鬼人幻燈抄 大正編 紫陽花の日々

 ico_grade6_3h

「変わるための努力があれば、変わらないための努力もあるということです。どちらが正しいではなく、どうありたいかでしょう」

 

時代は流れ、街に灯りが増え銃火器が広まったことによって、鬼の脅威は遠ざかった。

けれど退魔も鬼も、ただ流されるだけでは終わらず、足掻こうとするものもいた。それ自体は、一概に悪いとは言えないですよね。家が没落しようって時に、対策しないわけにもいかないでしょうし。

ただし、今回南雲叡善が画策した計画は自作自演の極致みたいなものですし、多くを利用して喰らっていく破滅的なものなわけで。認められないのは良くわかる。

 

南雲家が主催したパーティーに、秋津染吾郎を継いだ宇津木が来て巻き込まれて。

そこに甚夜がやってくるシーンは本当に熱かったですねぇ。彼は南雲の計画を潰そうと目論んでいたものの、なぜかその隣にはマガツメの娘・向日葵が居て。

状況は分からないながら「こいつとあんた、どっちにつくかなんぞ端から決まってるわ」と甚夜を信じてくれる、四代目の秋津が本当に格好いいんですよ。稀代の退魔と呼ばれるようになったのも頷ける。

 

敵の計画の核となる少女、溜那は確保したことで状況を停滞させることは出来ましたが。

それは逆に、敵が動くときは一気に決着を付けようとするってことで、中々難しいというか。

甚夜が世話になっている家の当主は彼の味方だけど、先代当主は南雲に協力的で。これを切って捨てたら、逆にそれを弱みとして突かれて捕まりかねない。

剣によって簡単に解決できない問題が増えてきたというか、南雲とそれに与する鬼の一人吉隠が、それぞれの思惑で動いているのがこう、毒を撒かれてるような感じがして苦い気分になりますねぇ。

吉隠の能力があまりに特殊過ぎるというか、嬲るタイプの鬼で苦手です。早く蹴散らしてほしいですけど、こういうタイプの敵って無駄に長生きするんだよな……。

鬼人幻燈抄 明治編 君を想う

 ico_grade6_5

「さらばだ。もう逢うこともあるまい」

「あほ、こういう時はいつかまた逢おうって言うもんや」

 

「逆さの小路」という怪異の噂について調べていた甚夜は、気がついたら鬼の異能も行使できない状態で白雪と対峙していた。

鈴音も居る、懐かしの光景。夢の様に、幻の様にその光景を見ていたら、かつてと違う言葉が飛び出してきて……彼は過去の未練を断ち切り、現世に帰ります。

存在しないと断言した老人が語った、噂話の真相が重かったなぁ。甚夜の調査時代はそこまで苦戦もせず、あっさり解決した部類になりそうですが、心には刺さる。

 

そしてまた時は流れて、野茉莉も成長して。作中ではもう結婚していてもおかしくない年頃だけれど、かつての約束もあり、彼女は自分の意志で甚夜の傍にいることを決めて。

父親とかの視点からは、思う所もあるようでしたけど。結局は、野茉莉を尊重して受け入れてる良い親子関係だなぁ、と本当にほっこりしました。

だけど、平穏は長く続かず……かつて広まった「人を鬼にする酒・ゆきのなごり」。それと同じ名前、ラベルの酒が京都でも流通し始めて。

実体は普通の酒ってことでしたけど、これはつまりマガツメの策略が迫っている表れでもあって。

 

甚夜がマガツメの下に踏み込みつつ、染吾郎達に助力を要請している辺りは成長を感じましたね。

三代目が甚夜の親友として、命を賭けて矜持を示してくれたシーンが本当に好きなんですよ。最初は親友がこれ以上の重荷を背負わないように排除しようとして、それが叶わないとしても人としての意地を見せるべく言伝を残していた。あぁ、本当に得難い友であったことよ。

 

親友を失った後に、娘にまで手を伸ばしてくるあたりマガツメの策略の悪辣さが光ります。……悪辣であろうとした結果ではなくて、本人も言っていた通り甚夜がどういう選択をするのか見たかったので、極限の状態を用意したって感じではありますが。

明治編の営みが温かかっただけに、それがどんどん崩れて行ってしまったの、本当に悲しかったなぁ。それだけ、丁寧に描いてくれていたからこそ、喪失の痛みがあるんですけど。もどかしくはある。

 

巻末の幕間「未熟者の特権」では、京都に残った平吉のエピソードが描かれていて、知りたかったその後の様子がある程度見られて本当に嬉しかった。あの場所に甚夜が居ないのが、どうしようもなく切ないけれど。

「出会いは、別れのためにあるんやないぞ。いつかぶん殴ったるから首洗って待っとけよ」

という元少年の誓いが、とても良い。

鬼人幻燈抄 明治編 夏宵蜃気楼

ico_grade6_4

「人は鬼程強くはないし、長く生きることはできひん。そやけど僕らは不滅や」

(略)

「お、その顔、そうは思えんって感じやな。ほんならええよ。僕が人のしぶとさを証明したるわ」

 

さらに時は流れて。野茉莉が思春期になったからか微妙に甚夜と距離がある感じに。

甚夜の方も対応を測りかねて、対応に苦慮しまくっているのは、不器用な部分のある彼らしいなぁと思いましたが。

 

野茉莉も決して父親の事が嫌いになった訳では無くて、だけど思ったように振る舞えず悩む羽目になって。

……表題の「夏宵蜃気楼」のエピソードで、彼女は長い夢を見て。それによって抱えていた蟠りも解けることになったのは何よりでした。

福良雀と蛤の話がこうやってつながってくるの、いいですよねぇ。長い時代を描いている作品ならではの味わいがあって好き。

 

甚夜の鬼狩りに関しても、地縛との決着や向日葵たちが甚夜を「おじさま」と呼ぶ理由が判明したり、かなり面白かったですね。

シリアスばっかりじゃなくて「余談・鬼人の暇」の昼で描かれていた「あんぱん」の話みたいに、微笑ましい話もあるのが素敵。

娘と過ごす時間を作るために表向きの本業である蕎麦屋を休みにしてしまう甚夜の親バカっぷりも好き。

 

野茉莉に想いを寄せてる染五郎の弟子、平吉くんがこんな逞しい父親に自分を認めさせないと行けなくて呆然としてたのにも笑ってしまった。

でも「四代目は平吉以外認めない」と甚夜に言わせるくらいには、認められてもいるんですけどね。鬼と退魔でありながら、良い関係を気付けているのが好きなんですよ。

 

スカーレット・ウィザード6

 ico_grade6_4

「俺にとって大事なのは飛ぶことそのものじゃない。前にも話しただろう? 次に宇宙に出ていく時は、あの女と一緒にだと」

 

ジャスミンが眠りにつく前、ケリーと共に子育てしてる時のエピソードが笑う。

蹴り上げて「高い高い」するんじゃないよ、この夫婦は! それ以外にも、クインビーに乗せてみたりと色々と無茶してますよねぇ。

この契約結婚についてジャスミンがどう思っていたのか、も更に描かれていましたが。遺書でも語られていた通り、ケリーの事好きだったんだな……と言うか。大切にしていたのが良いですねぇ。

女王の真意をたまたま聞かされていた海賊ラナートからは、色々言われてましたが。「幸運を祈る」「捕まるんじゃねえぞ」と言って別れる二人が好き。

 

ジャスミンの死後、次代の後継者として育てられる筈だったダニエル。

しかし、彼は経済の勉強よりも宇宙船の操縦技法を学びたいと言い始めて。その目的の一つに、キングと呼ばれる海賊へのあこがれがあるっていうんだから、凄まじい。

しばらく活動していないのに、いやだからこそなのかもしれませんが、彼の名が今も残り続けてるのは読者視点だと嬉しいですね。

身分を捨てて自分のために行動した彼の背中を押すために、公的に死んだことにする父親の決断力がまた愉快です。

 

宇宙を離れてからも、なんだかんだ総帥業をこなしてるケリーのスペックの高さも見逃せません。

新しい技術開発に関して、宇宙航海に効果的ってのを抜きにしても意欲的ですし。門に頼らない長距離跳躍を可能にする機械、とかとんでもない物開発するなぁ。

それに伴って、新しい発見がされたりと影響も大きいようですけど。海賊業が活発になったりと予期せぬ方向にも作用したのは、技術が魅力的すぎる故、だろうか。

 

さらに宇宙に出ていった息子の傍に、幽霊星の住人が居るという情報まで出て来て。

ルゥのトンデモ具合を受け入れられるケリーの度量がかなり好きです。息子は常識人なのに、父親はどうしてこうなの? みたいな困惑具合が見ていて楽しい。

スカーレット・ウィザード5

ico_grade6_5

「さすがだ……魔法使い」

(略)

「恐るべき非常識……!」

 

クーア・キングダムが駅爆発に巻き込まれ、総帥・副総帥ともに死亡。息子だけは奇跡的に助かった、というシナリオでジャスミンの敵、クーア財閥幹部の五人が声明を発表。

それによって敵の姿が明確になって……ここで、実は私達は生きていた、と名乗りを上げるのは簡単だけれど、息子の命を人質に財閥を要求して来ることなどが考えられて。

秘密裏に奪還するための作戦を考え、ジンジャーや連邦主席のマヌエルまでも巻き込んで、大規模な「映画撮影」という建前で敵を呼び寄せるのが面白いですね。

 

前回の一件から保護していたクライストをアレンジャーとしてこき使うことにしたり。

ジャスミンがゼウスをたらしこんでいることを有効活用したり……ケリーはケリーで知り合いの海賊に声をかけて戦力にしてるのが面白い。ジャスミンが「エキストラ」呼びするのが本当に好きなんですよねぇ。

 

この巻は愉快なシーンが多いんですけど、先代財閥トップのマックスが作ったクーア・キングダムに仕込んでいた「悪戯」もかなり笑えますよね。事情を知っていなかった面々が絶句したのも頷ける。

それを活用するための手段をケリーとダイアナが用意する事になっていましたが、それがウィノア近郊の門を活用するってものだったので、4巻で過去のエピソードが出てきたのこれに繋げるための伏線だったのか……という感じで驚き。

 

無事に奪還したあとのエピソードも描かれていましたが……ジャスミンもケリーも、歯に衣着せないタイプなのに、肝心な言葉は告げてないんだもんなぁ、全く。今度は捕まえて見せると決意したケリーが好きです。

鬼人幻燈抄 明治編 徒花

ico_grade6_4

「……ねぇ。葛野君は今、幸せ?」

(略)

「当たり前だろう?」

 

時は流れて明治。甚夜は、染五郎の伝手を頼って京都に渡っていた。

そこで娘となった野茉莉を育てながら蕎麦屋を営みつつ、鬼狩りを続けていたものの……廃刀令などが出されたこともあり、帯刀しての活動がしにくくなってもいた。

 

それでも、刀を捨てられるわけもなく、変わらないままでいましたけれど。

同じように刀に生きる「兼臣」を名乗る女性に、鬼退治の助力を乞うてきて。そこまで強くはないものの力を持った地縛という鬼を取り逃がした後、兼臣が居候する羽目になって、ふくれっ面になっていた野茉莉が可愛かったです。

 

 

余談の「林檎飴天女抄」が、作中でもかなり好きなエピソードなんですよね。

現代に生きる女子高生の薫が、明治時代にタイムスリップしてしまって甚夜に保護されることになるんですけど。

明治時代に天女呼びをした少女と交わした約束を、長い時間過ぎても覚えているのが尊いんですよねぇ。あとは神社の甚夜を知ってるちよさんの事とかも含めて好きです。WEBでも何度も読み返してます。

 

「楽しいのはいけないことか?」

「そんなことないよ。でも苦しんで頑張ってる人の方がすごいと思うから」

 

そういう風に、努力を続けている友人に比べて自分は、と思ってしまう薫は真面目で、だからこそ迷ってしまうんだろうなぁと思います。

 

けれど、やっぱりこの巻で一番重要なのは、副題にもなっている「徒花」のエピソードでしょう。

廃刀令の時代に現れた、刀に生きる鬼。名を聞くようにしている甚夜のこだわりに対しての応答と、それを受けた甚夜の反応が好きなんですよねぇ……。痛くて、切なくて。それでも意味のある戦いであったなら、せめてもの慰めになってくれたことでしょう。

巻末には「余談:続・雨夜鷹」を収録。後の世に甚夜が『雨夜鷹』の「行間には文字よりも大きな心が詰まっていた」と読み解いているのが素敵でした。

 

プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
 新刊・既刊を問わず読んだタイミングで記事を作成しております。
 コメント歓迎。ただし悪質と判断したものは削除する場合があります。

メールアドレス
kimama.tyaka@ジーメール なにかご依頼等、特別連絡したい事柄はこちらにお願いします。
メッセージ
アーカイブ
カテゴリー
記事検索
最新コメント
  • ライブドアブログ