気ままに読書漬け

とりあえず気が向いた時に読んだ本の感想などを上げてます。ラノベメインに、コミック、TRPGなど各種。推しを推すのは趣味です。 新刊・既刊問わず記事を書いてるので、結構混沌しているような。積読に埋もれている間に新刊じゃなくなっているんですよね。不思議。ま、そんなノリでやっているブログですが、よろしく。

単行本

鬼人幻燈抄 大正編 終焉の夜

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「いつか分かると言ってくれた。嘆くなって。分かる時が、わたしにも先があるって、信じてくれた」

(略)

「だからもう、暗い場所には戻らない。わたしは、帰る……わたしのこれからを信じてくれた人のところに」

 

保護された溜那は、それは大事にされているみたいですけど。

……これまで何も持っていなかったからこそ、大事にされることに戸惑いを覚えて。そんな彼女を信じて、大切にしてくれる甚夜と出会えたのは本当に良かったなぁと思いました。

今回、甚夜がなぜ赤瀬の家で使用人をしているのか明かされる過去編もありましたが。

希美子の父である充知とのやり取りが結構好きですねぇ。

 

夜遊びしていた青年が怪異に遭遇し、甚夜に助けられ……しかし、その夜に姿を消した友人がいて。別の友人と捜索に繰り出してみれば、人食いとなった南雲と出くわすっていうんだから、運が悪いにもほどがある気もしますが。

甚夜との縁が出来て生き延びたうえ、自分の娘の守護を頼めることにつながるんだから、こう意外と持ってる説もある。

最初に出会ったときは去ってしまったけど、その時に果たされなかった約束を口実にして駄目元だろうと呼びかけるシーンとか良いですよね……。

 

格好良さでいうと、芳彦くんもなかなか。

吉隠の策略に囚われてしまった彼でしたけど、その状況下で出来ることをしていましたし。「はい。僕はちゃんと選びました」って言うあり方が、本当に良い。

戦闘能力こそありませんけど今回南雲に与した、「鬼」という種族としての在り方に迷い続けていた井槌や偽久に比べると、覚悟の決まり方がすごいですよね。

強制的に終わりを区切られたから、というのもあるとは思いますけど。

 

甚夜がこれまでの積み重ねを経て、南雲叡善を打倒したのは良かったですが。

吉隠に逃げられたのだけが痛いというか。愉快犯が面倒なアイテム持って行ったのがなぁ……。

5分で読書 全力の「好き」をキミにあげる

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「そもそも、らしいとからしくないとか、本当は他の人が決められることじゃないと思うし……その人がやりたくてやってることなら、全部その人らしいんじゃないかな」

「……うん。そうかも」

 

KADOKAWA刊行のアンソロジー『5分で読書』の1冊。

アンソロなので、テーマに沿って複数作家さんの短編が掲載されているのが基本になるわけですが。

この『全力の「好き」をキミにあげる』は1冊まるごと、藤崎珠里先生の作品で構成されています。

小説家になろうで両片思い系の恋愛短編を多数投稿してる作者さんで、以前から読んでいたのもあって、書籍化はめでたく嬉しいものですね。

 

2作だけ前後編の構成で、残りはそれ単体で読める形なので、1編ずつじっくり読んでいく形をとれるのもいいですねー。

糖度高い作品過剰摂取しすぎると倒れちゃいますからね、自分のペースで読めるのはいいわ。

 

好きな女の子と共通点が多いから、と相談相手になっているけれどそれなら自分の事を好きになってくれてもいいのに、と悩む少女を描く『鈍感なのは』。

一目ぼれした勢いで告白して、それ以降もアピールを続けた少女の想いの強さが語られる事になる『伊吹くんに、毎朝一番におはようって言える人になりたいです。』

『片思い中の幼なじみとの添い寝、その顛末について 前/後編』というタイトル通りの作品などなど。

どの物語でも恋心を抱えた少年少女が可愛らしく、読了後幸せになってほしいなと思える要素で溢れている、良質な短編集でしたね。

 

特に気に入ったのは『㊙委員長の楠田くんは、ファミレスでバイトをしている』で、バイトしている委員長を発見してしまい通いづめていた早川さんが、途中でちょっと冷静になって距離を取ろうとしたら、逆に委員長から踏み込んでくる流れが良かった。

もう一つの前後編構成『どの本にもいない』に出てくる読書好きの少女、結音ちゃんも小動物見てるような可愛さがありました。

いやぁ、甘かった。どの作品も満喫しました。

鬼人幻燈抄 大正編 紫陽花の日々

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「変わるための努力があれば、変わらないための努力もあるということです。どちらが正しいではなく、どうありたいかでしょう」

 

時代は流れ、街に灯りが増え銃火器が広まったことによって、鬼の脅威は遠ざかった。

けれど退魔も鬼も、ただ流されるだけでは終わらず、足掻こうとするものもいた。それ自体は、一概に悪いとは言えないですよね。家が没落しようって時に、対策しないわけにもいかないでしょうし。

ただし、今回南雲叡善が画策した計画は自作自演の極致みたいなものですし、多くを利用して喰らっていく破滅的なものなわけで。認められないのは良くわかる。

 

南雲家が主催したパーティーに、秋津染吾郎を継いだ宇津木が来て巻き込まれて。

そこに甚夜がやってくるシーンは本当に熱かったですねぇ。彼は南雲の計画を潰そうと目論んでいたものの、なぜかその隣にはマガツメの娘・向日葵が居て。

状況は分からないながら「こいつとあんた、どっちにつくかなんぞ端から決まってるわ」と甚夜を信じてくれる、四代目の秋津が本当に格好いいんですよ。稀代の退魔と呼ばれるようになったのも頷ける。

 

敵の計画の核となる少女、溜那は確保したことで状況を停滞させることは出来ましたが。

それは逆に、敵が動くときは一気に決着を付けようとするってことで、中々難しいというか。

甚夜が世話になっている家の当主は彼の味方だけど、先代当主は南雲に協力的で。これを切って捨てたら、逆にそれを弱みとして突かれて捕まりかねない。

剣によって簡単に解決できない問題が増えてきたというか、南雲とそれに与する鬼の一人吉隠が、それぞれの思惑で動いているのがこう、毒を撒かれてるような感じがして苦い気分になりますねぇ。

吉隠の能力があまりに特殊過ぎるというか、嬲るタイプの鬼で苦手です。早く蹴散らしてほしいですけど、こういうタイプの敵って無駄に長生きするんだよな……。

鬼人幻燈抄 明治編 君を想う

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「さらばだ。もう逢うこともあるまい」

「あほ、こういう時はいつかまた逢おうって言うもんや」

 

「逆さの小路」という怪異の噂について調べていた甚夜は、気がついたら鬼の異能も行使できない状態で白雪と対峙していた。

鈴音も居る、懐かしの光景。夢の様に、幻の様にその光景を見ていたら、かつてと違う言葉が飛び出してきて……彼は過去の未練を断ち切り、現世に帰ります。

存在しないと断言した老人が語った、噂話の真相が重かったなぁ。甚夜の調査時代はそこまで苦戦もせず、あっさり解決した部類になりそうですが、心には刺さる。

 

そしてまた時は流れて、野茉莉も成長して。作中ではもう結婚していてもおかしくない年頃だけれど、かつての約束もあり、彼女は自分の意志で甚夜の傍にいることを決めて。

父親とかの視点からは、思う所もあるようでしたけど。結局は、野茉莉を尊重して受け入れてる良い親子関係だなぁ、と本当にほっこりしました。

だけど、平穏は長く続かず……かつて広まった「人を鬼にする酒・ゆきのなごり」。それと同じ名前、ラベルの酒が京都でも流通し始めて。

実体は普通の酒ってことでしたけど、これはつまりマガツメの策略が迫っている表れでもあって。

 

甚夜がマガツメの下に踏み込みつつ、染吾郎達に助力を要請している辺りは成長を感じましたね。

三代目が甚夜の親友として、命を賭けて矜持を示してくれたシーンが本当に好きなんですよ。最初は親友がこれ以上の重荷を背負わないように排除しようとして、それが叶わないとしても人としての意地を見せるべく言伝を残していた。あぁ、本当に得難い友であったことよ。

 

親友を失った後に、娘にまで手を伸ばしてくるあたりマガツメの策略の悪辣さが光ります。……悪辣であろうとした結果ではなくて、本人も言っていた通り甚夜がどういう選択をするのか見たかったので、極限の状態を用意したって感じではありますが。

明治編の営みが温かかっただけに、それがどんどん崩れて行ってしまったの、本当に悲しかったなぁ。それだけ、丁寧に描いてくれていたからこそ、喪失の痛みがあるんですけど。もどかしくはある。

 

巻末の幕間「未熟者の特権」では、京都に残った平吉のエピソードが描かれていて、知りたかったその後の様子がある程度見られて本当に嬉しかった。あの場所に甚夜が居ないのが、どうしようもなく切ないけれど。

「出会いは、別れのためにあるんやないぞ。いつかぶん殴ったるから首洗って待っとけよ」

という元少年の誓いが、とても良い。

鬼人幻燈抄 明治編 夏宵蜃気楼

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「人は鬼程強くはないし、長く生きることはできひん。そやけど僕らは不滅や」

(略)

「お、その顔、そうは思えんって感じやな。ほんならええよ。僕が人のしぶとさを証明したるわ」

 

さらに時は流れて。野茉莉が思春期になったからか微妙に甚夜と距離がある感じに。

甚夜の方も対応を測りかねて、対応に苦慮しまくっているのは、不器用な部分のある彼らしいなぁと思いましたが。

 

野茉莉も決して父親の事が嫌いになった訳では無くて、だけど思ったように振る舞えず悩む羽目になって。

……表題の「夏宵蜃気楼」のエピソードで、彼女は長い夢を見て。それによって抱えていた蟠りも解けることになったのは何よりでした。

福良雀と蛤の話がこうやってつながってくるの、いいですよねぇ。長い時代を描いている作品ならではの味わいがあって好き。

 

甚夜の鬼狩りに関しても、地縛との決着や向日葵たちが甚夜を「おじさま」と呼ぶ理由が判明したり、かなり面白かったですね。

シリアスばっかりじゃなくて「余談・鬼人の暇」の昼で描かれていた「あんぱん」の話みたいに、微笑ましい話もあるのが素敵。

娘と過ごす時間を作るために表向きの本業である蕎麦屋を休みにしてしまう甚夜の親バカっぷりも好き。

 

野茉莉に想いを寄せてる染五郎の弟子、平吉くんがこんな逞しい父親に自分を認めさせないと行けなくて呆然としてたのにも笑ってしまった。

でも「四代目は平吉以外認めない」と甚夜に言わせるくらいには、認められてもいるんですけどね。鬼と退魔でありながら、良い関係を気付けているのが好きなんですよ。

 

鬼人幻燈抄 明治編 徒花

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「……ねぇ。葛野君は今、幸せ?」

(略)

「当たり前だろう?」

 

時は流れて明治。甚夜は、染五郎の伝手を頼って京都に渡っていた。

そこで娘となった野茉莉を育てながら蕎麦屋を営みつつ、鬼狩りを続けていたものの……廃刀令などが出されたこともあり、帯刀しての活動がしにくくなってもいた。

 

それでも、刀を捨てられるわけもなく、変わらないままでいましたけれど。

同じように刀に生きる「兼臣」を名乗る女性に、鬼退治の助力を乞うてきて。そこまで強くはないものの力を持った地縛という鬼を取り逃がした後、兼臣が居候する羽目になって、ふくれっ面になっていた野茉莉が可愛かったです。

 

 

余談の「林檎飴天女抄」が、作中でもかなり好きなエピソードなんですよね。

現代に生きる女子高生の薫が、明治時代にタイムスリップしてしまって甚夜に保護されることになるんですけど。

明治時代に天女呼びをした少女と交わした約束を、長い時間過ぎても覚えているのが尊いんですよねぇ。あとは神社の甚夜を知ってるちよさんの事とかも含めて好きです。WEBでも何度も読み返してます。

 

「楽しいのはいけないことか?」

「そんなことないよ。でも苦しんで頑張ってる人の方がすごいと思うから」

 

そういう風に、努力を続けている友人に比べて自分は、と思ってしまう薫は真面目で、だからこそ迷ってしまうんだろうなぁと思います。

 

けれど、やっぱりこの巻で一番重要なのは、副題にもなっている「徒花」のエピソードでしょう。

廃刀令の時代に現れた、刀に生きる鬼。名を聞くようにしている甚夜のこだわりに対しての応答と、それを受けた甚夜の反応が好きなんですよねぇ……。痛くて、切なくて。それでも意味のある戦いであったなら、せめてもの慰めになってくれたことでしょう。

巻末には「余談:続・雨夜鷹」を収録。後の世に甚夜が『雨夜鷹』の「行間には文字よりも大きな心が詰まっていた」と読み解いているのが素敵でした。

 

トランスヒューマンガンマ線バースト童話集

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「俺は取返しのつかないことをした。捨ててはいけないものを捨ててしまったんだ。もう一度手に入れようなんて、虫の良い話だった。そのあげくがこれだ」

 

6回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作。

タイトルに童話とある通り、SFと童話を混ぜ合わせた作品が6つほど収録されています。

SFは余り読まないジャンルなんですが、知人から借りたので読了。

普段読んでないのもあって、新鮮で、笑えたのは良かった。闇鍋感ある。

 

精神をアップロードして、肉体から解放された人々が暮らす世界。

必要があればボディをレンタルして、そこに自分の意識をインストールする。

そんな世界で、電子化をしていなかった少女が継母や義姉にいじめられる「地球灰かぶり姫」。

分け合って隠れ住む竹取の翁が、半端ながら知性を得た竹と日々戦いながら、ある日出会った不思議な少女を育てていく「竹取戦記」。

NPCに囲まれた世界でただ一人の女王様として君臨していた少女の末路を描く、「スノーホワイト/ホワイトアウト」。

 

宇宙に進出し、しかし人類が去った後に残された知性もつエビやカニなどの要素を持つ機械たちが、人類の残した遺跡を探索する「〈サルベージャ〉VS甲殻機動隊」。

宇宙の果てに進出した、特殊な集団の残した遺物を回収して回っていたおじいさんとおばあさんが見つけた成果を描く「モンティ・ホールころりん」。

電子化に適応したアリと、それを選ばなかったキリギリスの交流と結末が記される「アリとキリギリス」。

と言った6つのエピソードが収録されています。

 

幸せな結末に辿り着いた、「地球灰かぶり姫」が一番好きかなぁ。初手な分読みやすかったですし。

「竹取戦記」で、求婚者モチーフの5人が、与えられた先進技術を解析しようとして失敗しまくる場面はユーモラスで笑えましたが。

モンティ・ホール問題に対して「最適を知っていて、選ばない」選択をしたおばあさんも結構好き。

むすぶと本。『さいごの本やさん』の長い長い終わり

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「そうだ、これが読みたかったんだ。この本に会いたかったんだ……」

 

『むすぶと本。『外科室』の一途』と同時発売。

こちらは単行本で刊行されて、表紙以外にイラストは無し。

雪降る街に、一軒だけ残った書店。しかし、店長が事故で亡くなり、店じまいをすることに。

 

お客様への感謝と在庫の整理を兼ねて、最後の1週間だけ開店する事も決まり、残されたスタッフは準備に追われていた。

そんな中、店長の遺言によって想いを託された少年が、店を訪れて。

それが『外科室』でも主人公を務めた、本の声を聴けるというむすぶ君。フットワーク軽いな……

 

お客さんとコミュニケーションを取り慕われ、閉店が惜しまれる書店。

常連だった人、ほとんど行ったことはないけれど印象的な思い出がある人。

閉店の話を知った人々が、想い出を胸に訪れて、むすぶ君がそれを壊さないように手助けしていて。温かさが胸に染みる。

 本も、書店も、進化の途中にあり、今ある形は滅びてゆくのかもしれない。

ぼくらが愛してやまない一切が存在しない世界が、訪れるのかも。

けれど、それは未来のことだ。

本も、書店も、まだぼくらが生きているこの場所にあり、ぼくもまた生きているかぎり本と言う健気で優しい――奇跡のような存在を、愛するだろう。

彼らと出会うために、書店へ足を運ぶだろう。

本編の終盤に記された、このくだりが。一介の本好きとしても、元書店員としても、印象的で忘れ難い。

業界は厳しく、工夫しても売り上げが伸びるかは分からない。そもそも、注文して希望数が来るかどうかすら、あやふやだ。

それでも、今も確かに本と書店はそこにあって。どうしようもなく、心惹かれるのだ。

鬼人幻燈抄 幕末編 天邪鬼の理

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「多分、今の甚夜君は私が何を言っても納得できないと思います。でも、貴方の言う弱さを忘れないでくださいね。きっといつか、その弱さを愛おしく思える日が来ますから」

 

明治編が10月予定、さらにはコミカライズも始動だそうで。

力を入れてるなーと言うのが伺える。巻ごとにカバー裏のイラストにも工夫されてますしねー。楽しみ増えていい感じです。

 

サブタイトルに在る通り、幕末です。

移り変わる時代が描かれます……それは決して穏やかなものではなく。

外国勢力の干渉に、幕府の態度などが合わさって、動乱が始まりそうな危うい雰囲気がある。

巻ごとに時間がどんどん流れてますが、それぞれの味わいをしっかり見せてくれる辺り、描写の幅が広くて凄い。直次なんか結婚して子どもいますしねー。

 

人々に不安が広まったことで、鬼が跋扈する部分も増え甚夜も仕事が増えていて。

ある廃寺に人喰い鬼が出るという噂を聞いて足を運んでみれば……そこで、彼は嘘吐きな鬼と出会うのだ。

鬼は嘘を吐けない筈ですが、天邪鬼の説話なんかもありますしね。

実際それに絡めて、優しい夢を見せてくるのが上手いし辛い。

 

今回は土浦絡みのエピソードも悲しいんだよなぁ。

もし出会いが違っていたら。また違う道もあったのかもしれない。

どのキャラも頑固故に道を譲らず、変えられず。鉢合わせればぶつかる事に成るわけですが。

敵対する相手の中にも魅力的な人が多いので、IFを想像するのが楽しくもありますね。

新キャラの野茉莉が可愛くて癒しなんですよねー。WEB既読民としては明治編も楽しみです。

鬼人幻燈抄 幕末編 天邪鬼の理
中西 モトオ
双葉社
2020-06-17

鬼人幻燈抄 江戸編残雪酔夢

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「名は聞かん。鬼を討つのは、私の役目だ」

 

あぁ、表紙がなんて寂しく美しいのだろう。

今回もまた、カバーをとるとまた違った様相を見せてくれるのですが。

あまりにもネタバレなのでくれぐれも読了後にご確認ください。

 

江戸編が終わる、第三巻。この次の章は、幕末編と言いまして。

時代が移り変わろうとしている、激動の序章でもあるのです。

2巻で培った縁は今も続き、蕎麦屋でいつもの顔ぶれと出会う日々。平和でいいですねぇ。

甚夜の下には変わらず鬼退治の依頼が来て、闇は変わらずにあり続けるんですけど。

 

夜桜の下で夜鷹と出会い、夕暮れの中陰陽師と相対する。

新しく出会った二人はどちらも食わせ物と言いますか。飄々としていて、甚夜を上手くあしらってる感じが好きです。

夜鷹の方は「あの人」の幻に取り乱したりもするし、秘密も抱えてるし、等身大の人間っぽくていいんですよねぇ。

 

三代目も好きですけど、あの人は抱えているもの多すぎて、こう一言では表し難い。

鬼を討つ技を継いだ陰陽師としての顔や、商売人の顔があって。昏く静かに「忘れたらあかん」と忠告するし、甚夜に対して手札を隠す。

けど予想外の事があると口を開けて魅入ったりもするんですよね。見ていて飽きない人だと思います。

 

甚夜も、時に斬りたくないものを斬りながら、色々な問題に対峙して。

名を聞く習慣を身に着けた彼が、名を聞かずに立ち向かった場面が、とても痛くて悲しい。

積み上げたものが壊れて、守りたいものは守れなくて。別れを突き付けてくる。

心をグサグサ刺されるような、辛くて、それでも読んでよかったと思える不思議な読後感があります。


プロフィール

ちゃか

 ライトノベルやコミックを中心に、読んだ作品の感想を気儘に書き綴るブログです。
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